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LTE-Mを活用した水道のスマートメーターの実証実験を行う郡山市

LTE-Mを活用した水道のスマートメーターの実証実験を行う郡山市

2020年04月24日更新

LTE-Mを活用して水道検針を自動化
~水道メーターのスマート化を目指す郡山市~

福島県郡山市は、福島県の中央に位置し、人口約33万人を抱える東北の拠点都市だ。郡山市と首都圏を結ぶ東北新幹線や東北自動車道と磐越自動車道が交差する郡山ジャンクションなど、高速交通網の利便性が高いことから「陸の港」と呼ばれている。そこでスタートしたのが水道の利用状況を遠隔から把握できるスマート水道メーター利用の実証実験だ。実証の経緯や概要について郡山市上下水道局に話を聞いた。

スマート水道メーターはコストに課題

 福島県郡山市上下水道局で2020年1月にスタートしたのが、無線通信により水道使用量などを自動で検針できるスマート水道メーターの実証実験だ。低消費電力で遠距離通信を実現するLPWA(Low Power Wide Area)の一つ、LTE-Mを通信回線に採用し、市内10カ所において通信状況や水量データなどの検証を行っている。

 スマート水道メーターとは、主に計測した流量データやメーターが検知したアラーム情報などを、無線によって遠隔送信できる機能を有するものである。従来の水道メーターとは異なり、検針員が巡回する目視検針業務を削減できたり、水道使用量を分単位で計測できたりするなどのメリットがある。しかし、一般的な水道メーターと比較すると高価であることに加え、通信費の負担も必要になることから、今後の普及にはコスト面の課題を解決することが求められる。

 今回の実証実験をスタートした経緯について、郡山市上下水道局のお客様サービス課 課長を務める橋本義澄氏は次のように説明する。「スマート水道メーターによる検針の取り組みは、東京や大阪、愛知など都市圏での先行事例がすでに存在します。しかし、スマートメーター自体の価格帯が高価であったり、仕様が標準化されていなかったりと、ほかの自治体で横展開していくには課題が多いのも現状です。そこで、郡山市内において四つのポイントを検証し、導入に向けた基礎データを収集していくのが今回の実証実験の目的です」

 検証するポイントは①市内での通信品質の検証、②漏水監視サービスの検証、③市民への水量情報の提供、④導入費用の検証の四点。郡山市上下水道局は2017年から、スマート水道メーター普及に向けた調査研究事業「A-Smartプロジェクト」に参画しており、今回の実証実験もA-Smartプロジェクトにおけるスマート水道メーター仕様の標準化の取り組みがきっかけになっていた。

高齢者の見守りの効果も見込む

 もう一つの目的として、高齢化社会への対応がある。橋本氏は、「実は2016年1月~2018年10月まで郡山市福祉部門と日本大学工学部が協力して水道メーターやベッドセンサー、脳血流センサーを活用して24時間体制で高齢者を見守る『高齢者見守りシステム実証実験事業』を実施していました」と振り返る。

 高齢者を24時間見守るための手法の検証は十分にできた。しかし、通信の安定性、電源の持続性に課題があったため、今回は通信方式を変えて対応した。

 今回の実証実験は、郡山市上下水道局と国内大手の水道メーターメーカーであるアズビル金門が共同で実施する。アズビル金門は1904年創業の水道メーターやガスメーターの製造、販売を手がけている老舗企業で、現在水道、ガスのスマートメーターおよび関連システムの提供を行っている。

 実証では、アズビル金門が、通信装置とメーターの接続、データの設定や管理、データ分析などを担当し、郡山市上下水道局が市内10カ所の実証場所の設定やスマートメーターの設置などを担当した。スマート水道メーターから収集したセンサーデータはアズビル金門の「アズビル金門クラウドサービス」に蓄積される。スマート水道メーターは、豊田町、久留米、安原町、安積町、逢瀬町、熱海町、田村町、西田町の一般住宅に8カ所、堤二丁目の集合住宅、行政施設「熱海行政センターほっとあたみ」の合計10カ所に設置された。

市内10カ所のデータをリアルタイム取得

 実証を開始して1カ月が経過した。現段階で出た結果に関して、郡山市上下水道局 お客様サービス課 管理係 主査の高橋賢治氏は次のように説明する。

「市内での通信品質の検証としては、LTE-Mを活用したことでほぼ問題なく通信できていました。市内10カ所のスマートメーター設置場所は、中心部から郊外まで多様な場所を選定しましたが、LTE-Mによる通信であればどの場所の水道メーターの記録も抜けもれなく取得できました。また、データ収集をしていたところ、10カ所のスマートメーターのうち1カ所が漏水していることが判明しました。従来の水道メーターであれば2カ月に1回程度の頻度でしか漏水チェックができませんでしたが、スマートメーターを導入したことで1時間ごとに水量を可視化でき、ほぼリアルタイムでの漏水監視が可能になったことが分かりました」と語る。

 LTE-Mは省電力で幅広いエリアをカバーする無線通信技術のLPWAの中でも、免許が必要な周波数帯域を利用するセルラーLPWAだ。通信速度は上り下りともに最大1Mbps程度と、LPWAの通信規格の中では高速に通信できる。また、端末実装の簡素化と低価格化が実現できるため、前述したようなリアルタイムな水道利用状況の把握を、コストを抑えて行えるようになる。これらの環境が実用化されれば、将来的には一人暮らしの高齢者住宅の見守りなど、水道業務以外の住民サービスでのデータ利活用にも可能性が広がる。

 郡山市上下水道局は、今回の実証実験で取得したデータの市民への提供も進めていく。まずは1カ月単位でスマートメーター設置場所の住民や管理者に対して、プリントアウトした水道利用のデータを配布していく。将来的には、利用者一人一人がWebブラウザーから自宅の水道利用状況が把握できるような仕組みも検討していきたいという。

 高橋氏は「実証実験は今年の1月から9月まで実施する予定ですので、導入費用の検証などは今後の実証を踏まえて9月末までに取りまとめる予定です」と今後の流れを説明する。

 少子高齢化が全国的に進む中、郡山市もまた例外ではない。それに伴い労働人口の減少も進んでおり、今回のスマート水道メーターによるリアルタイム検針が、労働力不足の解消につながる可能性も見込まれている。「未来を見据え、変化を先取りしていくことがこれからのまちづくりには不可欠です。今後もトライ&エラーを繰り返しながら、積極的なデジタル化に取り組んでいきます」と橋本氏は語った。

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