
Chromebookを市内小中学校に整備し世界標準の教育に取り組む小金井市
小金井市で進むChromebookを軸とした世界標準の学び
児童生徒1人につき1台の端末整備と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想。自治体間の格差解消のため補助金が支給されるため、GIGAスクール構想を機にICT環境整備を促進させる自治体も少なくない。しかし、補助金支給額のみで環境整備を行うと、子供たちの学びに支障が生じるリスクもある。そうしたコストと学びの両側面の課題を解決できる選択肢が、Chromebookだ。
コスト課題を解決する選択肢
小中学校の児童生徒1人につき1台のPC環境を整備する「GIGAスクール構想」。GIGAスクール構想によって、生徒用の個人端末に対して1人当たり最大4万5,000円の補助金が支給される。本来2025年度までの5年間で整備を達成することを目標としていたが、今回の新型コロナウイルス感染症への対策として、2020年度補正予算が新たに計上され、1人1台端末環境の早期実現を目指すことが示されている。
しかし、1台当たり4万5,000円の補助金では購入費の全てをまかなえないケースも少なくない。不足分は自治体側が負担する必要があるため、できる限り補助金内で購入できる端末を選定したい。
すでに各端末メーカーがGIGAスクール予算に対応したデバイスやパッケージ製品を販売しているため、そうした製品も選択肢の一つになり得る。また、安価な教育機関向けの端末として知られるChromebookであれば、自治体の負担を抑えつつ十分な学びの環境を実現できる。
東京都小金井市では、GIGAスクール構想が打ち出される一足先となる2019年度に、市内の全ての小中学校にChromebookを導入した。また、教育クラウドプラットフォームサービス「まなびポケット」も採用し、クラウドベースによる学びのインフラ整備を進めている。
小金井市教育委員会 教育長 大熊雅士氏にChromebookの選定理由を聞くと「ポイントは三つあります。一つ目はコスト。端末に加えて、児童生徒の端末画面を共有するような学習支援ソフトウェアなどを導入しようとすると、特にWindowsの場合はセンターサーバーを整備する必要が出てくるなど、コストがかかります。補助金が使えても自治体の負担が大きくなるのです」と指摘する。
小金井市ではChromebookを3万5,000円、まなびポケットを1万円で導入して合計4万5,000円(1台当たり)の導入費に抑えた。合計7,500台を導入し、1校当たり40台の端末整備を行ったという。
世界標準の学びをクラウドで実現
二つ目に、メンテナンスが容易である点が挙げられた。Chromebookは、クラウド型管理コンソール「Chrome Education Upgrade」によって、一つの端末から同じドメインの全ての端末を管理できる。「メインサーバーを必要とせず、ソフトウェアの一括インストールや、USBデバイスの接続管理などを集中的に管理できる点は非常にメリットです」と大熊氏。特別な知識は必要なく、ユーザー設定から端末管理までサポートできる管理コンソールは、コストを抑えつつ複数台の教育端末を管理するのに最適なツールなのだ。
三つ目に挙げたのが、「G Suite for Education」(以下、G Suite)の利用だ。「特に学びに生かせるのが、共同編集機能です。これは非常に優れた機能で、iPadやWindowsを使っている教育現場でもG Suiteを使ったほうがいいと考えています」と強く語る。
例えば、理科の実験結果を発表するシーン。従来であれば、各グループで実験結果をプリントなどに手書きして、それを黒板に貼って順次発表するスタイルが一般的だった。しかし、G Suiteによる共有で、子供たちは他の子供の実験結果を発表する前に参照することが可能になる。「従来であれば発表していったときに他のグループの実験結果を見て『間違っていた』と気付くところを、実験結果をまとめている最中に共有されたGoogleスライドから確認すれば、実験の過程がおかしいことに気が付きます。また、Googleスライドなどはアプリケーション上でデータ検索ができるため、正しい実験結果を参照できてしまいます。その世界標準の“答え”と自分自身の“答え”を比べて、どうしてそうなったのかを考えることが、これからの世界標準の思考力を身に付けるためには不可欠です」(大熊氏)
全国的に知られているICT教育先進校である小金井市立前原小学校においてChromebookを採用していたことも、導入理由の一つだ。前原小学校では多様なプログラミング教材を活用したプログラミング教育に取り組むほか、まなびポケットとChromebookを組み合わせた朝の会(タイトル下画像参照)を実施するなど、学校生活にICTが溶け込んだ活用を推進していた。今回の市内全小中学校へのChromebook展開も、前原小学校の研究成果をベースに進めている。
前原小学校のプログラミング教育①
(左)プログラミング教育向けに開発された「IchigoJam」を使ってドローンを飛ばす学びの様子。
(右)教育向けマイコンボード「micro:bit」を活用しておもちゃやゲームを自分たちで作る。
コロナ禍で進む環境整備
Chromebookは2018年度から3年間かけて整備することが計画されていた。前述の通り、1校当たり40台のChromebookはすでに整備されており、2020年度、2021年度はそれを段階的に進めていき各学校の3クラスに1クラス分のPC環境という文部科学省の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」に基づいた学習用コンピューターの整備を進める予定だった。「しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、小金井市ももちろん市内の学校が一斉休校となりました。そうした環境下で学びを止めず、また児童生徒一人ひとりに対してきめ細かなサポートを実現するためには、ICT活用が重要になると先生方は肌身で体感しました。実際、小金井市の小中学校では、自宅にPC環境のない家庭に学校のChromebookと、新たに購入したモバイルルーター100台を貸し出し、常に教員とつながれる環境を構築しました」(大熊氏)
そうした未来の学びに求められる端末整備が求められることを踏まえ、6月2日の議会初日にChromebook購入の予算審議を可決。2020年度9月末日までに学校現場へ導入していく予定だ。また、Chromebookはクラウドサービスを利用するため、ネットワーク回線の負荷が大きい。「そのため、校内ネットワークにはCAT6を採用し、情報センター並みのネットワーク整備を計画しています。もちろん市の負担もあるため大きな決断ではありますが、子供たちに必要な個別最適化学習を実現するためには不可欠です。今後も学びの多様性を確保できる教育ICT環境整備を進めていきます」と大熊氏は力強く語った。
前原小学校のプログラミング教育②
カラトリーカードを使用したビジュアルプログラミングアプリ「CutleryApps」を使用して「4連Lチカ基板(M01)」を点滅させるLチカプログラミング。発達段階に応じたプログラミング教育を実施している。
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