ホーム > PC-Webzineアーカイブ > センサーやデバイスを搭載したアシストスーツで作業者の負荷状況を把握

センサーやデバイスを搭載したアシストスーツで作業者の負荷状況を把握

センサーやデバイスを搭載したアシストスーツで作業者の負荷状況を把握

2020年08月27日更新

アシストスーツで装着者の負荷を把握

重たい荷物を持ち上げたり運んだり、長時間の立ち仕事やデスクワークなど日々の生活の中で、気付かないうちに腰への負担をかけ続けている。そうした身体的負担を軽減させるため開発されたテクノロジーが、装着型の動作補助装置である「アシストスーツ」だ。そのアシストスーツにセンサーやデバイスを搭載して、作業者の負荷状況を取得、利便性向上を図るための実証実験が行われた。

腰痛は社会問題

 特定の業務に従事していることによってかかったり、かかる確率が高くなったりする病気と言われる「業務上疾病」。職業病とも呼ばれ、建設業や鉱業などの従事者が粉じんを吸い込み続けることで引き起こる「じん肺」、腕や肩、頸部の筋肉を頻繁に使う手話通訳者が発症する「頸肩腕症候群」などが挙げられる。厚生労働省が公表した「業務上疾病発生状況等調査」(平成30年)によると、業務での疾病発生数は5,937件で、そのうちの5,016件は「腰痛」(災害性腰痛)が原因であるという結果が出ている。

 特に、製造業や建設業、農業、介護といった重労働の多い業種での身体への影響は深刻な問題となっている。労働人口の減少、高齢化による介護および製造現場での労働力不足、老老介護などさまざまな問題が顕在化しており、状況を改善するための支援策が求められている。

 こうした問題を解決するためにイノフィスが開発したのが、装着型の動作補助装置である「マッスルスーツ」だ。空気を稼働源とする「人工筋肉」を使用した装置を作業者が装着することで、人を抱えたり荷物を持ち上げたり、中腰の姿勢を保ち続けたりといった身体に負担のかかる動作をサポートする。2014年の発売以降、製造業や建設業、農業、介護などの身体を使う幅広い業種で活用されている。

 そんなマッスルスーツにセンサーやデバイスを取り付けて、装着者の情報を可視化し、作業者の支援に役立てる「IoTマッスルスーツの共同実証実験」が行われた。マッスルスーツを提供するイノフィスを中心に、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)とソラコムの3社が共同で実施した取り組みだ。

製造業、農業、介護の現場などで活用されている。荷物を持ち上げたり、人を抱えたりすることでかかる腰への負担を軽減させられる。

装着者の情報からニーズを見出す

 IoTマッスルスーツ開発の構想は2018年の10月ごろからスタートし、2020年の3月に実証実験を実施した。3社の役割はそれぞれ、マッスルスーツの開発と提供をイノフィス、センサーと小型省電力IoTデバイスおよびセンサー情報の可視化・分析を行うアプリケーションの開発と提供をCTC、スムーズにIoT機器を連携するための通信環境を提供するのがソラコムだ。3社のテクノロジーや知見を組み合わせたものがIoTマッスルスーツとなる。

 検証に使用されるマッスルスーツは、空気圧を稼働源とする人工筋肉を使用して身体に負担のかかる動作をアシストする装置。最大25.5kgfの補助力を発揮し、作業者の負担を軽減させられる。人工筋肉は、収縮性のある筒状のゴムチューブにナイロンメッシュを包んでおり、空気を送り込むと人の筋肉のように収縮する。その収縮率によって人の動作を補助する仕組みだ。マッスルスーツを装着することで腰部を補助し、下半身を固定して上半身を伸ばす力を補強できる。装着方法も簡単で、マッスルスーツを背負ってベルトを締め、人工筋肉に空気を注入するだけですぐに利用可能だ。

 CTCのIoTデバイスには、米国のITOCHU Techno-Solutions Americaとともに研究開発している位置情報を可視化できる次世代型トラッキングデバイスソリューションの技術が活用されている。グローバルに利用できるソラコムのIoT通信ネットワークは、クラウド上のプラットフォームを通じてIoTに必要なデバイスやクラウドの設定をオフロードして、スムーズなシステム連携を実現する。

 実証実験では、マッスルスーツにワイヤレス通信モジュールを搭載し、マッスルスーツの使用状況や位置情報をリモートで把握する実験が行われた。マッスルスーツをIoT化することで、装着者のさまざまな動きを測定し、腰などの身体にかかる負荷の状況を把握できる。情報を可視化することで、作業者の身体状況の確認や見守りなどの安全対策効果を得られる。利用状況がリアルタイムで分かるため、製品の不具合の予兆も素早く見つけられる。故障する前に対応できるため、利用者に対する付加価値にもなるという。

リュックサックのように背負って腰のベルトを締めるだけで装着が完了する。「背中フレーム」と「腿フレーム」、その両者を繋ぐ「回転軸」で構成されている。背中フレーム内部に空気圧式の人工筋肉が入っており、この人工筋肉の収縮力で背中フレームと腿フレームを反対方向に回転させることで力が発生し、腿を支点として上半身を起こすという仕組みだ。

業務だけではなく日常使いにも

 IoTマッスルスーツから取得したデータは、新たな製品の開発にも役立てられるという。人を抱きかかえる動作の多い介護現場、重い荷物を持ち上げたり、運んだりする動作の多い製造業や運送業、中腰となり長時間同じ姿勢で行う動作の多い農作業など、利用シーンは多岐にわたる。

 さまざまなシチュエーションや利用想定シーンを考えながら、具体的にどういった状況で身体に負荷や影響が及ぶのかを知ることで、腰に負担のかからない動作やそれを実現するための製品の開発などに生かしていく。

 今後のIoTマッスルスーツの展開について、将来的には国の内外、法人・個人を問わず、あらゆる生活シーンの中で新たなユーザー価値を提案していく予定だという。日常使いのできる身近な製品としてマッスルスーツの普及を目指していく。物流や製造業などの作業現場、介護や病院、リハビリ施設、農作業だけではなく、あらゆるシーンでの利用が期待される。

キーワードから記事を探す