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観光と交通を組み合わせて地域消費の増大を目指すNECのMaaS

観光と交通を組み合わせて地域消費の増大を目指すNECのMaaS

2020年03月11日更新

MaaSで観光地を快適に

地域MaaS(Mobility as a Service)の実証実験をNECが進めている。観光と交通を組み合わせて地域消費の増大を目指す取り組みだ。

交通と観光の分野横断でシステムやデータを連携

 スタート地点と目的地点を入力すると、移動経路付近にあるおすすめの観光スポットを教えてくれる。そんなアプリケーションを使った実証実験をNECが香川県高松市で行った。目的は地域消費の拡大。増加する観光客などに対して、移動における目的と手段を連携させたサービスを提供し(地域MaaS)、訪れた場所における最適な情報を使って従来以上に周遊(消費)してもらおうとする取り組みだ。

「現在の交通手段の検索サービスは、最短の時間や最安の経路、少ない乗り換え回数などの条件で答えを導きます。こうした検索サービスに対して当社は、時間のある観光客に対しては、目的地以外でも寄り道をしてもらえるような提案を行うサービスの実証を行っています」(NEC クロスインダストリーユニット PSネットワーク事業推進本部 久本拓也氏)

 実証の場に高松市が選定されたのは、高松市が従来からスマートシティ化に積極的に取り組んできたからだ。同市では「スマートシティたかまつ」のプロジェクトが推進されていて、NECは産学民官で構成される「スマートシティたかまつ推進協議会」に参画し、高松市のデータ連携基盤(FIWARE)の活用に向けた取り組みを進めている。

 FIWAREは、欧州委員会の官民連携プログラムで開発・実証されたIoTデータ連携プラットフォームだ。NECはFIWAREの開発に日本企業で唯一参画している。このデータ連携基盤なども活用して、交通・観光・防災の都市内システム間連携や他地域への都市外システム間連携による都市のさらなるスマート化を実現させるために高松市で実証事業が行われた。

「高松市は人口が40万人規模の中核都市で、コンパクトシティの先進都市でもあります。ただし、観光消費単価が全国平均より低いという課題があります。そこで、交通と観光の分野横断でシステムやデータを連携させて、持続的なマネタイズが見込めるスマートシティのビジネスモデルの確立を目指すために本実証が実施されました」(NEC PSネットワーク事業推進本部 田代 統氏)

実証実験の成果や課題について話すNEC クロスインダストリーユニット PSネットワーク事業推進本部の久本拓也氏(左)と田代 統氏(右)。

パンが焼けたことを観光者にプッシュ通知

 高松市での実証は、被験者120名を対象に4日間行われた。対象は、観光客、アクティブシニアなど四つのセグメントに分けられた。地域MaaSの鍵となるスマートフォン向けのアプリケーション「おでかけコンシェルジュ」は、乗り換え案内サービスを提供するジョルダンとAPI連携させた。目的地周辺スポットの情報については、ぐるなびや地域の観光協会などに提供してもらった。

 おでかけコンシェルジュには、冒頭で紹介したような機能を提供する「寄り道コンシェルジュ」以外に、店舗の満席・空席情報や地域のイベント情報などを知らせてくれる「プッシュ通知」、「レンタサイクル情報」、鉄道・バス・レンタサイクル・徒歩などを連携させたマルチモーダル検索を実現する「行き方ナビ」が用意された。

「地域の事業者約30社と連携して実証を行いました。パン屋を営む事業者がパンが焼き上がったことをプッシュ通知で知らせるなど、リアルタイムの情報を店舗周辺にいる観光者にダイレクトに伝えることが可能になります」(久本氏)

 これらの機能を実際に実証で使用してもらって、参加者のスマートフォンのログ分析や実証参加前後のアンケート、グループインタビューなどで結果を分析している。

「現在、データの分析途中ですが、例えば地元の人でも知らなかった場所に行けたという声があるなど、おおむね良好な結果が出そうです。実証で収集・分析したデータからビジネスモデルを確立させ、ほかの地域での展開を目指します。観光と交通の情報を使ってさまざまな事業者がサービスを提供できていくような環境が理想ですね」(田代氏)

 同様の実証は富山県富山市でも行われた。富山市の実証の目的は、市民QOLの向上。交通事業者の特性として、富山市は公的セクターが中心であり、一方の高松市は民間セクターが中心と、それぞれで異なることもあり、富山市と高松市の結果の比較検討で、よりよいビジネスモデルの確立が目指されたのだ。

香川県高松市の実証実験で使用されたアプリの画面。周遊先や移動方法の提案などをしてくれる。

火口の様子をVRで体験

 高松市や富山市における地域MaaSのような実証事業だけでなく、NECでは観光地の復興という視点での取り組みも行っている。

 例えば、震災があった熊本県の「阿蘇山上観光復興ビジョン」に基づき、「安全・安心かつ持続可能な街づくり」を行う目的で、阿蘇市、そして阿蘇火山博物館と包括的な協定を締結している。

 特に観光関係での取り組みでは、防災情報と観光情報を連携させて、安心・安全と観光を両立させるようなシステムやサービスの構築が進められている。「火口にカメラを設置して常に監視ができる体制を整備するとともに、火口の様子を撮影したデータを使ってVRを構築し、ヘッドマウントディスプレイを通して火口の状況を体験できる『阿蘇山上火口VR体験サービス』などの提供にも尽力しています」(久本氏)

 自然災害が多い日本においては、観光客の呼び戻しに貢献するこのような取り組みも、今後は重要になっていきそうだ。

NECは、阿蘇山の火口の様子をVRで体験できるサービスの提供支援も行っている。

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