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1人1台のPC環境が実現する様々なスタイルの学び

1人1台のPC環境が実現する様々なスタイルの学び

2020年02月14日更新

教育ICT実践リポート
ICT環境整備は大前提!
戸田市が取り組む教育改革

学校ICT活用フォーラムでは、先進校視察として計8校へ自治体の首長や教育長が授業を視察した。本記事では埼玉県戸田市が取り組むICT活用についてを紹介する。

戸田市

各学校が企業と協業

 戸田市が教育改革に伴うICT環境整備に着手し始めたのは3年前のこと。「ICTをマストアイテム化する教育改革」をテーマに、産官学で連携した教育改革に取り組んでいます。

 70近い企業との連携を結んでおり、各企業が持つ教育ICTツールを活用しながら、教室を実証の場として提供して互いにWIN-WINの関係を築くことで、先端技術を活用した学びの効率化や質の向上を実現しています。

 戸田市の小中学校では、ネットワークの増強や高速無線LANの整備、サポート体制の充実といった前提条件をクリアしつつ、学習者用PCをすでに3人に1台程度配備、教師用PCとして1人に2台を配備しています。1台は指導用として全教室に整備、1台は校務用として整備しています。ICT整備の上で重要なのは学習用PCのアクティブ数を数値化することで、学校ごとの采配に完全に任せるのではなく、どれくらい使われているかを把握し、活用を促すことが学校ごとの活用頻度の差を解消していくことにつながります。荒療治ではありますが、使っていない学校から使っている学校に、端末を移動させることも効果的な活用には必要です。

 指導用デジタル教科書や大型モニター、書画カメラも教室に整備しています。また校務支援として、統合型校務支援システムや、高速なインクジェットプリンターを導入することで、働き方改革にも着手しています。

 行政職員と指導主事がタッグを組んで進めるべきはICTの文具化で、ICT活用の促進を進めるには「使い方が分かる」「使って良さを感じる」「管理職のマインドセットを変える」の三つが融合する必要があります。モノがあるのは大前提であり、ICTが学力を上げるわけではありません。ICT活用によって目的を効率よく達成することで、時間短縮や便利さによる効果が期待でき、誰1人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びが実現できます。

戸田市教育委員会
教育長
戸ヶ崎 勤 氏

楽しく学ぶ環境整備を

 スマートフォンやタブレットは、日常の中ですでに当たり前の存在になっています。社会環境の中ですでに活用されているこれらのツールが学校現場では使われていない環境には危機感を覚えます。世界から取り残されないためには、ICT教育の普及は不可欠であると考えています。

 戸田市の戸田第二小学校の授業を視察し、どの子も非常に楽しそうに授業に参加していることが印象的でした。学校は本来楽しく学ぶ場所であったはずで、それが学びの原点であると考えています。その環境を構築する要となっているのが、1人1台の端末環境と言えるでしょう。

 文部科学省では、昨年12月にGIGAスクール推進本部を設置し、関係省庁と自治体と連携しつつ、省を挙げて1人あたり1台端末の環境整備、高速大容量のネットワーク整備を進めていきます。これまでの教育とICT機器のベストミックスを図ることで、教育現場は劇的に変化していきます。個人の学びの“深化”だけでなく、協働的な学びに大きく寄与していくものと感じています。

 もちろんICT教育を実現していく上で高い指導力は必須です。子供たちの笑顔の背景には、戸田市教育委員会の皆さまや教員の皆さまのたゆまぬ努力があったことと思います。今回の経済対策に伴うGIGAスクール構想を絶好の機会として、全国の首長や教育長の皆さまと一丸となり、ICT環境整備に取り組まれていくことを心より期待しています。

 文部科学省としても、日本の子供たちがAIと共存できる社会作りを目指し、環境整備を進めてまいります。

文部科学副大臣
上野通子 氏


1人1台のPCは教具から文具のような存在へ

戸田第二小学校

ICT教育先進区として知られる戸田市の小学校では、どのような教育を行っているのだろうか。実際に授業を取材して驚くのは、タブレットやPCを使うという意識なく、日常的にICT機器を使いこなす子供たちの姿だ。

