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飯能市立図書館が進めるLINEチャットボットによる蔵書検索サービス

飯能市立図書館が進めるLINEチャットボットによる蔵書検索サービス

2019年12月24日更新

LINEを使って図書館の蔵書検索に挑戦
~飯能市立図書館で「図書チャットボット」の実証を実施~

今夏、埼玉県飯能市立図書館で、在庫がある本の検索・予約をSNSのLINEでできる市民向けの図書サービス「図書チャットボット」の実証実験が行われた。図書館の利用が少ない若者世代に対して、LINEを使ったサービスはどの程度効果があったのか。実験の結果や今後の課題について、飯能市立図書館の前田氏に話を聞いた。
Text by 古俣慎吾 Shingo Komata

書籍情報を瞬時に入手

 飯能市は埼玉県南西部に位置する人口約8万人のまち。埼玉県内では3番目となる面積を有しており、市の約75%を森林が占める。2004年には環境省のエコツーリズム推進モデル地区に指定された人と自然が共生するまちだ。2014年に設立された飯能市立図書館では、市民が快適に読書・調査研究ができる「課題解決型図書館」を目指すとともに、ITなどの最新技術を活用した図書館づくりに取り組んできた。

 飯能市立図書館のシステム担当の前田真樹氏は、これまでの取り組みについて「6年前から富士通マーケティングと連携して、新しいことに挑戦しようとさまざまな図書館サービスの在り方を模索してきました」と振り返る。

 同館が設立当初から取り組み続けてきたのは、「図書館に行けば、本に加えてさまざまな情報が手に入る」仕組みづくりだ。市民のニーズや新しいサービスの在り方を探りながら、富士通マーケティングのクラウド型公共図書館向け業務サービス「WebiLis」と、カーリルのスマートフォン情報探索支援システム「カーリルタッチ」を組み合わせ、課題解決型図書館システムを構築してきた。カーリルタッチによって、書棚に貼付されたICタグにスマートフォンをかざして簡単に本の情報を探索でき、WebiLisのクラウド型管理システムによって貸出要望があった本の貸し出しや返却処理にかかる時間を短縮ができるシステムだ。

 飯能市立図書館のホームページを開くと、トップにサービスのプラットフォーム「はんとこサーチ」のコーナーがある。このWebページに、カーリルタッチによって実現したサービスの一覧が載っている。以下がそのサービス概要だ。

■カーリルタッチによる図書館サービス

・蔵書検索……書棚に貼付された「タッチタグ(著者や書籍名、キーワードなどが記載されたICタグ)」にスマートフォンなどをかざすだけで、書籍や関連情報などへアクセス

・書籍の検索、予約……書棚に取り付けられたタッチタグからその書棚に置かれた本の情報や現在の貸し出し状況が入手可能。貸し出し中の場合は本の予約もできる

・図書館イベントの開催……タッチタグにスマートフォンをかざしてスタンプや情報を蓄積できるコレクション機能により、オリエンテーリングやスタンプラリーなどのイベントを簡単に検索。図書館の活性化と利用者向けサービスの充実化を支援

・文化新聞閲覧システム……飯能市で発行されている文化新聞のバックナンバーを電子書籍形式で閲覧可能

・インターネット上のさまざまな関連データベースと連携……スマートフォンをタッチタグにかざすとカーリルタッチポータル画面が開き、埼玉県立図書館や国立国会図書館が提供する各種データベースやWikipediaなどインターネット上の情報源にアクセスできる。

LINE検索サービスで図書館を親しみやすく

 こうした市民サービスが可能となっているのは、WebiLisとカーリルタッチを連携させているからだ。

 飯能市立図書館では、カーリルタッチや館内の検索機以外にも、利用者が自宅や外出先から上記のはんとこサーチなどを介して24時間365日いつでも本の検索・予約などができる体制を整えている。

「検索から予約、借り出しをする利用者のほかに、図書館には本を読んだり学習したりする方もいらっしゃいます。現在の当館の登録者は約6万5,000人です。そのうち、昨年1年間で貸し出しカードなどを使って利用した人は1万2,000人です。当館としては、より多くの方々に『飯能の図書館はさまざまな用途で利用しやすい』と感じてもらいたいのです。今回の図書チャットボットの実証実験は、そうした思いの延長線上にある取り組みなのです」(前田氏)

 図書チャットボットの実証実験は、2019年7月23日~8月31日の間で行われた。図書館利用者が、富士通マーケティングによって開発されたLINE公式アカウント図書チャットボットの友だち登録をすることで、図書館の本や資料の検索・おすすめの本の紹介や、利用者の目的や気分に合わせた本の情報がスマートフォンから受け取れる。また、図書館各種事業、利用案内など図書館に関連する各種サービスも利用できるというシステムだ。

 同館には、飯能市立図書館の新しい活用方法を探るとともに、あまり図書館を利用しない若年層などに図書館への親近感を与え、利用を促進するという目的があった。一方、WebiLisを提供している富士通マーケティングでは、図書館へのIT支援として時代に合わせたサービスや環境を提供する図書チャットボットの開発を進めている。こうして、両者の取り組みの方向性が一致したことを背景に、図書チャットボットの実証実験が行われた。

「キーポイントはLINEを使うこと、その一点です。図書館での蔵書検索などは、PCやタブレットなど図書館内に置いている端末から行うのが一般的です。しかし、今の若い方はPCを使わなくてもスマートフォンで何でも片付けてしまっています。そのような方々にもスマートフォンから図書チャットボットを利用していただき、図書館に親しみを持っていただきたいのです。若年層が本実証実験に参加しやすいように、実証期間は学生の夏休み期間に設定しました」(前田氏)

 実証の内容は以下の通り。利用者に、LINEがインストールされたスマートフォンと図書利用券を持って飯能市立図書館に訪れてもらう。そして、同館1階の「案内・相談カウンター」に置かれている「友だち登録」のためのQRコードをスマートフォンで読み取ってもらう。それによって、利用者は図書館資料の検索から、おすすめの本や利用者の目的や気分に合わせた本の情報をスマートフォンで受け取れるようになる。

本の貸出予約機能も検討

 本実証実験は、特定の新しいサービスにつなげるための実証実験ではなかったため、大々的なPRはせずに館内のポスターやチラシ、同館のWebサイトにQRコードなどを掲載して告知が行なわれた。

「カウンターでの呼びかけや、チラシの手渡しなど直接的なPRをしなかったので、最初の1週間の利用者は8人程度でした。当館の活動のお手伝いをしているボランティアの友の会の方々に積極的に利用していただいて、最終的には76人の登録者が獲得できました。本実証実験は、登録者数を集めたり、新しいサービスを提供したりすることが目的でありません。それよりも、LINEによって本を探すときの少しの手間を減らすことで利用者にどのような反応が見られるかを試す実験として行いました」(前田氏)

 今回の実証実験では、本の検索は簡単にできるが、予約ができる機能はフォローしていない。また、本が見つからない場合、館内に在庫がないのか、在庫はあるが貸し出し済みで不可なのかなどの、貸し出し不可の理由も表示されないという。そうした課題を改良していくことでサービスの充実を目指すと前田氏は語った。

(左) 図書チャットボットのホーム画面。 (中央) 検索ワードをLINEの入力部分に打ち込むことで借りたい本を検索できる。 (右) 本の名前を検索すると、蔵書数や貸し出し可能数、予約件数を確認できる。

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