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PC環境を仮想化する「Windows Virtual Desktop」と「Shadow Desktop」

PC環境を仮想化する「Windows Virtual Desktop」と「Shadow Desktop」

2020年05月12日更新

DaaSで運用管理をシンプルに

クラウドサービス経由でデスクトップ環境を利用できるようにするDaaS(Desktop as a Service)は、デジタルワークプレイスを形作るテクノロジーの一つだ。

 前ページで日本アイ・ビー・エムの東根作氏が挙げたデジタルワークプレイスの技術要素の中にDaaSがある。DaaSは、簡単に言えばVDIがクラウドサービス化されたイメージだ。システム基盤のほとんどの運用管理はクラウドサービスを提供する事業者が担当するため、ユーザーはいつでもどこからでもアクセスできるデスクトップをサービスとして利用可能だ。そのDaaSのサービスとして、マイクロソフトが提供しているのが「Windows Virtual Desktop」(WVD)だ。

「デジタルワークプレイスを実現させていく上で、システムやサービスの運用管理は大きな課題です。その課題を解決するサービスとしてDaaSの選択は効果的です。既存のVDIは初期コストが膨大になったり、性能が陳腐化してしまうという課題もありました。それらの課題もクラウドサービスであるDaaSであれば解決できます。10人からでも始めることができ、常に最新のサーバーの処理性能を生かせるのです」(日本マイクロソフト パートナー技術統括本部 クラウドソリューションアーキテクト (Hybrid) 高添 修氏)

 こうしたメリットを備えるDaaSとしてのWindows Virtual Desktopには、さらにどんな魅力があるのか。高添氏は続ける。「Windows 10のマルチセッションが利用できるのがポイントです。従来までWindows Serverで行っていたものが、Windows 10で可能になります」

 Windows Virtual Desktopは、Azure上でWindowsを動かす仮想マシンを稼働させる。必要なライセンスは、以下の通り。

Windows 10 Enterprise マルチセッション、Windows 10 Enterprise シングルセッション、Windows 7シングルセッションのいずれかを稼働させる場合
-Microsoft 365 E3, E5
-Microsoft 365 A3, A5, Student Use Benefit
-Microsoft 365 F1, Business
-Windows 10 Enterprise E3, E5
-Windows 10 Education A3, A5
-Windows 10 VDA per User

Windows Server 2012 R2/2016/2019を稼働させる場合
-ソフトウェア アシュアランス付きのRDSクライアント アクセス ライセンス (CAL)

 これらに加えて、Azureで利用する仮想マシンやストレージ、ネットワークの実稼働料金が必要となる。

Windows Virtual Desktop の新しいUI が登場する。

新UIが登場

 さまざまなDaaSソリューションが存在する中で、Windows Virtual Desktopの課題は運用管理面にあった。「Azure上の設定をPowerShellで行う必要があったため、ややハードルが高いイメージがあったのも事実です」と高添氏は明かす。そこでマイクロソフトは、そのハードルを取り払うために新しいUIの提供を開始する。「従来よりもさらに手軽に設定や管理を可能にするUIが提供されます。これによって導入の敷居が大きく下がるでしょう」(高添氏)

 Windows Virtual Desktopは、従来からVDIを提供するベンダーとの協業も加速させている。例えば、VMwareやシトリックスは、それぞれのクラウドサービスである「Horizon Cloud」や「Citrix Cloud」とWindows Virtual Desktopの連携を実現させた。「Windows Virtual Desktopで細かい管理をしたい場合には、Azureのさまざまな機能を組み合わせて構築しなければなりません。Horizon CloudやCitrix Cloudと連携させれば、そうした管理が手軽に行えるようになるのです」(高添氏)

 より手軽に始められて、他社との協業で付加価値の提供も実現しているWindows Virtual Desktopだが課題もある。例えば、コラボレーションツールであるMicrosoft Teamsへの対応だ。「VDIとTeamsの問題で現状は映像の配信など通信において遅延が発生してしまうのです。これから、この課題については早急に解決していく予定です」(高添氏)

