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新型コロナの影響で急速に進む教育ICT環境整備の行方―各省庁の取り組み

新型コロナの影響で急速に進む教育ICT環境整備の行方―各省庁の取り組み

2020年05月18日更新

【急報】新型コロナウイルス感染症に伴う一斉休校
学びを継続するための各省庁の取り組み

2月末に安倍晋三内閣総理大臣が小中高校の全国一斉休校を要請したことを皮切りに、4月10日時点においても約6割の学校が休校措置を継続している。その中でも学びを止めないために、いま改めてICT教育環境の整備が注目されている。

臨時休校期間の学びを支援する
オンラインコンテンツポータルサイトを公開

オンライン教育コンテンツ

 文部科学省では、子供たちの学びを止めないための支援策の一つとして、オンライン教材コンテンツのポータルサイト「子供の学び応援サイト」を公開している。

 小学校、中学校、高等学校、特別支援教育、幼児教育といった教育課程に沿った学習支援コンテンツを教科別に一覧表示している。家庭での自主学習向けに、教科書に掲載されている教材を基本とした学習の工夫例も紹介されている。4月12日にはLINE公式アカウントも開設し、より情報を検索しやすくなった。

 また、役立つ情報リンク集として、小中学生向けの各種サイトを教科ごとに整理して紹介している「おすすめキッズサイト」、特別支援学校等の子供向けの家庭で手軽に利用できるデジタルコンテンツ「岐阜県まるごと学園」「教材デジタルコンテンツデータベース」などをまとめて紹介。外出自粛の中の運動不足を解消するため、家庭でも可能な運動遊びやスポーツメニューを発信する「やってみよう運動遊び」「Myスポーツメニュー」なども紹介されており、座学にとどまらない学びを支援する。

 経済産業省では、同省の実証事業「未来の教室」Webサイト内に「学びを止めない未来の教室」ページを公開。民間のEdTech事業者のサービスや取り組みを個人向け、学校向けにまとめ、教員が学校から遠隔授業するためのサービスの案内や活用方法も紹介している。学びを止めない未来の教室でも公式LINEアカウントを開設しており、選択肢をタップしていくだけでEdTechサービスを検索できて分かりやすい仕組みだ。

 実際に臨時休校期間中に、ICTを活用して学習に取り組んだ事例は少なくなく、鹿児島県総合教育センターなど複数の教育現場において、休業期間中の子供の家庭学習教材として、すぐに学習できる動画やドリルなどの一覧を公開し、家庭でも充実した学びが実現できるよう支援を行っていた(3月19日時点)。

学びの機会損失を回避するため
遠隔授業の実施検討を加速

遠隔教育

 オンライン教材の活用と併せ、文部科学省では同時双方向型のオンラインでの指導(遠隔授業)についても実施を促している。すでに教育現場のICT環境が整備された自治体や学校では双方向型のオンライン指導を実施した例も出てきている。

 文部科学省が3月19日に発表した「学校の臨時休業の実施状況、取組事例等について」によると、長崎県対馬市立中学校では、すでに1人1台のタブレットが整備されていることから、生徒はその端末を家庭に持ち帰り、毎朝決まった時間に健康報告を行っている。また、休校の期間中は1日5時間の家庭学習に取り組むよう指導し、その内1日4コマ(60分×4)は学校から課題を送信している。生徒は、各教科担任から課せられた課題に自宅で取り組み、設定時間までにその結果を画像で送信。教科担任はチェックを行い、コメントを添えて返信することで、遠隔にいながらにして健康観察や学習成果の確認を実現している。

 遠隔学習の実現を図るため、2020年4月7日に閣議決定された緊急経済対策の「GIGAスクール構想の加速」において、「緊急時における家庭でのオンライン学習環境の整備」が盛り込まれている。学校からの遠隔学習機能の強化として6億円が計上され、臨時休業など緊急時に学校と児童生徒がやり取りを円滑に行うため、学校側が使用するカメラやマイクなどの整備を支援する。

