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北海道釧路市で実践するkintoneを活用した校務支援

北海道釧路市で実践するkintoneを活用した校務支援

2019年12月20日更新

校務支援ツールをkintoneで開発し
教員の長時間労働の是正を実現する

働き方改革への取り組みが求められているのは、企業ばかりではない。教育現場も長時間労働の是正が求められており、特に負担の大きい校務の効率化が急務とされている。北海道釧路市では、サイボウズのkintoneを活用した校務効率化に取り組んでいる。パブリッククラウドであり、ノンプログラミングのアプリ開発ツールでもあるkintoneを活用するメリットを、サイボウズに聞いた。

求められる教員の校務効率化

 2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されている。教育現場も教員の働き方改革を進めるため「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(略称:給特法)の一部を改正する法律案が2019年10月18日に閣議決定されるなど、長時間労働の是正が急務だ。

 しかし、学校指導や生徒指導、特別支援教育などの個別対応が求められ、2020年には「英語教育」や「プログラミング教育」が必修化されるなど、現場の教員の負担はますます増大している。教員の長時間労働を是正し、本来必要な授業準備や生徒指導などにリソースを割り当てるためには、教員の校務効率化が必要だ。

 その校務効率化を実現するためには、教育現場におけるICT環境整備が求められる。総務省・文部科学省・経済産業省の3省が連携してパブリッククラウドを含むクラウドから環境整備の検討を始める「クラウド・バイ・デフォルト」は教育現場においても前提となっており、利便性の高いクラウドサービスを選択することが校務の効率化実現につながる。

 サイボウズが提供する業務改善プラットフォーム「kintone」は、ノンプログラミングで業務アプリケーションを開発できるクラウドサービスだ。部署やITスキルに関わらず、どんな人でも使い始めることができるkintoneは、情報システム部門よりも経理や営業部門などの現場主導で導入され、活用されるケースが多い。そのkintoneを活用した校務支援システムの実証実験を、北海道釧路市の学校地域協働センターラポールくしろとサイボウズが連携して実施している。

 サイボウズには、社会課題を解決するための実証実験を行う社長室が設置されており、それぞれの関心事をもとに実証実験のプロジェクトを主導している。社長室長を務める中村龍太氏はプログラミング教育に関心があったことから、教育現場に対してkintoneを活用したプログラミング教育の実証実験を実施しており、プログラミング教育の普及啓蒙や政策提言に取り組む「みんなのコード」と共同で、kintoneを活用したプログラミング教育指導案も提供していた。そうした活動の中で、教育現場の教員から「kintoneを職員室で利用したら便利ではないか」という声が上がったという。

釧路市立鳥取西小学校では総合的な学習の時間におけるプログラミング教育でkintoneが活用された。
釧路市の地域学習のため、アンケートアプリをkintone上で開発したという。

学校ごとにアプリを開発

 中村氏は「そこでスタートしたのが、今回の実証実験です。ラポールくしろでは、以前からkintoneを導入しており、他社で働きながら運営に参画する理事メンバーの業務において、文書管理やイベント管理、その他意志決定におけるコミュニケーションなどに活用されていました」と語る。ラポールくしろは学校と地域を結ぶコーディネーターとして、キャリア教育やプログラミング教育推進における出前授業や職場体験などを推進しており、教育現場のICT化にも力を入れている。また、理事の一人に釧路市立鳥取西中学校の校長を務める幸村 仁氏が所属しており、実際の学校現場から校務環境改善の必要性が指摘されたことも背景にあった。そこで釧路管内の小中学校でkintone活用を目的に、今回の実証実験が開始された。

「実証は2019年4月からスタートしました。最初は釧路市立鳥取西小学校、釧路市立鳥取西中学校、弟子屈町立川湯小学校、弟子屈町立川湯中学校の4校から、それぞれ責任者の先生を指定してもらい、その先生に対してkintoneの使い方をレクチャーして学校ごとに校務支援システムを構築してもらいました」と中村氏は振り返る。その後釧路市立阿寒湖小学校も実証校として指定され、現在では合計5校でkintoneが活用されている。

 各学校では1~2人の教員が中心となってkintoneで校務支援システムの開発を進めている。kintoneのポータル画面には、学年別やプロジェクト別などでチャットのようにコミュニケーションが取れる「スペース」と、掲示板のような教員連絡や、出欠連絡、職員名簿、行事カレンダーなどの「アプリ」が表示される。

 中村氏は「8月1日には釧路市教育委員会、弟子屈町教育委員会、教職員への中間報告会を行いました。実際に利用した教員からは、これまで黒板によるメモや伝言による情報伝達が主であった環境から、パブリッククラウドのkintoneに移行したことで、外出先などから情報が確認できるフレキシブルさが高く評価されました」と効果を語る。

Kintoneで開発した画面。上が釧路市立鳥取西小学校のポータル画面、下が釧路市立鳥取西中学校で修学旅行の情報を通知している画面だ。学校ごとに開発しているため、同じ校務支援システムでも細部が異なる。

プログラミング教材としても活用

 実際に校務に利用するアプリも、現場の教員がスムーズに開発して運用しているほか、トラブルが発生しても多くの場合は教員自身が解決できているという。「パブリッククラウドですので、現場の教員が対応できない開発やトラブルもラポールくしろがリモートで対応できます。そのため、学校現場ではストレスを感じないスムーズな運用が実現できています」と中村氏。

 また、kintoneを活用したプログラミング教育にも取り組んでいる。釧路市立鳥取西中学校では「釧路の良さを知ろう」をテーマにした地域学習を行う際に、kintoneでアンケートアプリを作成し、その回答をもとにデータ分析を行った。「先生方は日常的にkintoneを使っていることで、当社が用意した指導案などを使わなくてもスムーズに授業にkintoneを組み込んでプログラミング教育を実践していました」と中村氏は語る。

 釧路市におけるkintone活用の実証実験は1年を予定しており、2020年3月に成果報告を行う予定だ。しかし、kintoneを今後も教育現場で活用したいニーズがあれば延長も検討している。「現在は5校での利用ですが、将来的には釧路管内の全小中学校で利用できる環境にしていきたいですね。先生方は釧路管内で異動しますので、どの学校に異動してもkintoneが使える環境にすることでスムーズな業務引継が可能になります。また、釧路以外でも実証実験をする環境を広げていきたいと考えており、学校現場の校務課題をkintoneで解決できる環境を整えていきます」と中村氏は展望を語った。

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