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事例などから考察する中小企業の働き方改革

事例などから考察する中小企業の働き方改革

2020年04月23日更新

中小企業も取り組む働き方改革の最前線

2020年4月から、働き方改革関連法が中小企業にも適用される。昨年の大手企業における施行から1年を経て、あらゆる規模の企業で働き方改革が求められるようになる。厚生労働省では、特設サイトで中小企業に向けた働き方改革の事例や助成金などを案内している。理想的な働き方とはなにか。特設サイトの情報を通して、中小企業へのワーキング革命に関する提案を探っていく。

働き方改革による好循環

 まず中小企業が働き方改革に取り組む意義について考えてみよう。厚生労働省の特設サイトには、次のような好循環が示されている。

「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」

 この好循環は、ほとんどの中小企業の経営者が望む姿と言える。人手不足に悩む中小企業にとって、即戦力になる優秀な中堅から将来性のある若手の獲得まで、人材における課題は多い。これまでにも、福祉の充実や安定した収入など、福利厚生と給与の面で優秀な人材を確保しようと取り組んできた中小企業は多い。

 それに加えてこの4月からは働き方改革関連法の遵守と「魅力ある職場づくり」が求められてくる。その一助にIT商材やクラウドサービスが貢献できるようになれば、中小企業の経営者に喜ばれる働き方改革の支援になる。そこで、具体的にどのような提案が考えられるのか、特設サイトの事例を参考に検討してみよう。

 兵庫県にある従業員約50名の情報処理サービス会社では、社員が自由に勤務時間を決められる完全な全員時給制度を採用した。その日の勤務時間を自分で入力する方式を採用し、出勤と退社の時間も就業中にベッドで横になるのも自由にした。裁量労働制を先取りした勤務体制によって、多くの社員がワークライフバランスを実現している。同社の事業の中心はWeb制作やデータ入力などだが、情報処理サービスならではの柔軟さもあり、完全時給制を可能にしたと言える。

 この事例を参考にすると、完全時給制の採用を検討する中小企業に対しては、クラウド型の勤怠管理システムの提案が考えられる。勤怠管理は企業規模の大小に関わらず必須の業務システムと言える。古くからタイムカードと連動した勤怠管理システムなどが導入されてきたが、この機会にクラウドサービスとスマートフォンなどを組み合わせたソリューションの提案が効果的だ。

 中小企業の働き方改革は、まず労務管理の改革が重要だ。そのためには、物理的な制約のある勤怠管理から変えていくのが効果的となる。もちろん、革新的な勤怠管理システムの導入には、経営トップの意思決定も重要だ。その意識改革にとって、4月からの法改正は中小企業の経営者にも働き方改革の重要さを再認識してもらえる機会となる。

特定業種への提案が効果を発揮

 特設サイトの事例には、保育園の働き方改革も掲載されている。この事例では、保育士が1年未満で離職してしまう問題を解決するために、人の数を増やしている。しかし、予算の限られた施設では、そうそう人は増やせない。そこで提案できるのが、保育園向けのITソリューションになる。

 保育とITというと無縁のように思われるが、実際の保育士の仕事では事務なども多い。事例でも、正規の保育士が抱える業務の負担が課題だったと分析している。実際に、保育士は園児の安全に気を配るだけではなく、体温や体調に関する情報を定期的に記録する。もちろん、事業所なので業務に関する事務作業も発生する。こうした業務は、多くが紙の手作業となっている。

 こうした保育園向けのITソリューションが実際に提供されている。保育園に限らず、少人数で経営している中小企業には、その業種に特化したITソリューションの提案が、働き方改革を促す。これまで、ITに積極的ではなかった中小企業の経営者も、今回の法施行をきっかけに、前向きに検討しなければならない。そこに、タイムリーな提案をもたらすことができれば、ITソリューションと関連するデバイスや機器も納入できる。

 結婚で住居が遠くなった社員のためにテレワークを導入した九州のシステム開発会社の事例も紹介されている。テレワークというと、とかく首都圏での電車通勤が中心に語られがちだが、地方の中小企業にも需要はある。九州の事例では、システム開発会社なので導入の障壁は低かったと思われる。

 しかし、地方の中小企業では、テレワークに関する基本的な知識や情報が不足しているケースが考えられる。仮想デスクトップや仮想プライベートネットワークのような複雑な仕組みではなく、クラウドサービスとタブレットやモバイルPCで実現できる簡易で安全性の高いテレワーク環境を提案できれば、中小企業でも十分に導入を推進できる。

Office 365やG Suiteからはじめる

 厚生労働省の特設サイトの事例を調べてみると、IT商材に結びつくものもあれば、残業カットや雇用延長のようなシンプルな改革のケースもある。そのため、全ての事例が参考にはならないが、中小企業のテレワークという観点で考えると、意外と身近なIT商材がある。それがOffice 365やG Suiteだ。

 普段から使い慣れていると忘れがちだが、これらのクラウドサービスに共通しているポイントは、どこからでも単一の情報を複数の人たちが共有できる利便性にある。文書にしても表にしてもスライドにしても、メールなどで転送することなく、クラウド経由で一つのドキュメントを共有できるようになると、仕事のやり方ががらりと変わる。

 例えば、工事や保守の進捗状況を報告するレポートをOneDrive上でExcelのワークシートとして共有すれば、現場の担当者は訪問先から帰社しないで報告書を更新できる。共有されているワークシートは、リアルタイムに社内でチェックできる。クラウドを使い慣れている人には当たり前のことでも、ITの導入が遅れている中小企業にとっては画期的だ。

 こうしたクラウドサービスの活用法を提案するだけでも、中小企業の働き方改革を支援できるはずだ。

田中 亘(wataru tanaka)
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。

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