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クライアント仮想化市場におけるDaaS多様化の背景―IDC Japan

クライアント仮想化市場におけるDaaS多様化の背景―IDC Japan

2020年06月24日更新

クラウド利用の多様化が進むクライアント仮想化
働き方に合わせたクラウド基盤選定が重要に

情報漏えい対策や働き方改革を目的に、導入が進むクライアント仮想化。
その市場動向についてIDC Japanに話を聞く中で、DaaS利用のニーズとその伸びしろが見えてきた。

Lesson1 建設/土木でクライアント仮想化導入が増加

 クライアント仮想化関連市場が拡大を続けている。IDC Japanが2019年6月17日に発表した「国内クライアント仮想化関連市場予測」を見ると、国内クライアント仮想化ソリューション市場は2023年に8,858億円まで拡大する予測で、2018~2023年の年間平均成長率は4.2%で推移する見込みだ。

 クライアント仮想化市場の調査を担当しているIDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストである渋谷 寛氏は「2019年の国内クライアント仮想化導入率を見ると、全体の24.2%のユーザーがクライアント仮想化ソフトウェアあるいはクライアント仮想化ソリューションを本格導入していました。また、21%のユーザーは導入検討を進めており、全体の約45%がクライアント仮想化に強い関心を示していることが分かります」と指摘する。

 業種別の導入率を見てみると、特に多いのが金融、製造、情報サービスの産業分野だ。また、昨今新たに導入が増加しつつある分野として、建設/土木がある。

「建設/土木の分野では、2020年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの影響で、クライアント仮想化の需要が伸長しました」と渋谷氏は指摘する。建設/土木ではBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling/Management)の活用で、これまで紙の図面で進めていた部材確認などの作業を、ITにより効率化する動きが進んでいる。それを活用する中で、セキュリティを担保するためにVDIを利用し、情報漏えいリスクを低減する動きが、建設/土木の分野で進んでいるのだ。

Lesson2 プライベートクラウド型を中心にDaaS利用が伸びる

「クライアント仮想化というと、一般的なオフィスで利用されるイメージが強いソリューションでしたが、昨今では前述したような建設/土木といった業界特有の利用シーンでの活用が進んでいる傾向にあります」と渋谷氏。

 また、自治体でのクライアント仮想化導入率も徐々に拡大しているという。背景には自治体情報システム強靱化対策を目的としたインターネット分離に、仮想化技術が採用されているケースが少なくないからだ。今後はさらに自治体でのクライアント仮想化導入率が増加していく見通しだ。

 2018~2023年における年間平均成長率が7.3%と高いクライアント仮想化サービス(Desktop as a Service)では、プライベートクラウド型に加え、エンタープライズクラウド型、パブリッククラウド型、ハイブリッドクラウド型など多様化が進む見込みだ。2018年ではプライベートクラウド型のDaaS市場が636億円と最も大きく、2023年には874億円まで拡大する予測だ。また、パブリッククラウド型DaaS市場の年間平均成長率は最も高く、25.8%で推移する見込みだ。

「DaaSはオンプレミス型のクライアント仮想化と比較して1割程度の市場です。その中でも現在の多くはプライベート型で、85%を占めています。国内企業の多くが占有型を好むためです」と渋谷氏は指摘する。

Lesson3 働き方に合わせたDaaS基盤選定が重要に

 プライベート型DaaSはオンプレミスのクライアント仮想化と一見大きな差がないように見えるが、基盤が共通化されていることでアップデートの手間がかからず、安定した品質のVDIを利用できる点が大きなメリットだ。

「パブリック型DaaSは利用時間単位で管理できる点が大きな強みです。2019年10月に提供が開始されたマイクロソフトのDaaSサービス『Windows Virtual Desktop』などは問い合わせが増加傾向にあるようです。例えば契約社員や業務委託、店舗スタッフなど、PCをあまり占有しない従業員や部門に対しては、パブリック型DaaSを提供することで情報漏えい対策を講じつつ、コスト効率のよいVDI運用が実現できるでしょう」と渋谷氏。半面、PCを占有して業務を行うオフィスの正社員が利用するVDIはプライベード型DaaSやオンプレミス型が適していると指摘した。

 また、新型コロナウイルス感染拡大に伴って、多くの企業で在宅勤務が推奨される中、今後クライアント仮想化市場にも影響が生じると渋谷氏は予測する。

「オンプレミスのクライアント仮想化はシステム構築が必要となるため、新規案件の増加は厳しくなるでしょう。しかし既に運用しているユーザー企業では、VDIを利用するユーザー数の拡張などが進んでいるようです。また、シンクライアント市場においては専用端末よりも、USBブート型のシンクライアントデバイスに伸びしろがありそうです」(渋谷氏)

Lesson4 在宅勤務増でDaaSとモバイル仮想化に伸びしろ

 在宅勤務の需要が増える中、特に伸びしろがあると指摘されたのがDaaSとモバイル仮想化だ。「DaaSは時間をかけずに迅速に構築が可能であるため、今回のように急遽VDI環境が必要になるようなケースにも対応がしやすいのです。モバイル仮想化も同様で、リモートワークの需要が高まったことでスマートフォンやタブレットの導入と平行し、モバイル仮想化ソリューションの導入が加速しそうです」と渋谷氏。

 仮想化技術の発展により、仮想デスクトップや仮想アプリケーションの多重化、複合化や認証技術との連携、クラウドサービスとの連携などが可能になった。「RPA製品をVDI上で使用する事例も増えてきています。VDIは情報漏えい対策には適していますが、認証が弱いという弱点があります。生体認証技術などとの併用が可能になったことで、さらにセキュリティが強固になるでしょう」(渋谷氏)

 こうした技術発展の背景には、クライアント仮想化技術導入後の満足度の高さ、また導入後の継続利用に伴い、利用拡大や再投資を続けていく動きがある。ユーザーの成功のスパイラルこそが、インテリジェントワークスペースモデル実現へとつながっているのだ。

 クライアント仮想化を導入したり、導入を検討したりしている企業の約6割はコンサルティングサービスを利用している。継続的なクライアント仮想化の利用につなげるには、ITサプライヤーによるサポートも重要になるだろう。

本日の講師
IDC Japan
PC、携帯端末&クライアントソリューション
シニアマーケットアナリスト
渋谷 寛 氏

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