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遠隔から校外学習を実現できる

遠隔から校外学習を実現できる"IoA学園"が体験に基づく学びを実現―凸版印刷

2020年05月26日更新

学校と遠隔地をつなぐIoA学園が
校外学習のリアルな体験を再現する

学校から離れ、工場や博物館などさまざまな場所で“体験”を通した学びを深める校外学習。しかし、時間や場所、身体的な制約などを理由に、校外学習を実現できないケースも存在する。凸版印刷は4Kと5G回線を利用した遠隔校外学習サービス「IoA学園」により、校外学習に生じる制約を解消し、“体験”を通した学びの実現を支援している。

学校と遠隔地をつなぐIoA

 教室での座学では難しい“体験”を通した学びを実現する校外学習。社会科における工場見学や理科における科学館見学など、学校という場から出て教科書では伝えきれない、理解を深めにくい内容を体験から学ぶことで、教材に対する理解をより深めることが可能になる。

 しかし、校外学習を実現するためには、見学先の確保はもちろんのこと、移動にかかる時間や身体的な制約が生じるため、頻繁に実施することは難しい。例えば海外のような、学校との距離が離れた遠方への校外学習を実施することは、移動時間はもちろんのこと費用の側面から見ても、なかなか実施が難しいだろう。

 そうした校外学習に生じる制約を解消しつつ、よりリアルな“体験”が可能な遠隔校外学習サービス「IoA学園」を凸版印刷が2019年11月20日から提供している。遠隔地と教室をIoA学園でつなぐことで、よりリアルな映像を児童生徒に届け、学習体験の向上につなげる。

 そもそもIoAとはなにか。Internet of Abilitiesの略称であり、「能力のインターネット」と訳される。東京大学大学院情報学環 教授の暦本純一氏が提唱した概念で、ネットワークを介して人間がテクノロジーとサイボーグのように融合し、人類の意識や能力を拡張する未来社会基盤を示す。全てのモノがインターネットにつながるIoTをさらに発展させた概念といえる。凸版印刷では、その暦本氏と「IoA仮想テレポーテーション」技術を共同で研究開発を行っている。

 凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 先端表現技術開発本部 ビジネス開発部の荻野孝士氏は「約3年前に、IoA仮想テレポーテーションの研究開発を暦本教授と共同でスタートしました。IoA仮想テレポーテーションは、自分がそこにいるかのような感覚で遠隔体験ができる技術です。IoA学園では、このIoA仮想テレポーテーションの技術をベースに、学校と遠隔地を4K映像とNTTドコモが提供する5G通信でつなぐことで、遠隔での校外学習を支援します」と語る。

IoA仮想テレポーテーションを活用した学校での実証実験

鹿島特別支援学校で実施されたサッカースタジアムの様子を遠隔で体験する授業。肢体不自由など障害を持つ子供たちでも、スタジアム観戦の素晴らしさを体験できた。
双葉南・北小学校での「バーチャルふるさと遠足」。帰還困難区域にある故郷の様子を目にして、復興への気持ちを新たにした。

帰還困難区域に〝里帰り〟

 IoA仮想テレポーテーションの実証実験において、遠隔教育での利用効果が高かったことがIoA学園製品化の背景にある。例えば福島県いわき市の双葉町立双葉南・北小学校では、東京電力福島第一原発事故で故郷への立ち入りが禁じられている福島県双葉町の小学生を対象に、IoA仮想テレポーテーションを利用した授業を2018年と2019年にそれぞれ1回ずつ実施している。

「福島県双葉町は、東日本大震災から9年が経った現在も町内のほとんどが帰還困難区域に指定されており、15歳未満の立ち入りが禁止されています。そのため、双葉町立双葉南・北小学校の児童は2014年4月から、約80キロ離れたいわき市内の校舎に移転して授業を受けています」と荻野氏。

 そこで、IoA仮想テレポーテーションを利用して「バーチャルふるさと遠足」を実施。ドローンをはじめとした児童の分身となるデバイスを利用して、町の風景や現地で復興に向けて働く人々とのディスカッションなどを行った。「取り組みのきっかけは、児童の保護者から『子供たちに故郷を教えたい』という声があったことでした。中には、変わってしまった故郷の風景を目にして、子供たちがショックを受けてしまうのでは、という心配の声もありましたが、復旧の進む双葉町駅の様子や、除染作業員や工事関係者へのインタビューなどを通して、従来の校外学習では実現できない貴重な学習体験を実現でき、子供たちの復興への意欲も高まったようでした」(荻野氏)

 また、特別支援学校での活用も行っている。茨城県鹿嶋市の鹿島特別支援学校において、サッカースタジアムの様子を、IoA仮想テレポーテーション技術でパブリックビューイングを実施した。肢体不自由などの障害を持つ子供たちにとって、実際にスタジアムに足を運ぶことは困難だ。しかし、教員がスタジアムを歩きながら、現地の様子を支援学校の体育館に設置された大型モニターに表示させることで、スタジアム観戦の素晴らしさを共有できた。

非常時の学習継続にも有効

 これらの取り組みから、IoA学園としてのパッケージ提供を決めた凸版印刷。パッケージ化にあたっては学校現場で導入しやすい価格体系にこだわり、最小構成15万円で1週間利用できるようにした。

 5G通信により双方向に接続するテレポートクラウド(1ポータル・1デバイス接続)と、凸版印刷が開発したウェアラブルカメラデバイス「IoAネック」1台などがレンタルされる。遠隔地からの映像を表示させる大型モニターやPCはユーザー側での用意が必要だ。

「新型コロナウイルスの影響に伴い、現在民間企業側からの引き合いも非常に増えています。都立学校がゴールデンウィーク明けまで休校となるため、工場見学などの利用が激減してしまったことが背景にあります」と荻野氏。

 実際にレクサスインターナショナルにおいて、IoA学園を利用した工場見学を実施した前例もあるという。

 例えば自宅でタブレット学習などが可能な学校などは、自宅にいながらIoA学園の環境を使って工場見学をするような活用も可能だ。非常時においても既存の学習環境を継続できるメリットは大きいだろう。

「IoA学園は、テレビ会議のような一方向の体験ではなく、例えば遠隔地のドローンを動かして好きなところを見に行くというような双方向の体験ができるため、より没入感の高いリアルな学びが可能になります。今後教員が不足していく中で、IoA学園のようなシステムを利用して学校同士をつないだ合同授業や、好きな先生を選んで受講するようなスタイルも増えていくでしょう」と荻野氏は語った。

凸版印刷が開発したウェアラブルデバイス「IoAネック」。装着者が見たり聞いたりしたものを、遠隔地の画面に転送して同時に体験できる。
遠隔地で画面を見ている人がコントローラーを通じてIoAネックを振動させて、進行方向を指示することも可能だ。

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