
プレサービスやパートナーとの取り組みから見る5Gの可能性―NTTドコモ
5Gプレサービススタート!
エンタメから地方創生まで広がる5Gの可能性
2019年9月20日から「5Gプレサービス」をスタートさせたNTTドコモ。5Gプレサービスにおける取り組みと、パートナー企業の5G活用について話を聞いた。
マルチアングルでの試合観戦に5Gを活用
5Gの商用サービスが始まる2020年春より一足早く、通信キャリア各社は「5Gプレサービス」をスタートさせている。5Gとして割り当てられた周波数および商用装置を用いて、ビジネス創出を本格的にスタートすることに加えて、5G商用サービスと同環境をエンドユーザーに体験してもらうなど、商用サービスにつながる実質的な5Gのスタートとなる。NTTドコモ(以下、ドコモ)は9月20日から「5G OPEN」をキーワードとして掲げ、5Gプレサービスをスタートしている。
5Gプレサービスをスタートした同日に、ドコモが実施したのが「ラグビーワールドカップ2019日本大会」(以下、ラグビーW杯)におけるスタジアムおよびライブビューイング会場での5Gの活用だ。ラグビーW杯が開催される全国8会場のスタジアムおよびドコモが主催するライブビューイング会場において、試合を多視点で同時視聴できる「マルチアングル視聴」の環境を用意するとともに、遠隔地から試合を大画面で観戦できる「ライブビューイング」環境を提供するなど、新たな観戦スタイルを5Gプレサービスの一環として提供した。
ドコモの浅井真生氏は「ベルサール汐留に、一般のお客さまが5Gサービスを体験できるライブビューイング会場を設けました。複数の高精細映像や音声などの情報を5Gで伝送し、スタジアム外においても迫力のある試合観戦を楽しめる環境を構築しました。また、ライブビューイングで試合観戦をしながら、当社が用意した5G端末で試合を多視点でリアルタイムに視聴できる取り組みも行いました」と語る。
(左)NTTドコモ
スマートライフ推進部 スポーツ&ライブビジネス推進室 パートナー協創・パートナー協創担当課長
浅井真生 氏
(右)NTTドコモ
5G・IoTソリューション推進室 営業統括担当課長
加藤宏之 氏
リアルタイムな映像投映で観光客誘致
マルチアングル視聴が可能な5G端末は、LGエレクトロニクス製の2画面スマートフォンで、下のUX画面に試合の様子を多視点で映し、そのうち一つを選択すると上の画面に大きく試合の様子が映し出される仕組みになっている。「より多く映像情報を伝えるためには5Gが効果的でした」と浅井氏。この2画面端末はラグビーW杯の8会場のスタジアムにおいても貸し出され、スタジアムで観戦しながら試合を多視点で見られる環境を提供したという。
「映像は5Gによる伝送で遅延が少なく、ほぼリアルタイムで観客に楽しんでもらうことができました。一方課題も見つかっており、混雑した環境でどうすれば快適に使えるかを検証するノウハウを蓄積できたと思います」と浅井氏は振り返る。
またラグビーW杯では、キヤノンと連携して報道写真用のカメラを報道関係者に貸し出した。このカメラは5Gに接続されており、報道関係者が撮影した写真を、SDカードからPCに移動させるような手間なく、そのまま報道各社のサーバーにアップロードできる環境を提供した。
5Gプレサービス開始に合わせ、金沢市とJR西日本、ドコモが「5Gを活用した地域資源共創事業」を締結し、5Gなどの先端技術を用いて、歴史・文化都市金沢の地域資源作りに取り組む共同事業をスタートしている。取り組みの一環として、9月20日に金沢駅において、5Gプロジェクションアート「金沢 5G gate“Mimassi”」を開催した。金沢工業大学協力のもと、5Gエリアとなる金沢工業大学白山麓キャンパスにおいてダンスパフォーマンスを撮影し、その様子を5Gで伝送して、同じく5Gエリアとなる金沢駅の鼓門にプロジェクションマッピングで映像を投映することで、遠隔地とリアルタイムでつながるエンターテインメントの取り組みを実施したという。
同社の加藤宏之氏は「離れたところの映像をリアルタイムに投映することで、観光の目玉を訪れた観光客に知ってもらうことが可能になります。こうした取り組みは、ほかの自治体でも可能ですので、横展開をしていけるよう5G時代における新たな地方創生の可能性を模索していきたいですね」と語る。
金沢駅の鼓門に映像を投映した事例。白山麓キャンパス側の映像が5Gで映し出されたほか、金沢駅の特設ステージのよさこいが披露された様子も投映した。
働き方改革や遠隔医療にも活用
ドコモでは「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の提供を2018年2月21日からスタートしており、5Gにおいてパートナーとともに新たな利用シーンの創出に向けた取り組みを拡大している。パートナーは2019年9月18日時点で3,000社を超えた。
本プログラムでは、パートナーとなる企業や団体に対して、5Gの技術や仕様に関する情報の提供、パートナー間の意見交換を行う5Gパートナーワークショップの場を提供する。パートナーとなる企業や団体は本プログラムへの参加を通じ、2020年に先立ちいち早く5Gを用いたサービス構築や検証が行える。
また、これらパートナー企業に対して5G技術検証環境「ドコモ5Gオープンラボ」も提供している。5Gの基地局装置や移動局に接続する映像伝送機器などを、パートナーに対して無償で提供しているのだ。ドコモ5Gオープンラボの展開拠点は、グアムを含めて国内外11カ所。5Gプレサービスのエリアとしても活用されており、全国のパートナーとともに5Gを活用した産業創出や社会課題解決に向けた取り組みを実践している。
パートナー企業が取り組んだ5G活用の事例について加藤氏は「特に5Gの低遅延性を生かし、4Kや8Kなどの高解像度映像を視聴するような活用が多いです。教育分野では、ダンスレッスンの遠隔教育で5Gを活用し、タブレット上に表示した立体データの動作をみて体の動きを学ぶような活用がありました」と話す。
また、5Gは働き方改革にも寄与できるという。例えば報道関係者などは、移動中継車を使わなくても5Gで生中継が可能になるため、アナウンサー一人が現場に行けば放送が可能になる。「法改正が必要になりますが、遠隔医療における5G活用可能性は大きいと思いますね」と加藤氏。
2020年春の5G商用サービスに向けて、5G通信やサービスのさらなる進化を進めていくドコモ。「まずはエンターテインメントをはじめとした5Gが生きる分野で実際に活用してもらうなど、事例の創出に取り組んでいきます。パートナー企業もさらなる拡大を目指しており、パートナーと協力してコンテンツの制作を進めていきたいですね」と浅井氏は語った。
ラグビーW杯のスタジアムの様子をライブビューイングと2画面スマートフォンでリアルタイムに共有した。5Gにより遅延なく映像が再生できたほか、マルチアングルの映像もスムーズに表示できた。
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