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広がるサイネージ活用をシャープ、NEC、日立ケーイーシステムズが解説

広がるサイネージ活用をシャープ、NEC、日立ケーイーシステムズが解説

2020年01月16日更新

インタラクティブな4Kサイネージが“おもてなし”

4K

シャープ

デジタルサイネージの高解像度化が進んでいる。4Kディスプレイの普及に取り組むシャープに、高解像度デジタルサイネージのメリットと市場可能性を聞いた。

 ビジュアルソリューション事業において、デジタルサイネージの提案を進めるシャープでは、豊富なサイズバリエーションから選べるベーシック価格帯の4Kディスプレイ「PN-HWシリーズ」をいち早く市場に投入した。シャープの荻島 潔氏は「従来、ベーシックモデルはフルHD解像度のインフォメーションディスプレイ(デジタルサイネージ)が主流でした。しかし4Kの市場は今後さらに拡大すると予測されており、シャープでもその需要に対応するべく、既存のハイエンドモデルに加えて導入しやすい価格帯のサイネージをラインアップしました」と語る。

 シャープが取り扱うデジタルサイネージは大きく分けて「インフォメーションディスプレイ」と「インタラクティブホワイトボード」の二つに分けられる。インタラクティブホワイトボードは電子黒板にも活用されるBIG PADシリーズでタッチ操作に対応している。

 シャープの今井綾子氏は「4KスタンダードモデルBIG PADは、タッチパネルのインタラクティブ性を生かしてデジタルサイネージの活用効果を高めます」と語る。

BIG PAD
インタラクティブコンテンツ制作ソフトウェア「ゆう子でタッチ」を活用し、市役所のフロアマップを作成。多言語表示に対応し、目的の窓口を選択すると導線も表示してくれる。

(右)
シャープ
ビジュアルソリューション事業部 部長
荻島 潔 氏
「BIG PADは縦置き、斜め置き、平置きに対応するため、車椅子対応筐体を利用してバリアフリーな施設案内表示が可能になります」

(左)
シャープ
ビジュアルソリューション事業部 課長
今井綾子 氏
「ランドセルをオーダーメイドできる店舗では、家族で相談しながら完成品のイメージを共有するためにBIG PADを活用しています」

地図を高精細に表示する4K

 特に4K解像度のデジタルサイネージが生きるのが、フロアや地図などの案内表示だ。新宿西口広場では、60インチのインフォメーションディスプレイを12台つなぎ合わせた約227インチ相当の大型サイネージや、4K対応の70インチ/32インチのタッチ対応ディスプレイを活用し、高精細な4K表示で周辺地域の地図案内を行っている。「タッチ対応のサイネージは操作ログが取得できる点もメリットです。新宿西口広場に導入されているサイネージは7言語に対応していますが、中国語での検索が3割と非常に多い結果でした。また日本語での検索は4割以下と日本人の利用は多くないことも分かります」と萩島氏。

 フルHD解像度のBIG PADの導入事例になるが、下関港国際ターミナルでは、インタラクティブコンテンツ制作ソフトウェア「ゆう子でタッチ」を活用して4カ国語切り替えが可能な周辺施設の案内表示を作成し、60インチのBIG PADに表示することで訪日外国人に対する施設案内を実現している。フルHDと比較して、4Kのデジタルサイネージは精細な地図の表示が可能になるため、今後は案内表示コンテンツの4K需要が増加していきそうだ。

 また、さらなる高解像度への動向として、今井氏は8Kに言及した。「博物館や美術館への導入が進みつつあります。肉眼では見えない絵画の細かい描き込みも8Kであれば拡大して確認でき、ユーザー体験を向上できます」

 高解像度化が進むことで、導入先も多様化しているデジタルサイネージ。シャープはディスプレイを含めたソリューションの充実を図ることで、ビジネスの拡大を図る。

カメラと組み合わせたログ分析で効果測定

ターゲット広告

NEC

すでにデジタルサイネージを導入しているケースの多い小売店舗。しかし、その活用効果が可視化できないことに不満を抱いているユーザーも少なからず存在する。そこで必要となるのが、データによる可視化だ。

 カメラとデジタルサイネージを組み合わせ、デジタルサイネージをより効果的に活用する動きがある。NECが提供する「ターゲット広告サイネージ」「Welcomeサイネージ」もその一つだ。ともに必要なソフトウェアを付加したアプライアンスサーバーに、ソフトウェアライセンス、連携モジュール、OPSコントローラー、ディスプレイをセットにした「サイネージ導入セット」として提案されている。

 ターゲット広告サイネージはカメラで捉えた人物の年齢や性別を推定し、その人物に最適な広告コンテンツをタイムリーに切り替えて表示する。NECの服部陽次氏は「年齢性別推定機能は当社の『FieldAnalyst』を利用しています。日本人の顔は、海外の年齢性別推定製品を使うと振れ幅が大きくなりがちですが、国産の本技術であれば性別や年齢の推定を高い精度で実現可能です」と語る。

ターゲット広告サイネージ
カメラで捉えた人物の年齢や性別を推定して、そのターゲット層に最適な広告コンテンツを表示する右の画像では、30代男性と推定された顧客に向けて、年齢層に合致したアパレル店舗の広告を表示している。

(左)
NEC
プラットフォームソリューション事業部 マネージャー
米澤志郎 氏
「店舗のデータを集めてコンサル会社などと連携することで、より複合的なサービス提案も検討しています」

