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サイボウズ と日本・東京商工会議所が考える働き方改革の現状とこれから

サイボウズ と日本・東京商工会議所が考える働き方改革の現状とこれから

2020年08月05日更新

課題は人材不足

日本・東京商工会議所 産業政策第二部 清田素弘 氏

Topic 1 中小企業と働き方改革

清田氏 現在、働き方改革には二つの側面があります。一つが法律への対応であり、もう一つが広い意味で捉えた場合の生産性の向上です。法律への対応としては、昨年4月から働き方改革関連法が施行されており、今年の4月からは同一労働同一賃金の導入も始まりました。それらの法律にどのように対応していくべきか試行錯誤されている企業も多く、日本・東京商工会議所としてはそうした企業に対してセミナーや相談会の開催、そしてガイドブックの作成などでサポートしています。

 企業の生産性という側面で見た働き方改革では、やはり人材不足が顕著な課題です。特に中小企業においては深刻で、今後どのように生産性を維持していくべきなのか検討が必要でしょう。

 こうした中で、生産性を向上させる一つのツールとしてデジタル技術の活用が有効です。新型コロナウイルスの感染拡大で普及したテレワークは、中小企業においても利用が広がっています。これからは、そうした環境を定着させていくことに注力していくべきでしょう。


「国内企業の99.7%を占める中小事業者は日本経済の土台。デジタル化で生産性向上が必須です。」


 東京商工会議所では、ITに慣れていない中小・小規模事業者の経営者に対して、ITを「試してみる」ことをお薦めし、商売・業務でのはじめてのIT活用を支援する「はじめてIT活用」1万社プロジェクト※を昨年11月から開始しています。こうした活動も含めて、中小・小規模事業者のデジタル活用による生産性向上をこれからも力強くサポートしていきます。


※東京商工会議所の職員が3 年間で1 万社に直接アプローチし、簡単・便利で安価なIT 活用を具体的に提案するプロジェクト。

クラウド上に出社する時代に

サイボウズ コーポレートブランディング部長 大槻幸夫 氏

大学卒業後、知人とレスキューナウ・ドット・ネットを創業。2005年、サイボウズに転職。マーケティングに従事し、2015年、コーポレートブランディング部長就任。オウンドメディア「サイボウズ式」の初代編集長。

大槻氏 サイボウズが働き方改革に取り組み始めてから10年以上が経過しています。働き方改革に着手した理由は、当時のサイボウズが非常に困っていたからです。なぜ困っていたのか。それはいわゆるブラック企業のような状態で、離職率が最高で28%まで高まっていました。人はどんどん辞めていき、新しい人も採用しづらく、採用できてもすぐに辞めてしまう。負のスパイラルに陥っていたのです。

 深刻な危機感の中、社内で議論して作り上げたのが、「100人いれば100通りの働き方があっていい」という方針です。その方針をもとに、例えば「育休6年」などの制度化とともに働き方改革に着手しました。その成果として、現在は、働きがいのある会社ランキングなどで上位に入賞するまでに改革が進められています。

 働き方改革のポイントは、課題をきちんと認識して進められるかどうかにあります。働き方改革の流れがあるからといってそのお題目のもとに改革を始めてもうまくはいきません。人材不足や現在の企業環境などを鑑みて、働き方の改革を経営課題と直結させて、経営者が中心となって進めるべきです。働き方改革関連法なども施行されていて外部的な圧力も高まっていますが、やはり会社内部からの意識改革が必要です。主体的な力のもとでなくては会社は変われませんし、社内にいる反対勢力にも負けてしまいます。


「離職率は28%まで高まっていました。人はどんどん辞めていき、新しい人も採用しづらい状況でした。」


 こうした中で、新型コロナウイルスという感染症が拡大し、半ば強制的に働き方改革の着手やテレワークへの移行が進行しています。働き方改革に積極的に着手してきたサイボウズでも、テレワークについてはこれまでは選択肢の一つという位置付けでした。しかし、今回、サイボウズでも全員がテレワーク環境になったことで、これまでテレワークを選択していた従業員の悩みに気付くことができました。オンライン会議時などオフィスにいる人とのコミュニケーションの課題です。

 一方、全員がテレワークを行うような環境において改めて実感したのは、情報共有ツールの有用性です。サイボウズでは、従来からグループウェアを基本として、会議の議事録の共有や従業員がそれぞれ思いついたことをkintoneでつぶやけるような環境などを整えていました。そのため、オフィスの感覚がデジタル上でも再現されており、テレワーク時でもみんなの状態や会社の状況を把握しながら仕事ができています。