 また、経済産業省も今回の緊急経済対策の中で、「遠隔教育・在宅教育普及促進事業」に対して予算額(案)30億円を計上している。本事業では、EdTechを用いて学習スタイルを転換したい学校等への導入実証を、学校等による費用負担が生じない形で進めるべく、導入実証を行うEdTechサービス事業者を補助するものだ。デジタルドリル型問題集や、協働学習・反転授業支援ツールなどが導入サービス例として挙げられている。また、さらに良質な学習コンテンツの開発にも取り組んでいく方針だ。

GIGAスクール構想を前倒し
ICT環境の早期整備を進める

端末環境整備

 2020年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」において盛り込まれた「リモート化等によるデジタル・トランスフォーメーションの加速」。その中で、文部科学省は「GIGAスクール構想の加速」を進めることを決定し、2023年度までの児童生徒1人1台端末の整備スケジュールを前倒しで進めていく。GIGAスクール構想におけるハード・ソフト・人材を一体とした整備を加速させることで、緊急時においてもICTの活用により全ての学びを保証できる環境を実現することを目的としており、2020年度補正予算額(案)として総額約2,292億円が計上されている。

 特に予算が割り当てられているのが1人1台端末の早期実現であり、1,951億円。2019年度補正措置済となっている小学校5、6年、中学校1年に加え、残りの中学2、3年、小学校1~4年の全ての措置を進めていく。また障害のある児童生徒のための入出力支援装置整備にも11億円の補正予算が計上されており、端末の使用にあたり必要になるそれぞれの障害に対応した入出力支援装置の整備も支援する。その他、オンライン学習環境の整備予算については「遠隔授業」「通信ネットワーク」の項で解説する。

 4月7日の萩生田光一文部科学大臣の記者会見録では、記者の「緊急事態宣言が出た地域を優先的に配備することを検討しているか」という質問に対し「特にこれから長期にわたって学校が休校する自治体に関しては、できる限り早期の購入を促していきたい」と回答している。また、全国レベルでの整備状況を見ると、現時点で家庭に端末を持ち帰ることは難しい自治体が多いと指摘し「(会見当時、緊急事態宣言の対象となっていた)7都府県は、家庭にPCやタブレットがある場合はそれらを使用し、持っていない家庭には学校のPCやタブレットを持ち帰って授業を行ってもらいたい」と語っていた。

モバイルルーター貸与や
通信キャリア協力でネットワーク環境を整える

通信ネットワーク

 オンライン教材を用いた自宅学習や遠隔学習を実施する際に、課題となるのが児童生徒の家庭のネットワーク環境だ。家庭によってはそもそも固定回線を引いておらず、スマートフォンのモバイルネットワーク回線をテザリングして使っていたり、公衆無線LANでWi-Fi環境を利用していたりするケースもある。家庭のネットワーク環境が整っていなければ、遠隔での学びを実現することは難しい。

 そこで文部科学省は緊急経済対策に「家庭学習のための通信機器整備支援」を盛り込んだ。Wi-Fi環境が整っていない低所得帯家庭に対する貸与等を目的として自治体が行う、モバイルルーターによるLTE通信環境の整備を支援するため、147億円を計上している。世帯の年収400万円未満を対象として想定し、国立、公立、市立の小・中・特支などの学校への整備を行う。モバイルルーターの通信費は各自治体負担を想定している。

 家庭でのオンライン学習に向けた通信環境の整備には、総務省も取り組みを進めている。

 総務省はすでに4月3日、「新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う学生等の学習に係る通信環境の確保に関する要請」として、電気通信事業者関連4団体に対して、携帯電話の通信容量制限等について、柔軟な措置を講じることなどの要請を実施した。この要請を受け、通信キャリア各社は50GB相当までの追加通信費を無償にするなどの対応を行った。

 また、緊急経済対策においては「在宅学習・在宅勤務・オンライン診療等を後押しする情報通信ネットワークの整備」に30.3億円を予算案として計上しており、光ファイバー未整備の学校を有する地域において、地方自治体や電気通信事業者などによる、5G等の高速・大容量無線通信の前提となる伝送路設備などの整備を支援していく。

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