(右)
NEC
プラットフォームソリューション事業部 主任
服部陽次 氏
「同じ店舗でも、昼時や夕方で客層は変化します。最適なコンテンツにリアルタイムに入れ替えることで効果的なマーケティングを実現できます」

 Welcomeサイネージでは、あらかじめ来客者として登録されていた人物の顔をカメラで捉えると顔認証を行い、その対象者に応じてデジタルサイネージにコンテンツを表示するシステムだ。「特別な顧客」や「おもてなし」を意識する受付対応を実現できる。

 NECの米澤志郎氏は「ターゲット広告サイネージではログ解析も提供します。デジタルサイネージの視聴者の男女比率やコンテンツに応じた視聴者推移などを可視化して、デジタルサイネージの効果を測定できます」と語る。ターゲット広告サイネージはすでに一部コンビニ店舗などに導入されている。

Welcomeサイネージ
来客者として登録されていた人物の顔をカメラで認識し、その対象者に応じたメッセージをサイネージに表示する。オフィスやホテルフロントなどで有効に活用できる。

(左)
NEC
プラットフォームソリューション事業部
桂 大喜 氏
「ターゲット広告サイネージは金融機関からの引き合いが増えています。年齢層ごとに適する商材が異なるため、効果的な訴求につなげられるようです」

(右)
NEC
プラットフォームソリューション事業部 シニアエキスパート
後藤文子 氏
「既存のデジタルサイネージに対して+αの提案として、Welcomeサイネージやターゲット広告サイネージは有効です」

ロケーション価値を可視化する

 デジタルサイネージの視聴情報をもとに、その設置場所の価値を見える化できる点にもメリットがある。NECの桂 大喜氏は「例えば百貨店のテナントなど、場所に応じてどの層の顧客が訪れやすいかをログ情報によって可視化することで、出店を検討している店舗にロケーション価値を提示できます」と話す。

 顧客分析はECサイトにおいて盛んに行われているが、小売店ではPOSデータの収集程度にとどまっており、「来店したが商品を買わなかった顧客」「一度手に取ったが購入に至らなかった商品」などは把握できずにいた。デジタルサイネージとカメラを組み合わせることで、実店舗においても顧客層の分析が可能になる。

「東京五輪後もサイネージ市場は拡大を続けます。商業施設はもちろん、最近では企業の導入も増加傾向にあります。Welcomeサイネージはそうした企業のエントランスへの提案が可能だと考えており、ハードウェアからソリューションまで一気通貫で提案できるNECの強みを活かして提案を進めていきたいですね」とNECの後藤文子氏は語った。

Lアラートを受信して災害情報を共有

災害対策

日立ケーイーシステムズ

日立ケーイーシステムズは、交通機関や金融機関、ホテルや商業施設など、幅広い場所のデジタルサイネージにコンテンツを配信する配信サービス「MediaSpace」を提供している。

 MediaSpaceは特に電車の車内広告や鉄道駅など、交通機関に設置されたデジタルサイネージへのコンテンツ配信インフラとして多く採用されている。

 同社の上野 孝氏は「MediaSpaceは基盤サービス、配信代行サービス、コンテンツ提供サービスの三つから構成されているクラウド型の配信サービスです。導入先のユーザーのニーズに合わせて各サービスを自由に選択可能です」と語る。コンテンツを表示するデジタルサイネージはデバイスを選ばず利用可能だ。

 特長的なのが、コンテンツ提供サービスに「災害情報(Lアラート)」が含まれている点だ。Lアラートは総務省が普及に取り組む情報基盤で、災害発生時に地域住民に対して必要な情報を迅速かつ効率的に伝達することを目的としたシステムだ。日立ケーイーシステムズは、Lアラートの情報を受信して配信する「情報伝達者」に登録されており、デジタルサイネージを活用した災害情報を標準サービスとして提供している。東日本大震災をきっかけに、デジタルサイネージを活用した避難勧告の表示情報提供の仕組みが提供できないかと考え、2015年に情報伝達者の認可を取得したのだという。

MediaSpace
デジタルサイネージ総合コンテンツ配信サービス。ソニーの法人向けブラビア対応の「MediaSpace for ブラビア」も提供しており(左画像)、STB不要で省スペースにサイネージ導入も可能だ。

日立ケーイーシステムズ
デジタルサイネージ部 部長
上野 孝 氏

「非常時にデジタルサイネージを活用できるよう、防災訓練などで避難誘導を表示させることも重要です。MediaSpaceではテストモードを利用して災害発生時と同様の表示が可能です」

災害時も稼働できる仕組み作り

「UPSをデジタルサイネージに接続し、災害時でも継続的な情報発信や、避難してきた地域住民への電源供給などに活用できる仕組みも提案しています。ただ、完全に停電してしまうとLアラートの受信ができなくなるため、ラジオの中に音すかしの情報を組み込んでその情報をもとに情報の切り替えを行うような仕組み作りも現在検討しています」と上野氏。避難場所として指定されている学校現場などへの導入を見込んでいる。

 上野氏は「東京五輪開催に伴い、訪日外国人の増加が予想されています。その中で被災の可能性がないとは言い切れません。訪日外国人に対する災害情報提供として、自治体などから発信された情報を自動で翻訳して表示する機能などの拡張も検討しています」と語る。デジタルサイネージは広告掲示のためのツールにとどまらず、社会インフラとしての価値を生み出しつつある。

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