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パナソニックが手がける"栽培ナビ"が実現するAgritech

2020年05月21日更新

“栽培ナビ”に蓄積された情報が農業を変える

こと日本の導入では、情報共有のしやすさや、生産者との連携がポイントとなっていた栽培ナビ。その機能の全容と、さらなるデータ活用の可能性について、パナソニックに聞いた。蓄積されたデータの活用により拓かれる、化学的で論理的な農業の未来がそこにはある。

見える化と価値創造で“儲ける”農業に

 地域を支える農業協同組合や農業法人などと、生産者を双方向につなぐクラウド型農業管理システムとして開発された栽培ナビ。2016年12月のサービススタートから多くの農業事業者に活用され、その経営課題解決に役立てられている。

 パナソニック アプライアンス社 事業開発センター アグリ事業プロジェクトの新居道子氏は「当社が考える営農システムは、生産者にとっての“儲けるためのツール”です。そのためには、何にどれだけの時間をかけているかを見える化することと、生産物の価値を上げることが必要です」と指摘する。

 その見える化と価値創造の両方を実現するのが、栽培ナビだ。栽培ナビは、農作物の生産状況や生産履歴、農薬使用状況などの情報を生産現場から流通、食品会社まで共有できる。

「昨今の災害被害の増加に伴い、情報共有ができるシステムの重要性は非常に高まっています。特に卸会社などは、どの圃場でどういう作物が作られているか、現在の育成状況はどうか、などを可視化しておくことで、万が一仕入れ先の圃場が台風被害に遭ったり、病害虫が発生したりした場合でも、他の被害が発生していない仕入れ先から農作物を仕入れることで出荷を止めずに済みます」と新居氏。

 それでは、情報共有のためには何が必要なのだろうか。システムはもちろんだが、過不足のない情報入力が不可欠だ。そこで、栽培ナビでは作業状況や生産履歴などを、必要な人に必要な部分だけ情報共有できるシステムを提供している。

 農場メンバーの役割や習熟度に応じて、見られる箇所や登録・起案できる箇所の設定が行えるため、誤操作や誤入力のトラブルが防げる。生育状況の記録や写真、生産履歴も共有可能で、例えば病害虫情報や栽培こよみなど、形成しているグループ内に向けての共有も行える。

センサー解析で作物に付加価値を

 操作画面は文字が大きく、またピクトグラムで親しみやすい直感的なUIを採用した画面と、表計算ソフトウェアのようなUIで機能的な画面の二つを用意しており、入力者や用途に応じて選択して使える。

 また、入力が負担にならないようにスマートフォンやタブレットからの入力にも対応している。作業開始や作業終了などもスムーズに登録でき、記録漏れを防げる。

「バーコードから農薬を登録できる機能も搭載しています。作物に応じた適合農薬の表示や、使用方法、回数の見える化が可能です。またITセンサーとも連携でき、温度や湿度、照度などのセンサー情報をもとにした効率的な作物の生育を実現できます。例えば夏が旬のメロンを冬に出荷できれば、希少価値や単価が上がりますが、冬メロンを生育するためにはボイラー加温が必要になるなどコストが高い側面もあります」と新居氏。

 そこで栽培ナビとITセンサーを連携し、地温の変動を可視化することで、電熱による温度コントロールで地中の温度を15度以上に保ち、ボイラー加温をせずに冬メロンの栽培に成功した事例がある。また地温の変化をビッグデータ解析すると、12月頭までに地温が下がっていくため、8月頭に苗を植えるとよい。といったデータに基づく農業が可能になるのだという。

土作りから始める化学的農業

 新居氏は「農業従事者の高齢化が進む中、若い農業従事者へノウハウやナレッジ(知識)の共有が何より必要になります。栽培ナビではそのナレッジをデータベースとして残す“図書館”という機能も実装しています。また、経験や勘に頼った農業ではなく、化学的・論理的な農業を実現するため、現在『最適な土づくりと栽培の見える化』の実証実験にも取り組んでいます」と語る。この実証実験は、こと日本をはじめさまざまな農業事業者と取り組みを進めており、農作物の生育に必要な土の成分を化学的に分析して実証していくことで、今後の生産や農業技術の向上へ生かしていく。

「農作物の出来が悪いと天気のせいにされがちですが、作物を育てるためには土が重要です。栽培する作物に適した土づくりによって、より安定的な栽培につなげる方法の確立を目指します」(新居氏)

 栽培ナビは日本GAP協会推奨システムであり、食品安全や環境保全、労働安全などの持続性を確保するための第三者認証であるGAP取得により、国外への輸出をする際の信頼性担保にもつながる。

「現在特に栽培ナビの導入が多いのは農業法人です。導入先によっては現在の栽培ナビの機能では十分に対応できないケースもあり、要望を適宜ヒアリングしながら個別にカスタマイズを行ったり、ニーズの多い機能は全体に実装していったりとアジャイル型の開発を進めています。農業を“儲ける”ものに変えるため、今後も化学やITの力でサポートを続けていきます」と新居氏は展望を語った。

文字が大きく、ピクトグラムで親しみやすいUI。ITに不慣れな生産者でも使いやすいようにこだわって開発された。
表計算のようなUIは、多くの圃場を管理する農業法人に好評だ。データベースは統一されており、どちらのUIを選択しても問題ない。
国別×作物別の残留農薬基準を簡単に検索して、作物の輸出を支援する輸出ナビも提供。使える農薬もリストアップできる。
栽培ナビリンクに対応したITセンサーを使えば、温度や湿度、気温などを遠隔監視できる。閾値を設定してアラート通知も可能だ。

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