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介護人材不足の課題を解決するITツール―コニカミノルタ、日立システムズ、パナソニック

介護人材不足の課題を解決するITツール―コニカミノルタ、日立システムズ、パナソニック

2020年08月12日更新

Special Feature 2
介護業界 2025年問題

2025年問題―。1947~1949年生まれのいわゆる団塊世代が、後期高齢(75歳以上)年齢に達することで、医療や介護などの負担が急増する問題が、総称してこう表現されている。中でも介護業界は人材不足が深刻化しており、2035年に介護人材の需要ギャップが79万人に達すると試算されている。この問題を解消するためには、IT化によって介護人材の負担を軽減していくことが重要だ。

介護業務効率化支援システム市場が2.2倍に伸長

介護業界における人材不足が深刻化する中、それを解消するためのITツールに注目が集まる。介護・福祉関連製品・サービスの市場調査から、介護におけるIT活用の需要を見ていこう。

情報共有の二度手間を削減する

 介護の現場で利用されている介護・福祉関連製品・サービスの市場調査を富士経済が発表している。その中で注目市場として挙げられたのが、介護業務の効率化支援システムだ。スマートフォンやタブレット端末を使用して介護記録の入力作業を効率化するシステムを対象としており、2019年は2018年比10.0%増の11億円(見込値)に、2025年には2018年比2.2倍の22億円まで市場が大きく拡大する予測だ。

「業務効率化システムを導入している介護事業者は全体の1割程度です。従来は手書きでメモしたものを後でPCに記録する流れが一般的でしたが、スマートフォンなどから介護記録を入力することで、大幅な時間削減が期待でき、情報共有も迅速に行えます。介護現場の人材不足は、離職率の高さも要因の一つとしてありますが、IT技術活用による負担軽減により、離職率低下も実現できます」と指摘するのは、富士経済 ライフサイエンス事業部の河野孝通氏。

 現状、訪問介護事業者の導入率は低いが、在宅介護が進む中で、これらの事業者にも導入が進んでいく見通しだ。以前は職員がタブレットやスマートフォンを使いこなせないケースもあり、導入の障壁となっていたが、現在はスマートフォンの保有率も上がったため、導入障壁は下がってきている。

施設のWi-Fi整備とともに進むIoT活用

 これら業務効率化支援システムの需要が特に高いのが、訪問介護の現場だ。1日5~10件の住宅を訪れる訪問介護は、実施したケア内容をレポートに記録し、訪問介護事業者に提出する必要がある。それを例えば介護先の住宅にセンサーを設置して、スマートフォンをかざせば訪問時間が記録できるシステムを導入すれば、書類作成に必要な情報を簡単に記録できる。また、スマートフォンで記録したケア内容を基幹システムと連携できれば、入力の二度手間三度手間を解消できるのだ。

 IoTシステムの導入も有料老人ホームや高齢者住宅、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの入所サービス事業者で徐々に進んでいる。ベッドにセンサーを敷いて、認知症の入居者が立ち上がった際にアラートを飛ばしたり、天井に設置したセンサーで入居者の健康を管理したりしている施設もある。「従来、介護施設で導入されるIoTシステムは徘徊や転倒防止を目的に使用されていましたが、昨今では健康管理に使われるケースも増えてきています。介護施設ではまだまだWi-Fiの整備が進んでおらず、それがIoT導入を妨げていますが、今後業務効率化を実現する上でWi-Fiの整備は着実に進むため、それと並行してIoTの導入も進んでいくでしょう」と河野氏は語った。

介護業務の診断から組織構築までをトータルサポート

介護施設において強く求められるIT環境の整備だが、実際に導入されても有効活用されない、使いこなせないというケースも少なくない。コニカミノルタではそうした問題を防ぐべく、三つのサービスで介護現場を支援する。

ITを軸にオペレーションを再構築

 介護現場にITツールを導入するメリットは大きいが、その半面課題も多く存在する。例えばセンサーやIT機器の操作が難しいと感じる職員の存在や、それ故に補助金で導入した機器が使われなくなるというケースだ。

 そこでコニカミノルタが提案するのが、既存のオペレーションにITを導入するのではなく、ITを軸としたオペレーションの再構築だ。「当社では、介護施設向けサービス『HitomeQケアサポート』を提供しています。『業務診断』『ケアサポートシステム』『ケアディレクター』の三つのサービスで構成されており、当社独自の画像センシング技術とオペレーションサービスの組み合わせで、介護現場へのIT定着を支援します」と語るのは、コニカミノルタ QOLソリューション事業部の斉藤朋之氏。

 まず業務診断サービスでは、コニカミノルタのスタッフが介護施設へのヒアリングや現場立ち会いによる業務観察を実施し、業務行動を分析。施設の負担箇所を特定した分析レポートを提出することで、IT化や業務改善の余地があることを介護施設の職員に“見える化”させ、介護現場が抱える課題を顕在化させる。

