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蔵書点検の業務効率化に向けた船橋市西図書館の取り組み

蔵書点検の業務効率化に向けた船橋市西図書館の取り組み

2020年07月27日更新

蔵書点検業務にAIとドローンを活用
~船橋市西図書館の業務効率向上への取り組み~

労働人口の減少に伴い、図書館においても業務負担が増大している。その中でも、図書館内の膨大な蔵書を所蔵データと照らし合わせて確認する蔵書点検作業は、図書館職員にとって負担が大きい。そうした課題をAIの活用で解決しようとしている船橋市西図書館の事例を紹介する。

蔵書点検・データ照合をAIで効率化

 図書館業務は、図書の貸し出し以外にも、利用者が探す資料を検索して提供・回答するレファレンス業務や資料の選定・発注・受け入れ作業など多岐にわたる。その中でも定期的に行われる蔵書点検業務は、図書館整備に重要な作業だ。蔵書点検では、館内の1冊1冊の図書を所蔵データと照らし合わせ、蔵書の所在状況が一致するかを確かめる。所蔵データが一致しない場合には館内を探し、正しい書架に戻したり、貸し出し中の図書などと照らし合わせて行方不明図書がないかピックアップしたりする必要があるため、非常に手間がかかる。

 同じ課題を抱える図書館も多く、蔵書点検にICタグやRFID読み取り機器などを活用する図書館が増加傾向にある。しかし、ICタグによる一括読み取りでは、蔵書の全てに1冊ずつICタグを貼付したりデータを確認したりする作業に手間がかかるため、全ての図書館で導入できるわけではない。

 船橋市には、中央図書館・西図書館・東図書館・北図書館の四つの市立図書館がある。それらの図書館では、2016年10月にすでに蔵書点検で蔵書データを読み取るためのICタグや、RFID読み取り機器を導入していた。実際にICタグとRFID読み取り機器を使用した蔵書点検は2017年9月から実施している。しかし船橋市の各地域17館の公民館図書室では、RFID読み取り機器のコストが高いという課題から蔵書をバーコードから1冊ずつ読み取る方法で蔵書点検を行っており、業務に負担がかかっていた。

近隣図書館の業務負担解消を目指す

 そうした蔵書点検の業務効率化を図るため、船橋市西図書館ではAIの導入を検討していた。そこで試験導入を決めたのが、京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)が現在開発中の「AI蔵書点検システム」だ。

 AI蔵書点検システムは、同社の公共図書館システム「ELCIELO」と画像解析AIを組み合わせた図書館業務システムだ。今回AI蔵書点検システムに組み込まれているELCIELOは、2015年から西図書館で活用されていた公共図書館向けWebアプリケーションシステムだ。

 ELCIELOでは、短い検索キーワードでも即座に検索できる検索機能により、利用者のレファレンスの要望に素早く対応できる。さらに、画面読み上げソフトウェア「PC-Talker」を搭載しており、視覚に障害のある利用者がWebサイトを読み上げによって検索できるなどバリアフリーな機能に対応している。

 今回の試験導入では、AI蔵書点検システムが組み込まれたタブレットを活用して書架を撮影し、画像分析を行った。図書館の書架一面を撮影し、撮影した棚の背表紙データとELCIELOに登録された館内の所蔵データを画像解析AIに取り込んで照合できるのだ。

 試験導入は、2020年3月12日~2021年3月31日まで、西図書館の書架の一角を使って実施された。実際にAI蔵書点検システムを利用した船橋市西図書館 企画事業係の阿部崇宣氏は、その使用感を次のように語る。

「今回の取り組みは試験導入の段階ですが、蔵書の背表紙の読み取りの精度やスピードなどが最終的にどの段階まで向上させられるのかという点に注目しています。当館での蔵書点検は約5~7日の間で実施していますが、この点検期間にAI蔵書点検システムを活用することで半分くらいに削減できればうれしいですね。また、タブレットを利用した蔵書点検は操作が容易で使い勝手がよいので、当館のみでなく船橋市の図書館やほかの公民館とも連携して利用できれば、各施設の業務負担の解消にもつながっていくでしょう」

 実証実験では、千葉県のドローンメーカーであるLiberawareの小型ドローン「IBIS」1台を活用し、書架を無人撮影する取り組みも試験的に行われた。

ドローンと画像解析AIの連動を指標に

 IBISによる無人撮影を実施した経緯について、KCCS ICT事業本部 文教医療ソリューション事業部 事業部長を務める長野伸幸氏は次のように説明した。

「一般的な図書館の蔵書点検作業では、バーコードやICタグ、RFIDなどが使われていましたが、弊社のAI蔵書点検システムは画像解析AIを活用しています。人手不足の課題を抱える図書館の蔵書点検業務の効率化の手段の一つとして、ドローンによる無人撮影が活用できると考え、ドローンとの連携も検討していました。2019年11月6日に発表したAI蔵書点検システムの開発開始のプレスリリースにも、応用イメージとして将来的にドローンなどを駆使し、無人状態での撮影にも対応するといった内容を掲載しています」

 そのリリースを見たLiberawareから同社製のドローンと連携する提案があり、今回の試験導入に至ったと長野氏は話す。

 ドローンによる無人撮影が実現できれば、さらなる人手不足解消を実現できる可能性もある。

 新型コロナウイルスの影響で試験導入の取り組みはいったん中止されており、導入効果を検証するまでの十分なデータは得られていない。しかし、状況が緩和され次第、試験導入や実証などを進め、ドローンとAI蔵書点検システムの連動を目指して取り組みを進めていきたいと長野氏は説明している。

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