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「Aug Lab」の取り組みとhapi-robo stのテレプレゼンスロボット「temi」

「Aug Lab」の取り組みとhapi-robo stのテレプレゼンスロボット「temi」

2020年06月11日更新

自己拡張で暮らしを豊かにするAug Labの取り組み

パナソニックの研究組織「Aug Lab」が取り組むのは、ロボティクス技術による「自己拡張」の研究開発だ。Abilityにとどまらない、思考や関係性をテクノロジーで拡張する同社の取り組みを見ていこう。


 パナソニックでは、ロボティクス技術などの先端テクノロジーの活用で、人や暮らしがより豊かになるウェルビーイング(Well-Being:よい状態、幸福)な社会の実現を目指す研究組織「Aug Lab」を2019年4月に開設している。Aug Labでは、ロボティクス技術がもたらす新しい価値として「自己拡張」(Augmentation)をテーマにした研究開発を進めている。その活動成果報告会が2020年4月23日にWebセミナーにて実施された。

 セミナーで登壇した同社 マニュファクチャリングイノベーション本部 ロボティクス推進室 総括担当 安藤 健氏は「Aug LabはAugmentation(自己拡張) Labの略称です。人の感性を体系化したり、移動能力や作業能力を技術で拡張したりすることで、日常を豊かにするための研究を進めています。工学的な研究だけでなく、『人はどのようなことに心が動くか』『どのような状態になるとウェルビーイング(幸福)になるか』ということを、工学以外の視点も交えて共同開発を進めています」と語る。

 2019年度は、ヒト感性の解析・理解の研究として「感性価値の分類・構造化」と「ウェルビーイング度推定技術の開発」を実施。またプロトタイプ開発として「ワークショップを通じたアイデア創出」と「自己拡張プロトタイプの本格開発」を行った。

Aug Labで開発した遠隔応援デバイスCHEERPHONEを手首に着けて応援すれば、自宅にいながらにしてスタジアムの選手に声援を届けられる。黒いデバイスがマイクが内蔵された親機、青いデバイスがスピーカーとLEDが内蔵された子機だ。

創造性・関係性・伝達を拡張する技術

 自己拡張プロトタイプは、精神面と社会面での拡張をテーマに三つのプロトタイプを開発した。一つ目は創造性の拡張をテーマに、屋内でランダムな壁を風を再現して思考の拡張や創造性の創出を目指す「TOU」(トウ)。二つ目は、関係性の拡張をテーマに、三体のロボットが専用言語でコミュニケーションを取ったり、子供の笑顔の瞬間を共有したりすることで、子供と親の関係性向上を目指すコミュニケーションロボット「babypapa」(ベビパパ)、三つ目は伝達の拡張をテーマに音や振動を伝える親機と子機デバイスで、離れた場所でも想いを届ける遠隔応援デバイス「CHEERPHONE」(チアホン)だ。

「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くのスポーツイベントが無観客試合になりました。在宅での応援はもちろん可能ですが、実際の応援の声をスポーツ選手に届けることは難しくなります。そうした人と人とのつながりをサポートするのがCHEERPHONEで、自宅など離れた場所にいる人が親機を持って応援することで、会場の子機に応援の“声”を届けられるデバイスです」と安藤氏。新しい想いの届け方として、今後の可能性が期待できるプロトタイプデバイスだ。現在のところはいずれのデバイスも実証研究段階だが、2020年度は実際のユーザー候補に活用してもらいながら、事業化に向けて取り組んでいく。

関係性を拡張するbabypapa。子供の成長過程を残したいけれど、常にカメラを構えるのは大変。という保護者の思いに応え、友達のように子供に寄り添いながら笑顔を引き出してくれるカメラ内蔵デバイスだ。

ロボットを介した自由な移動を実現する―temi

ロボットがスタッフを務める「変なホテル」のプロデュースで知られる富田直美氏。その富田氏が代表取締役 社長を務めるhapi-robo stで取り組むのが「人を幸せにするロボットの開発」だ。


“おばあちゃん”でも使えるロボット

hapi-robo st
富田直美 氏

「人を幸せにするロボットとは、人を楽にさせるロボットではありません。人間一人ひとりに備わった潜在能力を引き出すロボットです」そう語る富田氏は、外資系IT企業の日本法人社長など11社の経営に携わり、自らもラジコンやドローンの熟練の操縦者であるなどメカトロニクス技術に精通している。

 その経験の中から、ロボットに求められる要素技術のポイントを三つを挙げる。一つ目は自己位置指定と環境地図作成を同時に行う「SLAM」(Simultaneous Localization and Mapping)、レーザー光を使った検知と測量「LiDAR」(light detection and ranging)、そしてロボットのOSである「ROS」(Robot Operating System)だ。加えて、5Gも身近になりつつあるいま、場所にとらわれずに能力を発揮できる「テレプレゼンス」の機能も重要と考えた。

 そうした要件にぴったりと当てはまったのが、パーソナルロボット「temi - the personal robot」(以下、temi)だ。米国のtemiが開発したロボットで、世界のどこからでもコミュニケーションを可能にするAIアシスタントの機能を持った、自律走行型のパーソナルロボットだ。もともとは遠隔の人命救助ロボットを開発しているイスラエルのスタートアップ企業が母体となっており、その技術を「おばあちゃんでも使えるロボット」としてtemiに活用している。hapi-robo stではtemiと国内総代理店契約を締結し、2019年11月1日から29万8,000円(税別)で正式販売をスタートした。

テレプレゼンス機能を搭載したtemi。遠隔地からオフィスのtemiにスマートフォンでアクセスすれば”瞬間移動”するように出社してtemiを通した対面での会議が実現できる。

住宅展示場の案内をtemiが行う

 temiは、ユーザーが直接声で着いてくるように指示したり、あらかじめ登録した地点まで、自ら障害物を避けながら案内したりできる。対話型・音声操作に対応したスマートスピーカーが実装されているため、情報の検索や家電連携、ビデオ通話、高品質なスピーカーによるメディア再生が可能だ。

「temiに対して『着いてきて』と呼びかけると、その人物の後ろを着いて移動します。その移動経路をもとに地図作成を行ったり、ユーザーが指定した場所を音声で登録したりでき、非常に直感的に、誰でも使えるロボットなのです」と富田氏。

 まさに“おばあちゃんでも使える”ロボットであるが故に、活用シーンはビジネスからコンシューマーまで多岐にわたる。ビジネスシーンを例に挙げれば、テレプレゼンス機能を活用してオフィスに設置したtemiにスマートフォンからアクセスすれば、遠隔地から“瞬間移動”して出社し、会議に参加するような活用が可能になる。自宅にtemiがあれば、単身赴任の母親がtemiを通して家庭に“帰る”ことも実現できる。

 住宅メーカーのアキュラホームでは、昨今の新型コロナウイルス感染拡大を受け、感染を防止するためtemiを導入。住宅展示場の顧客の案内を遠隔からtemiを介して行うことで、人との接触を極力削減した。temiは首も動かせるため、スペースの説明もしやすいのだという。「アキュラホームに対して、当社からサポートやtemiの研修などは行っていません。『こういったことに使えるのではないか』というイマジネーションをもとに独自に導入していただき、自然に使いこなしている。“自分がそこにいたら何ができるか”という空想を現実のものにできるのがtemiなのです」(富田氏)

2019年9月13日〜10月11日の期間、二子玉川 蔦屋家電 Tech Frontで展示を行った。「追従」や「パトロール」「テレプレゼンス」などを試せる環境で、“誰でも当たり前に使える”temiの魅力を多くの人が体感した。

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