エビデンスに基づいた介護を実現

 顕在化した課題を解消するシステムとして、コニカミノルタはケアサポートシステムを提案する。行動分析センサーとスマートフォンを軸としたワークフロー変革で、介護業務全体の効率化を実現できるのだ。

「システムとしては入居者の見守りです。居室天井に設置された行動分析センサーで、入居者の起床、離床、転倒・転落などの行動や、胸の動きの検知による安否確認を実現します。転倒などの異常を検知するとドライブレコーダーのように動画を記録し、職員に通知。センサーの誤検知による無駄な駆け付けを削減し、本当に必要なケア判断を支援します」と同社 QOLソリューション事業部の門馬千明氏は話す。

 転倒時の動画は管理サーバーに記録されるため、万が一入居者の家族から虐待を疑われるなどトラブルが発生した際の証拠としても活用でき、入居者も職員も守るリスク管理ツールとして有効だ。

 また、コニカミノルタでは介護施設を運営する善光会と共同で、新たにITとデータを活用した介護オペレーションの専門職「ケアディレクター」を開発。可視化・分析ツール「ケアルーペ」を活用し、状況を総合的に判断。入居者の状況に応じた情報を職員に提供するなど、データを活用した状況把握や意志決定で、エビデンスに基づいた介護現場の実現を支援する。スキル教育から立ち上げ、継続支援までもトータルサポートし、データを活用した介護現場の構築も支援していく。

「介護現場を変えていきたい施設に対して、科学的な介護とはどうあるべきかを並走しながら、新しい介護施設のオペレーション作りを支援していきます。人材不足の中で、センサーが人の目の代わりになることで、職員が働きやすい環境作りにつながり、入居者とふれあうという本来介護に最も必要とされていた業務に向き合えるでしょう」(斉藤氏)

複数のセンサーデバイスを統合管理して入居者を見守る

入居者の見守り用途に複数導入されるセンサーデバイスは、管理が煩雑になりがちだ。それらを統合的に管理できるサービスを、日立システムズが提供している。

要介護度に合わせたセンサー選定

 IoT技術を活用し、介護施設の入居者の安全確保と介護職員の働き方改革を支援しているのが、日立システムズだ。赤外線センサーやマット型の生体センサー(以下、マットセンサー)など複数のセンサーを用いて、入居者のケアを安全かつタイムリーに実現する「福祉の森 見守りシステム」を提供している。

 福祉の森 見守りシステムの最大の特長は、メーカーの異なる複数のセンサーを統合的に管理できる点だ。日立システムズ 産業・流通システムサービス事業グループの神戸 健氏は「介護施設は、要介護度の低い方から高い方までさまざまな高齢者が入居しています。要介護度が低い方は自由に歩行ができるため施設の中を自由に動けますが、足腰が弱っている影響で転倒するなどの事故が頻発しています。そうした入居者の見守りには赤外線センサーを活用した転倒検知が最適です。しかし、要介護度が高い方はベッドで寝たきりになっているため、転倒の危険はほとんどありません。半面、夜間にバイタルサインが低下して気付かないまま亡くなられるケースが存在するため、そうした入居者に対してはマットセンサーによるバイタルデータ取得による見守りが適しているのです」と語る。

 こうした複数のメーカーが異なるセンサーは、それぞれ管理画面が異なるため管理がしにくく煩雑になりがちだった。福祉の森 見守りシステムでは日立システムズのSI技術によって、その複数のセンサーを一つの画面にアイコンで表示し、部屋ごとの状態を把握できるようにしている。

バイタルデータをまとめて記録

 福祉の森 見守りシステムが対応しているセンサーは赤外線センサー、マットセンサー、マイクロ波センサーに加え、今後環境センサーとサーモパイル(非接触温度)センサーにも対応センサーを拡張していく。

 日立システムズ 産業・流通システムサービス事業グループの中嶋 暁氏は「Bluetooth機能を搭載した体温計や血圧計のデータも福祉の森 見守りシステムで取得できます。マットセンサーで取得した呼吸や脈拍などのバイタルデータと体温と血圧データを取り込めば、記録業務の軽減につながります」と指摘する。介護現場では温度板と呼ばれる入居者のバイタルデータと食事や入浴の有無を1枚の紙に記録していく帳票作業があるが、この作業負担が大きい。自動的に取得したデータが蓄積できれば、温度板の作成作業を大幅に効率化できるのだ。

「介護施設への導入時は、実際に施設に複数のセンサーを仮設置してもらってその効果を検証してもらいます。赤外線センサーと一口で言っても、メーカーが異なれば利点も異なるため、その施設にとって最適なセンサーデバイスを導入してもらえるようにしています」(日立システムズ 産業・流通システムサービス事業グループ 松原孝之氏)

