ホーム > PC-Webzineアーカイブ > レゴの「SPIKE プライム」を活用した授業実践―相模原市立清新中学校

レゴの「SPIKE プライム」を活用した授業実践―相模原市立清新中学校

レゴの「SPIKE プライム」を活用した授業実践―相模原市立清新中学校

2020年04月22日更新

新学習指導要領に準拠した中学技術科のプログラミング教育
SPIKE プライムで農業の自動化プログラムに挑戦

中学校では2021年度から新学習指導要領が全面実施となる。小学校のプログラミング教育に注目が集まっている中、中学校の新学習指導要領にも大きな改訂が加えられており、従来盛り込まれていたプログラミングに対する学びがさらに拡充されている。今回は、新学習指導要領の内容に基づき、中学校技術科においてプログラミングを実践した相模原市立清新中学校での公開授業を取材した。

プログラミングで農業課題を解決

 2021年度から全面実施となる中学校の新学習指導要領。小学校でプログラミング教育を学んだ子供たちが、さらに発展的なプログラミングを学ぶことを前提とし、主に技術・家庭科の「D 情報の技術」において、プログラミング教育の拡充が盛り込まれている。

 具体的には、「ネットワークを利用した双方向のコンテンツのプログラミングによる問題の解決」、「計測・制御のプログラミングによる問題の解決」といった、実際にプログラミングの技術を活用し課題解決を図るという要素が加わった。

 相模原市立清新中学校(以下、清新中学校)では、この「計測・制御のプログラミングによる問題の解決」に基づき、「農業を自動化する計測・制御システム」を題材にして2年生の技術の時間にプログラミングを活用した授業を実施した。

 活用したツールは2020年1月にレゴ エデュケーションが販売を開始した「レゴ エデュケーション SPIKE プライム」(以下、SPIKE プライム)だ。

 授業計画は全8時間で構成されており、公開授業で実施されたのは5時間目の授業に当たる。前の4時間の授業では、プログラムで自動化された技術を知ることからスタートし、SPIKE プライムを使った計測・制御の体験や、収穫作業を自動化するための情報処理手順などを学んでいた。

 公開授業では、収穫作業を自動化する中でも、クラウドデータの天気予報をもとに、天候条件による収穫作業の判断や処理を行い、効果的に収穫作業を自動化するプログラムの作成を行った。

生徒たちは複数人のグループになり、タブレットとSPIKE プライムのロボットを共有して意見交換しながら農業自動化のロボットを開発していた。
SPIKE プライムのアプリケーションはScratchベースで作られており、生徒たちは直感的にプログラムを開発できていた。

クラウドから天気予報データを取得

 まず授業では、農業の自動化によって得られる効果を知るため、実際に農業が自動化される様子を動画で視聴し、それによって農業に関する問題がどう解決されるかを検討した。

 次にSPIKE プライムを活用し、収穫する作物の色や距離を計測して、モーターとライトを制御するプログラムを組んだ。授業では、実がなったミニトマトが描かれたイラストを貼り付けた段ボールを利用し、実際にSPIKE プライムで作成したプログラムで色を読み取って、収穫可能な果実かどうかを判断した。

 具体的には、距離センサーで、5cmよりも近ければ移動をやめ、遠ければ5cm(この数値は任意で変更できる)移動することで、トマトにSPIKE プライムを近づける。8色の判別が可能なカラーセンサーで色を識別し、赤だったらSPIKE プライムの「Large Hub」のLEDライトをトマトマークなどに点灯させ、緑だったら×マークを点灯させる。全員が基本のプログラムを制作することで、基礎的な技能の定着を図ることが目的だ。

 また授業では、作物に近づきすぎたり、スピードが速すぎて動きが安定しなかったりするなど、問題に対してプログラムの改良や修正も行った。例えば、移動スピードが速すぎればそのまま作物にロボットが衝突してしまい、収穫前に傷みが発生してしまう。効率的な農業の自動化を実現するためには、プログラムの細部の調整が不可欠だ。それぞれ調整した数値を発表して動作速度を確認するなど、学びの共有も行った。

 次に、天気予報のクラウドデータを利用して、天候条件に合わせた作業を判断・処理するプログラムを制作した。SPIKE プライムで組み立てたプログラムに日本各地や世界の都市の名前などを入力することで、天気や基本などの気象データをクラウド上から読み込める。この天気予報データに基づき、“雨なら移動をやめる”“それ以外なら収穫作業を行う”というように、ロボットが動作判断を行うプログラムが作成できる。

 授業では清新中学校のある“相模原”をプログラムに登録し、当日の天気の情報をクラウドサーバーの天気予報データから参照してSPIKE プライムを制御した。

 当日は晴れていたため、SPIKE プライムのロボットはスムーズに移動を開始したが、当日技術科の教科指導を行った須藤雄紀教諭から「もともとのプログラムの動作が“移動する”ことを前提にしているので、天候情報を取り込まなくても移動してしまいます。正しいプログラムになっているか、天候条件を変更するなどして検証してください」と指導があり、生徒たちは天候条件などを変更しつつ、収穫作業の自動化プログラムを試行錯誤しながら作成していた。

次回の授業では機械アームを取り付けて、実際に収穫作業や精度を高めるプログラムを開発する予定だという。
試行錯誤しながらミニトマトを収穫できる最適な距離を模索していた。

独自のアイデアでプログラムを発展

 最初のうちは教材に基づいたプログラミングを行っていた生徒たちだったが、そのプログラム手順に慣れた頃には、音声が再生されるようにしたり、ミニトマトを収穫するための距離の精度を上げたり、各々が考える計測・制御システムのプログラムを独自に作り出すといった発展的な学びも、自ら取り組むようになっていた。

 公開授業を終えた須藤教諭は「天気予報のプログラムを組み込む場所が生徒それぞれ異なっており、多様性のある学びが実現できたと思います。今回の天気予報を活用したプログラミングは、レゴ エデュケーションの教材をベースに改良して授業に活用できたためプログラミングを授業に取り入れやすく、また天気予報という社会に結び付いたデータを活用してプログラミングができたことは学びとして大きいです」と語った。

 また当日、公開授業に訪れていた相模原市教育委員会 教育局 学校教育部 教育センター 学習情報班 指導主事の森 匠氏は「相模原市では中学校で『レゴ マインドストーム EV3』、小学校では『Scratch』や『レゴWeDo 2.0』を活用するなどプログラミング教育に力を入れています。今回のSPIKE プライムの授業を見て、SPIKE プライムのアプリがScratchをベースにしていることから、小学校のプログラミング教育からのステップアップ教材としても非常に効果的と感じました。今後、1人1台のタブレット(PC)環境整備も求められる中で、端末整備と同時にソフトウェアの整備も進めていく必要があります。その中で、SPIKE プライムの導入も前向きに検討していきたいですね」と語った。

キーワードから記事を探す