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シェアリングオフィスの再配達を減らす「法人向けシェアリング宅配ボックス」

シェアリングオフィスの再配達を減らす「法人向けシェアリング宅配ボックス」

2020年07月29日更新

シェアリングオフィスの宅配を変える
「IoT宅配ボックス」

千葉県柏市の「柏の葉キャンパス駅」周辺エリアは「柏の葉スマートシティ」という環境共生・健康長寿・新産業創造の三つをテーマに自治体、研究機関、民間企業が連携して都市開発を進めている。その都市開発の一環として、三井不動産が運営する「柏の葉オープンイノベーションラボ」(KOIL)においてIoTソリューションの開発、製造、販売を行うPacPortが「法人向けシェアリング宅配ボックスの実証実験」を開始した。利用者、オフィス運営者、配送事業者に対する配送の課題解決に向けた取り組みだ。

不在時の荷物の受け取りができない

 三井不動産が運営するKOILは、少人数から100人規模までの専有オフィスや会員制のコワーキングスペース、ミーティングルームなどを備えた、起業家やクリエイター、ベンチャー企業などが利用する施設だ。そのKOILにおいて、2020年1月1日から法人向けシェアリング宅配ボックスの実証実験をPacPortが行っている。施設内にWi-Fi接続でクラウドと連携する電子錠を内蔵した「IoT宅配ボックス」を設置し、配送業務を非対面・非接触で行う取り組みだ。

 KOILには100社以上の企業が入居している。日々多くの荷物が届くが、コワーキングスペースの利用者が外出や出張などの理由により荷物を受け取れないケースがある。オフィス運営者側で滞留した荷物を管理するにも負担がかかるため、代理の受け取りなどもできず、課題解決のための手段を模索していた。

「実証実験で活用しているIoT宅配ボックスは当初、個人ユーザー向けに開発した製品でした。昨今、荷受人の不在による再配達が急増しており、配送事業者の再配達にかかる負担やCO2(二酸化炭素)排出量の増加などの問題も挙げられています。今回の実証実験では、三井不動産の担当者から当社のIoT宅配ボックスをKOILで利用できないかという相談を受け、複数の荷受人が宅配ボックスを共有して利用できるシェアリング機能などを新たに組み込みました」と取り組みの背景を語るのはPacPort 代表取締役社長 沈 燁氏だ。

柏の葉オープンイノベーションラボ(KOIL)に設置されているIoT宅配ボックス。

追跡番号が鍵になる

 本実証実験は、電子錠を搭載したIoT宅配ボックスと解錠鍵の作成や配達状況を確認できるスマートフォン専用のアプリケーション「PacPort」を活用する。IoT宅配ボックスは、国内の宅配ボックスメーカーと協業し、自社開発の電子錠「IoTスマートロック」を組み合わせて開発されている。

 ボックスに取り付けるIoTスマートロックは、プッシュ式のダイヤルボタン、外側と内側にカメラを搭載している。外側のカメラで宅配ボックスを解錠するために利用するバーコードの読み取り、内側のカメラで投函された宅配ボックス内の荷物の撮影を自動で行う。撮影した写真は投函の証明として使われる。

 解錠鍵の作成は、宅配伝票に印字された追跡番号を利用する。アプリケーションに追跡番号を入力すると、PacPortのクラウドを経由してIoTスマートロックに追跡番号が送信される。配送事業者は追跡番号のバーコードが印字された宅配伝票をIoTスマートロックにかざすことにより宅配ボックスに荷物を投函できる。荷受人はアプリケーションで発行される二次元コード化した追跡番号をボックスにかざすことで荷物を受け取れる。

 アプリケーションでは解錠鍵の作成だけではなく、荷物の配達状況なども確認できる。「宅配伝票に印字された荷物の追跡番号を解錠鍵にすることで、配送事業者が専用の端末や専用のアプリケーションなどを導入することなく利用できます」(沈氏)

 コワーキングスペースでIoT宅配ボックスを利用することにより、荷受人は自由な時間に荷物の受け取りができ、配送事業者は、再配達をなくすことができる。「コワーキングスペースやシェアオフィスでは、なりすましや誤投函といった問題も多々あります。IoT宅配ボックスは、追跡番号がなければ荷物を受け取ることができないため、セキュリティ面も安心です」と沈氏はメリットを話す。

宅配ボックスに取り付けるIoTスマートロック。単三電池6本で稼働し、6~8カ月連続使用できる。外側のカメラで宅配ボックスを解錠するために利用するバーコードの読み取り、内側のカメラで宅配ボックス内の撮影を行う。
IoT宅配ボックス専用のアプリケーション画面。注文→発送→投函→受け取りの状況を把握できる。

IoT宅配ボックスで再配達を0件に

 1月から開始した実証実験は3月31日までの期間で行われる予定だったが、新型コロナウイルスによる影響もあり、2020年9月末まで期間を延長している。実験が開始されて1月から5月まで5カ月ほど経ったが、再配達の数は4月に1件、5月は0件まで減らすことができていると沈氏は話す。

 IoT宅配ボックスを活用した利用者からは、外出時や出張時における荷物の受け取りに対する不安の解消やアプリを使った利便性などが評価されているという。「KOILでの再配達数は徐々に減ってはいますが、IoT宅配ボックスを活用したことがない利用者が多いのが実情です。もっと多くの利用者に周知してIoT宅配ボックスを活用してもらうことで、再配達をさらに減らせると考えています。配送事業者のストレスの緩和にもつながるでしょう」と沈氏は語る。

 続けて、「今後は、法人向けのマーケットに力を入れていく予定です。今回の実証実験でシェアリングを前提に法人での利用も可能であるということが実証できたと考えています。また配送の問題は日本だけではなく世界共通の課題です。IoT宅配ボックスを世界中に広めていく活動もしていきたいと考えています」と今後の展望を話した。

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