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ドローンの活用進む測量分野―鴻池組の事例から

ドローンの活用進む測量分野―鴻池組の事例から

2020年03月12日更新

Special Feature 2
飛翔するドローンビジネス

空の産業革命を実現すると言われているドローン。2022年度に向けて段階的に規制緩和が進む中で、さまざまな産業分野で活用が見込まれている。今回は産業用ドローンにおける現在の市場動向を踏まえつつ、実際にドローンを活用したことで大きな効果を上げている企業の事例を紹介していこう。

点検・監視・測量分野で利用が拡大

産業用ドローンに対する規制緩和が進んでいる。市場も大きく拡大する見込みで、特に点検や監視、測量の分野で活用が広がりそうだ。野村総合研究所の市場予測データと併せて、実際に産業用ドローンを測量に活用している建設会社の事例を見ていこう。

建設

市場調査

 ドローンの運用は現在、空域と運用の双方から規制を受けており、産業用途で使用する場合のほとんどは事前に国土交通大臣に申請し、許可を得る必要がある。

 これらの規制緩和が徐々に進んでいる。内閣官房、経済産業省、国土交通省が発表している「空の産業革命に向けたロードマップ2019」によれば、2022年度ごろには有人地帯での目視外飛行を可能にするレベル4まで利活用レベルを引き上げて行く方針だ。また、農林水産省では「農業用ドローンの普及計画」を2019年3月に打ち出し、2022年度までにドローンの農薬散布面積を100万ヘクタールまで拡大することを掲げている。農業用ドローンの規制緩和についてはP.61で詳述する。

 産業用ドローンの市場動向について、IT市場を展望する書籍「ITナビゲーター」において産業用ドローン市場の執筆を担当している野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 副主任コンサルタントの名武大智氏は「国内の産業用ドローン市場は2019年に468億円。現在その市場の多くが農業で占められています。2024年度には市場全体で1,517億円まで成長すると推測しており、特に点検、監視、測量の市場が拡大する見込みです」と語る。農業分野における産業用ドローンについても次の記事で解説する。

野村総合研究所
名武大智 氏

ドローン測量は市場が確立

 点検・監視では、主に道路や工場、電気通信などの分野での活用が期待されている。ドローンによって点検箇所を特定したり、画像解析などによって点検を自動化したりといった活用が期待されている。

 測量分野では地上測量よりも短納期で地形を測量できる利点から「パイは小さいですが、これから伸びる市場と考えています」と名武氏。市場もすでに立ち上がってきており、今後の市場拡大に向けて、センサーや機体の低コスト化や3次元測量の精緻化が求められている。

 また、実証段階であるものの、災害情報把握や緊急物資輸送などにドローンを利用する動きもある。宅配でもドローンの活用は見込まれており、都市部・過疎地を問わず負担軽減やコストダウンを目的にドローン活用が検討されている。

導入事例

ドローン測量を建設に利用

 野村総合研究所の市場調査において、すでに市場が立ち上がっていると指摘された測量の分野。鴻池組も、自社のビジネスにドローンによる測量を取り入れ、業務効率化を図っている企業の一つだ。

 1871年に大阪で創業した鴻池組は、建築と土木を中心に事業展開する中堅建設業者(ゼネコン)だ。大阪府のサイバーメディアセンターや新大阪阪急ビル、東京都の江東区豊洲シビックセンターや、ケニア共和国のアフリカ理数科・技術教育センター、ナロック給水拡張計画など国内外の幅広い施工実績を持つ。

 そんな同社が手がけたのが東京都のカヌー専用の競技施設「カヌー・スラロームセンター」。カヌー・スラロームの競技場部分を建設する整備工事で、国内初の人工コースとなる。東京オリンピックの競技会場としても使用される予定だ。

 この整備工事で使用されたのがドローンだ。ドローン測量によって、構造物の沈下管理や、仮置き土の土量計測を効率化した。

 同社がドローン活用に取り組み始めたのは2018年。測量会社が使っていたドローンの測量精度を見て、その精度の高さや、短時間で測量して3Dデータを出力できる効率の良さから、自社での導入を決めたという。2016年度から国土交通省が掲げている建設現場でICTを活用する取り組み「i-Construction」を推進していることも、導入を後押しした。

 導入したドローンソリューションは、芝本産業が販売代理店を務める3D Roboticsの「Site Scan」。タブレットで簡単にフライトパターンが設定でき、その後は全自動で空撮できる操作性の高さが導入の決め手となった。

鴻池組
(左)國富和眞 氏
(右)藤原祐一郎 氏
カヌー・スラロームセンターの整備工事現場でドローンを飛ばし、空撮をしている様子。鴻池組で導入しているドローンは現在2台だが、空撮を目的に現場単位でドローンを導入しているケースもあるという。

空撮データで沈下状況を確認

 同社 土木事業総括本部 技術本部 土木技術部 部長の國富和眞氏は「ドローンを導入したことで、労力が非常に削減されました。例えば道路工事を行う際に断面図が必要な場合も、人手だと最短でも1日かかる測量を、ドローンを利用すれば1時間弱程度で完了できます」とその効果を語る。

 実際にドローンを活用した施工例として、國富氏は前述したカヌー・スラロームセンターの整備工事を挙げた。工事では、毎月ドローンを飛ばして空撮を行い、その写真データから3D地形モデルを作成。どの方向からでも3Dモデルを確認できるようにした。

 同社のICT推進課 課長を務める藤原祐一郎氏は「目的は、圧密沈下挙動の検証です。カヌー・スラロームセンターはプレロード盛土による軟弱地盤対策を行いました。しかしプレロード盛土による沈下は設計図の予測と実際の挙動が異なることが多いため、沈下板の測定による沈下管理が必要になります。その圧密沈下の傾向把握に、ドローンによる空撮を利用しました」と語る。圧密沈下挙動の検証には、空撮で得られた点群データを自社開発の点群処理ソフトウェア「PointEditor」で読み込み、三次元設計データとの差分をヒートマップで作成、比較を実施した。検証により、空撮精度以上の沈下が確認できないことから、累積的な沈下は発生していないことが分かった。

仮置き土の土量計測を行った際の空撮画像。カヌー・スラロームセンターの空撮写真を地図と同じように、真上から見たようにする「オルソ画像」に変換し、位置や面積を正確に計測可能にした。
仮置き土量を計測すると3,697.52m3と分かった。

仮置き土を把握し盛土に転用

 真上から空撮した「オルソ画像」を利用して、工事の仮置き土の土量計測も行った。施工基面高さの平均を基準に土量の変化を算出することで、下の土量であれば今後必要になる盛土の土量が、上の土量であれば仮置き土のうち、盛土に転用できる土量が算出できる。整備工事では毎月1回ドローンによる空撮を行い、経過把握に活用した。

 ドローンの飛行は基本的に外注しているという。「現場は管理業務が煩雑で、ドローンの管理まで対応できないのが現状です。しかし操作は直感的に行えるため、一度覚えてしまえば私でも簡単に扱えます」と國富氏は笑う。外注によるドローン飛行はその分コストもかかるため、今後は自社の従業員が扱えるよう教育も行っていきたい考えだ。

ドローンの空撮により3Dモデル化し、構造物の沈下管理を行った。
カヌー・スラロームセンターの完成図。

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