 ある調査ではテレワークになったことによる影響として、部下とコミュニケーションがとれずに寂しい思いをしている管理職が多いという結果が出ていましたが、当社ではみんなの状況がクラウドで共有できていて、何かあれば必要に応じてチャットやWeb会議ツールを使ってコミュニケーションがとれるため、会社としての一体感を失わずに仕事ができていると実感しています。チャットや掲示板などを介した雑談の場は、テレワークで一人になって寂しく感じている従業員のケアとして有効です。

 現在は、新型コロナウイルスの影響で、業務のデジタル化への注目が従来以上に高まっています。当社は中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」や大企業向けグループウェア「Garoon」、そして、ビジネスアプリ作成クラウド「kintone」などを提供していますが、特に問い合わせが多いのはkintoneです。kintoneは、これまでExcelで行っていたような業務を手軽にWebアプリにでき、クラウドサービスとして自宅からでも利用できるようにします。そのため、出社しなくても業務を可能にするソリューションとして導入が進んでいます。部署単位やチーム単位で業務を効率化したいというニーズが多いですね。

 また、企業に限らず、自治体などでも新型コロナウイルスへの対応を効率化させる目的で採用が増えました。


― 大阪府八尾市 事業者サポート給付金の電子申請にkintoneを採用(サイボウズ ニュースリリースより)

大阪府八尾市が、事業者サポート給付金のオンライン申請にkintoneを採用。AIによる画像認識やOCR技術で、オンライン、郵送両方による受け付け事務の負荷を軽減することを目的に開発した。

全戸配布である個人向けの特別定額給付金と違い、事業者サポート給付金は企業からの申込みで、条件に合致するかどうかを市が判断する必要がある。窓口における混雑を回避し、オンライン申請を増やすことと、その後の審査での職員負担をいかに減らすかがテーマとなった。

八尾市では申請データを集めるデータベース基盤にkintoneを採用し、AIやOCRによる自動読み込みを連携させて、オンライン申請による申請ミスの防止と、郵送受け付けによる転記作業の削減の両方で、迅速な処理と濃厚接触の防止の両立を実現した。


― 兵庫県加古川市 特別定額給付金のオンライン申請にkintoneを採用(サイボウズ ニュースリリースより)

兵庫県加古川市は、特別定額給付金申請をオンライン化する独自フォームにkintoneを採用した。国民1人当たりに10万円を支給する特別定額給付金制度では、マイナンバーカードを活用したオンライン申請も行われているが、申請内容が正しいかどうかの判断は自治体側が行う。正しい内容があらかじめ記載された申請書を家庭に送る郵送方式と比較して、申請内容や二重登録の確認に多大な工数がかかっている。

加古川市では、郵送する用紙に記載した固有の番号を活用することで、申請書に印字するデータをそのままシステムに反映できることに着目し、kintoneを使って独自に申請フォームを作成した。市民は郵送された申請書に記載された「照会番号」と、本人確認書類画像、本人名義の口座情報画像の添付で、スマートフォンやPCからオンライン申請が行えるようになった。データは照会番号にひも付いており、申請書のデータとの照合が簡単に行えるため、給付までの期間の大幅短縮も可能になった。


 いずれもアイデアをスピーディーに具現化できるデジタルツールとしてkintoneが採用されています。

 kintoneなどの活用で効率的な働き方が可能になり、働き方の選択肢も増えています。こうした働き方改革をさらに普及させるためには、やはりテレワークを推し進めることによる一点突破が必要だとも考えています。テレワークがボウリングにおけるセンターピンのような役割を果たして、次々と他の要素に波及していくイメージですね。


「テレワークが働き方改革におけるセンターピンとなり次々と他の要素に波及していく。」


 テレワークが根付けば働き方は多様化します。働き方が多様化すれば、人事評価の仕組みを変える必要性が生じます。オフィスで仕事をしていなくても働きを正当に評価できる仕組みですね。そうなると、今度はオフィスをどうするかという議論にもなります。オフィスの在り方についても見直されるべきでしょう。

 例えば、これからはクラウドにオフィスを作ってまずはそこに出社し、必要に応じて分散されたリアルのオフィスに出社するような、そうした優先順位の時代が到来するはずです。リアルのオフィスはさまざまな人が実際に会ってつながれるハブのような場所として意味があるとも考えられます。

 こうした新しい働き方やオフィスにおいて重要なのは情報流通の構造です。ITを活用していつでもどこでも利用できるオープンな情報共有基盤の構築が、働き方改革を成功に導くでしょう。


「オフィスの感覚がデジタル上で再現されており、みんなの状態や会社の状況を把握しながらテレワークができています。」

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