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農薬散布にドローンを活用―酒井農機・オプティム

農薬散布にドローンを活用―酒井農機・オプティム

2020年03月13日更新

活用進むドローンによる農薬散布

農業従事者の高齢化が進む中、農業にドローンを活用する動きが広がっている。野村総合研究所の市場調査を見ても、農業用ドローンの市場は歴史が古く、すでに確立された市場だ。その市場動向とともに、農業用ドローンを活用した農薬散布を事業化した企業の事例を紹介する。

農業

市場調査

 すでに一定の市場が確立されている農業用ドローン。 「農業用ドローンの歴史は古く、現在主流のマルチコプター型(小型回転翼機)が市場に登場する以前から、シングルローター型(エンジンを持つ大型機)を用いた農薬散布が行われていました」と名武氏。

 シングルローター型とマルチコプター型の大きな違いとして、自律飛行の有無がある。シングルローター型のドローンはエンジンを搭載しているため、制御のハードルが高く、自律飛行が難しい。マルチコプター型はボタンを押せば安定して飛行するといった強みがあり、特に高齢者が多い農業分野において、その使いやすさが大きなアドバンテージになっている。

発育状況の把握や害獣駆除にも

 農業ドローンの活用用途は大きく分けて三つある。一つ目は前述した農薬散布で、すでに市場が存在している用途だ。ドローン活用により、作業の低コスト化や、水田以外の果樹園や段々畑などでの活用が期待されている。ハードルとして、飛行安定性の確立や、散布の正確性向上が挙げられる。

 二つ目は発育状況の把握だ。この分野はまだ市場が確立されておらず、実証段階と言える。ドローンの活用による作業の自動化や、分析の精緻化がメリットとしてある。人でも難しい稲の病気を予測するような、産品特化の機能を開発することで、市場拡大の可能性が広がる。

 三つ目は害獣駆除だ。害獣探索が自動化できる点がドローン活用のメリットだが、非GPS環境での自律飛行に課題も残る。

 こうした農業でのドローン活用を、さらに後押ししているのが規制緩和だ。P.58でも述べたように、ドローンの産業利用に向けて規制緩和が進んでいる。

 農業ドローンではすでに農林水産省が「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を2019年7月末付けで廃止している。これに伴い、農林水産省の登録代行機関による機体やオペレーターの代行申請が廃止され、国土交通省による承認に一本化した。

 代わりに無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドラインとして「空中散布ガイドライン」を新設し、農薬使用者の一定の目安とした。申請の手間が緩和されたことで、農薬散布におけるドローンの活用はますます進んでいきそうだ。

導入事例

農薬散布を事業化

 酒井農機商会は、兵庫県丹波市氷上町に位置する耕うん爪や農業機械を地元の農家に販売している企業だ。地域密着型の農耕機具販売を営む同社では、2018年3月ごろからドローンを活用した農薬散布を事業化し「アグリドローンサービス」として提供している。

 酒井農機商会の代表取締役社長を務める酒井克明氏は導入の経緯を次のように語る。「農業従事者の人口が大きく減っていることが背景にあります。特に氷上町のような中山間地帯は跡取りが少なく、作業者も高齢化しています。農業協同組合がラジコンヘリを所持しており、それで農薬散布を行っていましたが手一杯になっていたことや、一定以上の面積でなければ対応ができなかったことなどから、ラジコンヘリよりも小回りかつ小面積で使えるドローンの利用を思いつきました」

 導入したドローンはXAIRCRAFT JAPANが提供する「P20」。農業用に特化したドローンであったことや、日本法人の本社が兵庫県内にあり、導入後のサポートも受けやすいと判断したことが決め手となった。

「操縦に技能の差が出ない自動操縦で農薬散布が行えることもポイントでした。価格は350万円前後と高価ではありますが、高くても安心できるものがよいと判断しました」(酒井氏)

酒井農機商会
酒井克明 氏

ドローンは農業機械の一つ

 ドローンによる農薬散布は2018年度に70ヘクタール、2019年度は130ヘクタール行った。2019年度は、初年度に利用した農業者からの継続依頼や、新規に農薬散布を依頼する組合や農業者があり、売上は拡大傾向にある。