 今後はナースコールとも連携し、さらに一元的な情報管理を進めていく福祉の森 見守りシステム。単体でも介護施設に導入できるが、日立システムズが提供する介護事業者向け業務支援システム「福祉の森」とデータ連携すればより効率的な介護業務が実現できる。「介護施設の事務職員が使用する基本システムはすでに導入されているケースも多く、それらと共存して利用できるようになっています。介護施設ごとの環境に柔軟に対応し、職員の負担を軽減できるシステムを今後も提供していきます」と日立システムズ 産業・流通システムサービス事業グループ 関谷純一氏は語った。

AIとロボティクス技術が介護現場の負担を解消する
―エイジフリーの活用から

ITツールが導入されることで、入居者への介護がどのように実現できるのだろうか。パナソニック ライフソリューションズ社が運営する介護施設の様子を見てみよう。

離床支援にロボティクス技術を活用

 パナソニックでは、社内分社のライフソリューションズ社において、介護事業「エイジフリー」に取り組んでいる。

 在宅介護サービス拠点として「エイジフリーケアセンター」を46拠点、サービス付き高齢者向け住宅として「エイジフリーハウス」を61拠点展開しており、その施設内において見守りシステムやベッドの一部が分離・変形してそのまま車椅子になる離床アシストロボット「リショーネPlus」、リハビリナビゲーションシステム「デジタルミラー」が活用されている。どちらもエイジフリーの介護機器・設備事業で提供されている製品だ。

 リショーネPlusの開発に携わったパナソニック ライフソリューションズ社 エイジフリーBU ロボットリハビリ事業開発部部長 河上日出生氏は「寝たきりの高齢者を車椅子に移乗させるには2人から3人の介助が必要であり、介助者の身体への負担も大きい業務です。高齢者の方も体が痛むリスクが存在し、怖がられるケースも少なくありません」と話す。

 2006年から移乗支援ロボットの開発を進めていた河上氏。当初はアーム型のロボット「トランスファアシストロボット」が人を抱き上げることで移乗することを目指していたが、転落のリスクや設置スペースの問題などからリショーネPlusのスタイルに行き着いたのだという。「エイジフリーの施設の職員などからもフィードバックを得て、介護施設のあるべき移乗支援ロボットは、ベッドが分離して車椅子になるスタイルであると行き着きました」と河上氏。持ち上げゼロで移乗できるため介助者は1人で対応可能で、職員の負担軽減にもつながる。

 実際、リショーネPlusの活用によって、週に2回の入浴時のみ離床していた入居者が毎日離床できるようになり、同じ施設の入居者に囲まれて過ごせるようになるという大きな効果も実現できたという。

リハビリ支援負担をAIが解決

 またエイジフリーの介護施設では、デイサービスの生活機能訓練をサポートする「リハビリ支援AIクラウドシステム」の実証実験も実施している。2018年度の介護報酬改定で、デイケア施設などを利用している高齢者の心身機能を維持できているかなどを評価する「ADL維持等加算」が新設されており、計画に基づいたリハビリ支援が施設に求められている。しかし、多忙な業務に加えて新サービスの導入に伴う業務や帳票の負担増加は避けられず、また専門スキルを有しているスタッフが不在など、課題も多くある。

 それを解消するのがリハビリ支援AIクラウドシステムだ。タブレット内蔵のカメラで動画撮影するだけで、施設利用者の身体機能をAIが分析・記録し、訓練計画書を自動提案してくれる。リハビリナビゲーションシステムであるデジタルミラーによるリハビリ支援も活用されていたが、より多くの施設に導入しやすいリハビリ支援システムとして、現在開発を進めており、2020年度下期の製品化を目指している。

「介護現場は間接業務が非常に多く、その負担を軽減する上で、IT活用は不可欠になります。今後も介護現場の動向を見ながら、使いやすいようにITツールの具現化を進めていきます」と河上氏は締めくくった。

COLUMN

IoTとAIを活用した介護業務支援サービス「ライフレンズ」

 パナソニックは介護施設の夜間巡視などの見守り業務の負担軽減を実現するため、新しい介護業務支援サービス「ライフレンズ」の提供を7月からスタートする。

 ベッドに装着して入居者の安否確認やベッドからの離床などを把握する「シート型センサー」と、入居者の状態を映像によって把握するIoTカメラ「Vieurekaカメラ」を組み合わせ、入居者の様子をリアルタイムで遠隔から確認できる。介護職員の負担軽減に加え、不要な訪室による入居者の覚醒を低減できる。将来的には、ディープラーニングなどの高度な画像解析を活用し、入居者の状況を把握するサービスも提供していく予定だ。

 実証実験も実施されており、介護施設を運営するHITOWAケアサービスの夜間巡視において、ライフレンズ導入前と比較すると業務負担を91%削減できたという。HITOWAケアサービスでは今後、2020年8月までに計660室へのシステム導入を計画している。

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