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石岡市、医療相談アプリを提供して子育て不安と医師不足の解消へ

石岡市、医療相談アプリを提供して子育て不安と医師不足の解消へ

2020年06月19日更新

無償の医療相談アプリで子育て世代の不安を軽減
~医師不足の解消も目指す石岡市~

茨城県の医師数は人口10万人あたり197.5人と医師不足の課題を抱えている。茨城県の中央に位置する石岡市も例外ではなく、123.1人とさらに低い。そこで石岡市は、茨城県が実施した医療相談アプリの実証事業に参加した。2020年4月からは、石岡市の事業としてLEBERの無償提供を開始している。実証事業から無償サービス提供に至った経緯について石岡市 保健福祉部 健康増進課に話を聞いた。

子どもの病気の不安を遠隔で相談

 茨城県では、医師数の少なさに加えて、小児科医の数も少ないことが問題視されてきた。

 その課題を解決するために茨城県が開始したのが、AGREEが提供する医療相談アプリ「LEBER」の実証事業「医療相談アプリを用いた子育て世帯の健康不安軽減実証事業」だ。本実証事業は、茨城県内の石岡市・大洗町・大子町の各自治体の子育て世帯を対象とし、2019年4月1日~2020年3月31日の約1年間、スマートフォンからLEBERを通じて医師に健康相談ができるサービスを無償提供するという内容で行われた。

 実証事業の結果としては、茨城県の総利用者のうちで「不安解消につながった」と回答している割合が77.6%、「適切な病院受診につながった」という回答が45.3%、「不要不急の受診回避につながった」と回答した割合が63.3%というデータが得られた。

 実証事業に参加した石岡市の保健福祉部 健康増進課 八郷保健センター 主任保健師である諏訪直美氏は、その経緯について以下のように説明する。「もともと当市でも、無料で医療相談ができるスマートフォンアプリサービスの導入を検討していました。しかし、費用対効果や市民のニーズが十分に把握できていなかったため、医療スマートフォンアプリサービスの導入は一旦見送りになっていました。そうした状況で茨城県からLEBERの実証事業への参加の打診があり、実際の導入効果や住民のニーズなどを調査することを目的として、実証実験に参加しました」

 茨城県の中でも石岡市は、分娩できる産婦人科病院が少なく、小児科を標榜している医療機関も十分に足りていない。そのため、子育て世帯に対する医療サービスを提供することが石岡市の医療分野における課題となっていた。実証事業への参加後、LEBERを導入することで前述の課題解決が見込めると判断したという。そこで石岡市は、2020年度の事業として継続し、LEBERを無償提供している。

 対象世帯は、石岡市内に住民票がある0~3歳の子どもがいる世帯だ。石岡市の無償サービスの広報のページから「【石岡市】医療相談アプリLEBER 無料相談」の登録ページへアクセスし、アンケートに回答して登録を行う。登録後、LEBERをインストールすることで、健康や医療の相談を無料・回数無制限で行える。利用者を含み最大5人まで、本人以外でも相談可能だ。過去の相談内容や回答内容も閲覧できる。

 当初の実証事業から1年が経過した。実証事業から2020年5月8日時点までの登録者数は544人で、実際に相談した件数は470件(1年での延べ数)にまで増加している。

チャットで簡単に診断

 LEBERは、医療相談アプリの開発・運営を行うAGREEが提供するドクターシェアリング式の遠隔医療プラットフォームだ。全国の医療機関17万件が登録しており、45の診療科と155名の医師に24時間365日どこでも相談できる。相談後には利用者が病状に対処しやすいよう、医師によるアドバイスがもらえる。また、医師からのアドバイスだけではなく「症状に適した近くの医療機関」や「症状に対してオススメの市販薬」を推奨しており、医療に対して知識が少ない利用者に有効なソリューションを提供することを強みとしている。チャットで簡単に相談できる手軽さから、体調不良による欠勤を削減し、企業の生産性向上につなげるビジネス用の相談アプリ「LEBER for Business」なども提供している。

 今回石岡市で提供されているLEBERの利用方法は、以下の通りだ。

■LEBERの利用手順

①LEBERを開き、ホームから「相談してみる」をタッチして相談を開始する。チャットロボットが症状を項目などで尋ねるので、自分に当てはまる症状を選択/回答する。
②医師が症状に合ったアドバイスを提示。
③症状に合わせてドラッグストアで販売している市販薬を画像付きで表示。
④利用者の付近にある医療機関やドラッグストアをGoogleマップで表示。利用者は適切に医療機関などを受診できる。

 LEBERを活用する際のポイントについて、諏訪氏は以下のように説明している。

「症状を入力するだけで医師によるアドバイスを受けられたり、症状に合った診療科の紹介などを受けられたりすることがポイントです。また、夜間に症状が発覚した場合には一晩様子を見ていいのかどうか、医師の目安を提示させられます。そのほか、症状に対して適切な市販薬の情報を取得できる部分もとても画期的だと考えています」

 今年度の無償サービス提供においては、石岡市が費用を負担することで住民に無料で提供できる形で実施している。LEBERの契約金額は年間132万円となっている。

 諏訪氏は、今後の展望を以下のように語る。「石岡市の全対象世帯数と現在のLEBERの登録者数を比べると、登録者数は決して多くありません。今後さらに石岡市内でLEBERを広め、市民の皆さまの育児の不安を軽減することにつなげます」

 LEBERの活用が進むことで、現在人手不足となっている医療現場の負担軽減も見込める。「外来診療をしていない休日や夜間の時間帯に、緊急性のない軽症患者が救急外来を利用するような、いわゆる『コンビニ受診』の防止にもつながります。これにより、救急外来を応診している医師の負担軽減を図ります」と諏訪氏は説明した。

医療相談アプリで適切な受診を

 LEBERでは、新型コロナウイルスに関する健康相談も受け付けている。「『新型コロナウイルスが心配』という新型コロナウイルスに特化した相談の項目を用意しています。もしも新型コロナウイルスに近い症状があり、不安を抱えている場合に、LEBERを利用して保健所や病院への受診につなげられる仕組みです」と諏訪氏は説明する。4月にLEBERを利用した新型コロナウイルスに関する相談件数は3件ほどあったという。

 諏訪氏は、「外出が自粛されている中なので、少し発熱したり具合が悪かったりしても病院へ行くかどうか悩まれる方も少なくありません。そういった状況では、この先も医療相談アプリのニーズもどんどん高まっていくと考えており、当市でもサービス提供を継続していきます」と述べた。

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