導入当初は教員からの抵抗も

 戸田市立戸田第二小学校は、児童数1,010名、学級数33学級(通常:29学級、特別支援4学級)、教職員数80名と、戸田市内で最も大きな規模の小学校だ。

 同校のICT環境は学習用PCとして児童3人に1台程度の端末を配備している。Windows端末が62台、Chromebookが240台、iPadが通常学級用に54台、特別支援学級用に14台だ。また教師用PCとして教員1人につき2台の端末、指導用デジタル教科書、大型モニター、書画カメラ、校務支援として統合型校務支援システムや高速プリンター、充電カートの整備、ICT支援員の配備を行っている。戸田市の基本整備方針として、通常学級用にはChromebook、特別支援学級用にはiPadの導入を推奨しているが、戸田第二小学校では各事業者との連携(協業)の中で、iPadの貸与を受けており、市内の他の小学校と比較してiPadの導入台数が多いという。

 戸田第二小学校 校長を務める小高美惠子氏は、導入当時について「今でこそ授業になくてはならないツールになっていますが、導入当時は使いたくないと抵抗感を示す教員も少なくありませんでした。実際にICTスキルのある教員から使っていき、良さを実感することで全ての授業での活用ができるよう浸透させていきました」と振り返る。

教科書の単元に即してICTを活用

 戸田第二小学校の目指す学びとして「20年後の社会で活躍できる子の育成」「変化に対応できる人材の育成」がある。また、創造性を育むことをテーマに、学びを進めているという。

「始めは教材の拡大提示から始まったICTの利活用は、いまでは児童の思考共有や思考整理、協働制作は発表・プレゼンテーションなどのツールへと変化しており、教具から文房具のような存在に移ってきています。学習履歴評価や遠隔授業システムの活用も進んでおり、今後は反転授業の導入など、文房具からさらに可能性が広がっていくでしょう」(小高氏)

 実際に戸田第二小学校におけるICT活用実践の授業も取材した。小高氏は「日々当たり前にICT活用を進めており、今回公開する授業の内容も教科書の単元に沿ったものです」と話す。

 それぞれの授業内容を見ていこう。1年2組の国語では「これは なんでしょう」という単元のもと、iPadと授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を活用し、クイズ大会に向けた発表用カードを決めるという授業を行った。ロイロノート・スクールのシンキングツールでクラゲチャートを作成し、クイズのヒントカードの取捨選択を行って、クイズ大会に向けた発表用カードを決定した。

 5年1組の算数の授業では「図形の角」の単元でWindows PCとタブレット学習ソフト「ミライシード」を活用して、学級全体での思考共有を行った。四角形の内角の和を既習の知識をもとに、多様な考え方を使って解法を導き、それをミライシードで共有した。またミライシード内のEvitを使い授業の振り返りを実施。資質・能力をデジタルルーブリックで評価した。

 5年2組の総合的な学習の時間では、「戸田市活性化プロジェクト」をテーマに企画書を作成した。ChromebookやWindows PCとロイロノート・スクールを活用し、友達同士で批評し合いながら企画書の制作を進めた。2in1の利点を生かし、多様なスタイルで端末を活用していた。また、遠隔会議システム「Zoom」を活用し、地域の専門家からフィードバックをもらうことで、企画書の内容を深めた。

 6年3組の図工の授業では「おどる光 遊ぶかげ」の単元でプログラミング学習と組み合わせた学びを行った。iPadとアプリ対応のロボットボール「Sphero BOLT」を活用し、自分の思いや考えをアプリ「Sphero Edu」でプログラミングして表現した。従来の授業では、懐中電灯をはじめとしたさまざまな光源を使用しながら、色セロハン、ペットボトルなどを活用して光と影を用いた表現の創造を行う単元だったが、プログラミング教育が取り入れられたことで、もう一歩踏み込んだ教科横断的な学びが実現できたと言えるだろう。

3 OSを利用シーンに合わせて使い分け

 戸田市では3年前からICT教育整備に力を入れており、2年前からChromebookやiPadを導入している。

 Chromebookは通常学級で、iPadは特別支援学級で利用する使い分けだ。しかし、iPadの操作性やクリエイティビティの高さから、戸田第二小学校のように通常学級の授業でiPadを利用するケースも多いという。Windows PCは既存のPC教室設備の延長のような存在だというが、プログラミング教育を行う上でWindowsやiPadOSにしか対応していない教材も存在するため、適宜使い分けを行っているという。

 今後の学習端末のメインはChromebookにしていきたいと戸田市教育委員会の教育政策室 主幹 兼 指導主事の布施川裕貴氏は語った。

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