 これらの課題も含めて、Windows Virtual Desktopは今後数カ月でさらに進化を遂げていくという。

データの仮想化で手軽にテレワーク

写真は左から、アール・アイ 箕浦氏、大原氏、増渕氏

VDIのような大規模なシステムを導入しなくても、セキュアなテレワーク環境を構築できるソリューションとして、アール・アイは「Shadow Desktop」を提供している。

 アール・アイが提供するShadow Desktopは、情報漏えい対策や災害時のBCP/DR対策、PC紛失時のバックアップなどを実現する総合的なデータプロテクション製品だ。

 アール・アイ 取締役 箕浦晃久氏は現況を次のように説明する。「働き方改革や今夏に予定されていたオリンピックに伴うテレワーク対応への需要とともに、2月ごろからは感染症の拡大に合わせた在宅勤務対策としてもお問い合わせが急激に増加しています。評価版のお試しも、従来までは1日数件単位でしたが、現在はそれが数十件単位へと急増している状況です(3月末の取材時点)」

 Shadow Desktopもまた、デジタルワークプレイスの環境構築に一役買うソリューションになっているようだ。

 Shadow Desktopの仕組みは非常にシンプルだ。Shadow DesktopをPCにインストールするとPC内のデータはアール・アイが提供するクラウドストレージにアップロードされる。そして、PCのローカルストレージからはデータが削除される。その後は、データを使用する際は常にクラウドストレージにアクセスするプロセスとなる。

 PC内にはデータが保持されず、PC紛失時のデータ漏えいのリスクが解消されることから、安全なリモートワーク環境の整備に貢献する。持ち出しPCからの情報漏えいなどの懸念からテレワークやリモートワークの導入に二の足を踏んでいた企業を後押しするソリューションとなるだろう。Shadow Desktopの仕組みをアール・アイは、“データの仮想化”と呼んでいる。

 Shadow Desktopは、ネットワークに接続できないオフライン時でもデータの利用が可能だ。PCで作業する際、使用するファイルはローカルストレージ内の専用領域に断片化された状態でキャッシュされる。データの読み書きはキャッシュされたデータに対して行われ、随時クラウドにアップロードされていく。キャッシュは以下のように設定できる。

・シャットダウン時にキャッシュを削除
(クラウドへ未アップロードのファイルは削除しない)
・シャットダウン時もキャッシュを保持
(指定された容量のキャッシュを保持)
・シャットダウン時はキャッシュを強制的に削除

 これらの設定を使い分けることで、オフライン時での作業を実現しつつ、安全な環境も維持できる。「ライトコントロール」機能も用意されている。対象ディレクトリー以外へのデータの書き込みを制御し、USBメモリーやCドライブ直下などへのデータの保存を禁止するなど、許可されたフォルダー以外への書き込みの制限が可能だ。

デジタルトランスフォーメーションの核に

「ポイントは、インフラ不要でインストールするだけですぐに始められる点にあります」――。こうアピールするのは、アール・アイ 営業部 アカウントマネージャーの大原秀和氏だ。テレワークやリモートデスクトップ環境を構築する他のソリューションと比較して、手軽に導入できて迅速にセキュアなテレワークを実現できる点が、ユーザーから大きな支持を得ているという。

「使用する際のPC操作も、普段と何も変わりません。いつもと同じようにPCの電源を入れて、Officeなどのアプリケーションを立ち上げ、作業するだけです。PCのログオンと同時にShadow Desktopは自動で起動しています。従業員の間でITリテラシーに差がある場合でも、問題なく使用していただけるのです。Active Directory環境があれば、PCへの一括インストールも可能です」(アール・アイ 営業推進室 室長 増渕 亮氏)

 Shadow Desktopは、Windows 7 EOS後の需要喚起の材料としても有効だと箕浦氏は促す。

「Windows 7からWindows 10への移行提案でノートPCを売ったあと、これから何を提案すべきか悩まれているケースもあるでしょう。そうした際に、提案したノートPCへのShadow Desktopの導入で手軽にテレワークが実現するという提案シナリオが描けるのです。販売パートナーとユーザーと双方にとってメリットのある提案になるはずです」

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