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文部科学省の「GIGAスクール構想」が目指す教育のICT環境整備方針

文部科学省の「GIGAスクール構想」が目指す教育のICT環境整備方針

2020年02月13日更新

Special Feature 2
政府が目指すSociety 5.0時代の学び

児童生徒1人にあたり1台のタブレット(PC)端末の整備―。総務省の「フューチャースクール推進事業」から始まったその取り組みだが、学校現場を見るとなかなか整備が進まないままだった。しかし、その環境に大きな変化が訪れそうだ。政府方針として、1人あたり1台のPC環境整備を進めていく経済対策の内容と、それに伴いスタートした文部科学省の「GIGAスクール構想」事業から、教育ICTの未来を見ていこう。

GIGAスクール構想が導く教育の未来

文部科学省

政府指針で示された教育のICT化

 2019年11月13日、経済財政諮問会議において議長である安倍晋三内閣総理大臣の発言が、大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。

 ――パソコンが1人あたり1台となることが当然だということを、やはり国家意思として明確に示すことが重要。

 先だっては同年10月10日に、衆議院予算委員会において萩生田光一文部科学大臣が「平成の時代はパソコンやタブレットは学校にあったらいいなという教材でしたが、令和の時代はなくてはならない教材として、しっかりICT環境の実現を図っていきたい」と答弁したことも話題となっていた。これらの発言が後押しするように、12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において盛り込まれたのが、「Society 5.0時代を担う人材投資、子育てしやすい生活環境の整備」の項目だ。本項では「学校における高速大容量ネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5年度までに、全学年の児童生徒1人1人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指す」と記載されており、「事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずる」と方針が示された。

文部科学大臣
萩生田光一 氏

 これらの支援事業として、文部科学省が取り組むのが「GIGAスクール構想の実現」(Global and Innovation Gateway for ALL)だ。

 そこで本構想実現に向けて、文部科学省は2020年1月15日、自治体の首長や教育長、指導主事を対象にした「学校ICT活用フォーラム」を開催した。

 フォーラムでは開会挨拶として、萩生田文部科学大臣が登壇。「1人につき1台の端末が整備された環境は、もはや令和の時代における学校の“スタンダード”です。これまでの我が国の150年に及ぶ教育実践の蓄積の上に、最先端のICT教育を取り入れ、これまでの実践とICTとのベストミックスを図っていくことで、これからの学校教育は劇的に変わります」と語り、「学びの環境整備に合わせて統合型校務支援システムやペーパーレス化など、教員の働き方改革も進めていきたい。この令和の大事業を進めていく上では、自治体首長の皆さまのリーダーシップが不可欠です」と呼びかけた。

端末・通信・クラウドをセットで整備

 続く行政説明では、文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長 髙谷浩樹浩樹氏が登壇。GIGAスクール構想の概要、実現に関する補助事業の概要を解説した。

 髙谷浩樹氏が示したのは、日本国内におけるICT活用の実態だ。PISA調査の結果を踏まえ、学校のICT環境整備は急務であると指摘。文部科学省も学校のICT環境整備に係る地方財政措置として「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018年~2022年度)」を策定している。

 しかしながら、学校のICT環境整備の現状をみると整備の遅れが目立つ。何よりも問題とされているのが整備状況の地域差が顕著である点で、この状況を改善しない限りは、地域間による学力格差にもつながりかねない状況と言える。

初等中等教育局
情報教育・外国語教育課長
髙谷浩樹 氏

 髙谷浩樹氏は「安倍総理からは、1人あたり1台の端末環境を国家意思として整備していくべきという話がありました。これは活用の遅れに政府として大きな危機感を覚えていることが背景にあります。その次の週に経済対策が決まり、12月13日には2019年度補正予算案として、GIGAスクール構想に2,318億円を計上しました。経済対策では2023年度までの財源確保と必要な支援を行う旨が記載されているなど、現状の教育の情報化に対する危機感は非常に強いです」と語気を強め「もはやICTをなぜ整備するのか、と言っている場合ではなく、なぜICT整備をしていないのか、自治体の首長や教育長は説明責任が問われる状態になってきています」と活を入れた。

 そこで文部科学省が提案しているのが、端末と通信ネットワーク、クラウドをセットで導入するICT環境整備だ。特に重視しているのが校内LAN整備(通信ネットワーク)で、「例えばNHKが提供する教育向け動画コンテンツがあり、非常に内容が充実しているのですが、これを学校で見ることは難しい。なぜなら通信環境が整備されておらず、大容量の動画や画像コンテンツを学びで活用することができないのです」と氏は通信環境の整備の遅れを指摘する。

 そこでGIGAスクール構想の実現パッケージとして環境整備の標準仕様例示と調達改革を公開した。①学習者用端末の標準仕様の例示、②校内LAN整備の標準仕様の例示、③都道府県レベルでの共同調達を推進の三項目が盛り込まれている。このうち、学習者用端末の標準仕様は、2019年6月25日に発表された「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の考え方に基づいたものだ(図1参照)。

「本来、調達は学校の活用方法に応じて柔軟に行われるべきものというのが前提であり、例示した仕様は簡便な調達に向けたモデル例です。各自治体が各学校での活用を想定して仕様書を作成していただければ」(髙谷氏)

ICT教育を令和のスタンダードへ

 重要とされた校内LAN整備の標準仕様は4項目が挙げられた(図2参照)。髙谷氏は「ルーターやハブ、スイッチのどれか一つが一世代前製品を使っていればそこで遅延が発生してしまいますので、端末からクラウドコンテンツにストレスなく接続できる環境として、一気通貫の環境整備を進めてほしいですね」と語る。そのためには、各自治体ごとのベンダーや販売業者が、端末、クラウド、通信のトータルで提案・サポートする環境も必要だと訴えた。

 それではGIGAスクール構想実現に向けた2019年度補正予算案について見ていこう(下図参照)。

 まず重視されていた校内ネットワーク整備には1,296億円が計上された。希望する全ての小学校、中学校、特別支援学校、高等学校などにおける校内LANの整備に加えて、小学校、中学校、特別支援学校などに対する電源キャビネット整備が対象となる。校内通信ネットワーク整備事業については2月上旬に交付要綱を策定する見込み。

 次に児童1人1台端末の整備には1,022億円が計上された。国公私立の小学校、中学校、特別支援学校などの児童生徒が使用するPC端末整備が対象となる。地方財政措置で進められていた3クラスにつき1クラス分の端末配備は引き続き交付税措置の中で対応しつつ、1人1台端末整備に向けて、補正予算を活用するイメージだ。

 髙谷氏は「今回、民間企業にも導入を徹底的にサポートしてもらうようお願いをしています。現場ではPDCAを回し、使えていなければフォローアップをしていくなど“令和のスタンダード”の教育環境を整えていきたい。まずは授業で文具としてICTが活用できるよう、ハード・ソフトの両側面から教育改革を進めていきます」と語った。

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