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ロボットやIoTセンサーを活用した遠隔操作営業の実証実験

ロボットやIoTセンサーを活用した遠隔操作営業の実証実験

2020年06月23日更新

アバターロボットやIoTセンサーで観光案内

東京都の丸の内エリアにある外国人向け総合観光案内所「JNTOツーリスト・インフォメーション・センター」(JNTO TIC)で、ANAホールディングスと三菱地所が「遠隔操作営業の実証実験」を行った。実験では、アバターロボットやIoTセンサーなどを活用した新しい施設運営の在り方が示された。

自然災害で施設運営が困難に

 JNTO TICは、日本を訪れる外国人旅行者に向けて全国の観光情報を提供する観光案内所だ。2012年1月のオープン以来、多くの訪日外国人旅行者に利用されている。

 そんなJNTO TICにおいて2月26日~28日の3日間、ANAホールディングスとJNTO TICを受託運営する三菱地所による「遠隔操作営業の実証実験」が実施された。観光案内施設の現場で、遠隔地のスタッフがアバターロボットや遠隔操作ツールを介して訪日外国人旅行者の観光案内を実施するという取り組みだ。

 実証実験を始めるきっかけとなったのが2019年10月に発生した東日本台風(台風第19号)だったという。当時、東日本台風の影響で公共交通機関は2日間の計画運休が実施された。JNTO TICは元旦を除き開館しているが、この自然災害の影響により対応できるスタッフがおらず、1日休館することになってしまった。自然災害などが営業活動へ及ぼす影響は大きく、活動を止めないための施設運営が求められていた。

 ほかにも、高度な外国語スキルが必要となる観光案内所の現場では、常に人手不足が続いている。育児や介護をする従業員に対して在宅勤務を導入して支援するなど、働きやすい環境を整えることが急務とされる。

 こうした課題を解決するため、三菱地所はアバターロボットの高い開発実績を持つANAホールディングスと共同で、自然災害時における施設運営の対応やリモートによる新しい働き方の検証を実施した。

自然な会話ができるアバターロボット

 本実証実験では、照明設備やドアの施錠/開錠などの施設運営に関する動作検証とアバターロボットを活用した接遇業務における課題の洗い出しなどが行われた。

 検証に活用された機器は、ANAホールディングス独自開発の普及型コミュニケーションアバター「newme」、Live Smartのスマートライフ・プラットフォーム「LiveSmart」とスマートハブ「LS Mini」、CANDY HOUSE JAPANのスマートデバイスロック「Sesame Lock」、岩崎電気の照明「Link-S2」だ。

 newmeは10.1インチのタブレット端末を搭載し、遠隔地にいるスタッフのPCとプラットフォーム「avatar-in」を利用して接続する。接続するとnewmeのモニターに遠隔操作するスタッフの顔が映し出され、その場にいる相手と対話が可能になる。自律走行型で時速2.9kmで移動し、遠隔操作できる。実証実験では遠隔地のスタッフがnewmeを操作し、案内所に訪れた訪日外国人旅行者を接遇した。newmeが室内を自走し、MAPやパンフレットの配架場所まで訪日外国人旅行者を誘導するなど、newmeが案内所のスタッフの手足となり働いた。相手とも不自由なく対話が可能で、newmeにMAPやパンフレットを表示させ、情報共有もできた。

 LS Miniやスマートデバイスは全て後付けが可能で、導入時の大規模な工事などは不要だ。導入後は、スマートロック、照明などを取り付けてLive Smartのアプリをスマートフォンにインストールすれば、一つのアプリケーションでデバイスを一括管理できるようになる。複数のベンダーのスマートホーム向けハードウェアを組み込めるため、低コストで導入できることもメリットだ。実証実験では、スマートロックの出入口の施錠/開錠、照明設備が電波干渉などの影響を受けずに多数の照明を遠隔消灯できるかなどが検証された。ワイヤレスカメラと接続して遠隔地から室内の状況確認もできた。出勤や退勤時のドアの施錠/開錠、点灯/消灯などが案内所に居なくても実現できるようになる。鍵の閉め忘れや照明の消し忘れといった事態にも案内所に戻ることなく、即座に対応できるだろう。

遠隔地にいる案内所のスタッフとアバターロボットを通して対話できる。

遠隔操作技術で無人営業も検討

 3日間の検証を通して、課題や改善点、新たな発見があったという。例えば、newmeのモニター画面のサイズ感だ。案内所では、MAPやパンフレットを示す機会が多いことから、10.1インチのモニターサイズでは小さく見えづらい部分もあった。情報共有をしやすくするためにもサイズアップの必要性があり、今後の課題となった。施設設備の遠隔操作では、スマートホームセンサーを扱ったことで、家庭環境とオフィスビルの環境に差異があることや今後設置を検討する際にどういった点に留意すればよいかを確認できた。

 案内所のスタッフからは、案内所ではホスピタリティある接遇が重要となるため、スタッフの表情が見えるnewmeは案内所の現場に親和性があると感じたといった声もあった。遠隔地からでも、案内所と変わらない施設運営ができるという可能性も見出せた。

 三菱地所では、これからの施設運営管理において本実証実験の結果を踏まえ、省人化を可能とするロボットや遠隔操作技術などのテクノロジー導入可能性について検討していく予定だ。自然災害などによる営業活動の対応や人手不足の問題解決に向けた取り組みを進めていく。なお、newmeについては、JNTO TICや他施設展開なども含め、本格導入は未定となっている。

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