 ドローン運用にあたってはメーカーからのアドバイスも受けたという。P20はRTK(リアルタイムキネマティック)システム搭載で、GPSよりも高精度な位置測位が可能になるが、地上の基準局の位置情報データをもとに測量点のピンを打つため手間がかかる。そこでメーカーから、ピンを打った場所を次年度に把握できるように、背景を含めた写真を撮影して記録するようアドバイスがあった。継続して受注を受けた圃場に関してはその記録を流用し測量の手間を省いているという。今後はさらなる効率化を図るため、自社での基準局設置や、測量用ドローンの導入も検討している。

「ドローン販売も事業化しています。当社が導入しているXAIRCRAFT製のドローンだけでなく、DJIやヤマハの農業用ドローンも取り扱っており、販売・メンテナンスを実施しています。すでにXAIRCRAFT製のP30を販売した実績もあり、2020年度の農薬散布に利用してもらう予定です」と酒井氏。

 ドローンの導入により、事業の幅が拡大している酒井農機商会。「ドローンは農業機械の一つという認識です。農業人口は減少の一途をたどっている中で、当社の本業である農機販売の台数も減少傾向にあります。そうした中で、農家が今後も継続しやすい形で、スマート農業を支援していけたらと考えています」と酒井氏は展望を語った。

P20を活用し農薬散布を行っている様子。自動操縦できるため扱いやすく、新規の農薬散布依頼も増えているという。3メーカーのドローンも自社で取り扱い、農業従事者の選択肢を増やしている。

デジタル化で実現する“稼げる農業”
―オプティムが取り組む先進事例から

歴史の長いドローンによる農薬散布。それをより効率化するべく、オプティムが開発したのが「ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジー」だ。ドローンだけでなくAIやIoTを組み合わせることで実現する“稼げる農業”の未来像を紹介する。

先進事例

 楽しく、かっこよく、稼げる農業――。AI、IoT、ビッグデータプラットフォームのマーケットリーダーのオプティムは、鉄道×IT、医療×ITなど産業とAIやIoTを組み合わせ、第四次産業革命へ向けたサービス開発を進めている。

 そうした同社が長年取り組んでいるのが農業×IT、いわゆるスマート農業の分野だ。例えば特許も取得している「ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジー」では、AIによる画像解析をもとに、不必要な農薬や肥料を散布せずに栽培を行える。ピンポイント農薬散布の場合は、ドローン空撮による画像をもとに、病害虫の発生地点を特定し、その場所にドローンが移動。その場所にピンポイントで農薬を散布することで、農薬の使用量の削減や省力化を実現しつつ、虫害発生や食害被害を大幅に低減するソリューションだ。オプティムのビジネス統括本部 本部長を務める休坂健志氏は「人が農薬を散布する作業時間と比較しても、10分の1の作業時間で散布できます」と語る。

オプティム
休坂健志 氏

減農薬で農作物に付加価値

 これらのテクノロジーを活用し、減農薬で高付加価値が付いた農作物を“スマートアグリフード”と名付け、生産、流通、販売も行っている。生産者を中心とした「スマート農業アライアンス」におけるスマートアグリプロジェクトの取り組みの一つだ。

「スマート農業アライアンスでは、ドローンやAIなどのスマート農業ソリューションの無償提供を行います。また、大豆や米についてはスマート農業ソリューションを通じて生産された作物を全て買い取り、生産者と収益分配を行っています」と休坂氏。収益が上がらないと言われていた農業生産者に新たなビジネスモデルを提案している。

 ピンポイント散布の技術を応用し、土壌に応じたドローンによる播種制御も実現している。ドローンが圃場を撮影し、圃場の場所ごとに異なる土壌状態を解析。ドローンが播種を実施する際に、その場所に応じた強さで播種を行い、圃場全体の種子の植え込みの深さを一定にできるソリューションだ。鳥獣による被害を軽減しつつ、播種作業の労力軽減を実現できる。「ドローンを低い高度で飛行させ、自動で種まきを行います。ドローンのボタンを押せば自動でドローンが種まきをしてくれるので、農業従事者の負担を低減できます。また雑草を検知して、その箇所だけ農薬をまくといった用途にも、ドローンが活用されています」と休坂氏。

 佐賀県をはじめ、福岡や大分、兵庫、石川、神奈川、長野、長崎、宮崎といった自治体と連携した実証実験にも取り組んでいる。「農業はほかの産業と比較して、1年に1回しか生産ができないため、効果検証には最低でも3年かかります。これまで経験と勘の世界でノウハウが残せなかった農業の世界において、デジタル化で、稼げる農業の実現を今後も目指していきます」と休坂氏は語った。

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