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注目される5Gの産業利用―市場動向をIDCが解説

注目される5Gの産業利用―市場動向をIDCが解説

2019年12月13日更新

画像や映像を活用した産業で伸びる5G市場

MARKET

2020年春から商用サービスがスタートする5G。1~4Gはおよそ10年のスパンで遷移していったが、5Gはどうだろうか。また市場の立ち上がりはどうなるのだろうか。市場調査会社のIDC Japanに聞いた。

ハイエンド端末から5G対応が進む

 2020年春から商用サービスがスタートする5G。1~4Gはおよそ10年のスパンで遷移していったが、5Gはどうだろうか。また市場の立ち上がりはどうなるのだろうか。

 調査会社のIDC Japanは、国内5G市場予測について、6月の時点で発表を行っていた。その後の調査のアップデートによる最新の予測によると、5G対応携帯電話は2019年第4四半期(10月~12月)に出荷が開始されるとみられており、2023年には約1,149万台が出荷されると見込まれている。5G対応携帯電話は携帯電話市場全体の約32.8%を占める見込みだ(図1参照)。

 調査を担当した同社の菅原 啓氏は「5Gの本格的な普及はもっと先になる見込みで、これまでの通信規格同様10年のスパンで遷移していくでしょう」と語る。5G対応携帯電話の想定一括購入価格は、当初はハイエンド価格帯での提供になると予測されているが、普及が進むにつれてスケールメリットによって価格が徐々に低下すると期待されている。

 5G通信を利用可能な通信サービスの契約数は、当初は5G対応携帯電話の普及と連動して増加すると同社は予測している。それに加え、エンターテインメント施設からの高精細映像のリアルタイム配信、AIによる工場設備の予知保全ロボットや、設備機械の遠隔操作といった5Gの特性を生かした産業分野でのIoT回線としての活用が加わることで、2023年には3,316万回線が契約されると予測されており、モバイル通信サービス全体の13.5%を占める見込みだ(図2参照)。

高精細画像・映像をアップロード

 5Gにおいては特に、産業向けの利用が注目されている。ユースケースとして増加すると予測されているのが、4K/8Kなどの高精細画像/映像の伝送だ。

 8月28日に同社が発表した「5Gの産業応用市場の調査」に携わった小野陽子氏は、「5Gの特性として『高速・大容量』『低遅延』『多数端末接続』の三つが挙げられています。しかし、4Gからの大きな進化の一つはアップリンク(上り)の高速化であり、これを最も生かせるのが産業分野の用途における、高精細カメラやイメージセンサーで取得した画像/映像データのアップロードです」と語る。

 しかし、本格普及には通信モジュールの低価格化や基地局の配備で、サービス提供開始から数年を要する。また企業などで5Gの需要が増加するには、解像度の高い画像/映像アプリケーションの利用拡大や、センサーで取得した画像をAIで分析するなどのイノベーションの進展が求められている。

「そうした中で早期に5Gの導入が進む産業分野の条件として、①生産性を高めるための設備投資に積極的である、②画像/映像活用の取り組みが成熟している、③特定企業の管理責任下で変革に取り組むことができる、の三つがあります。例えば製造業における製品検査にはハイエンドなイメージセンサーが活用されており、生産性向上や自動化に投資をしてきた産業分野の企業が、さらなる生産性向上に向けて5GやAIなどを積極的に導入します。しかしこれらの産業用マシンビジョンに投資している企業は少数です。5Gの市場創出や市場拡大を実現するのは、ハイエンドとローエンドの中間層となるミドルレンジで、車両やサービスロボット、ドローンなどの自律移動機器マシンビジョンに搭載されたカメラ/イメージセンサーの送信する用途として5G活用が期待されています」と小野氏。半面、これらの自律移動機器の普及は、その安全性に関する法整備の影響を受けることも指摘された。

(左)IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 菅原 啓 氏
(右)IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャー 小野陽子 氏

パッケージ化が普及の鍵に

 イベントのリアルタイム中継やパブリックビューイングなど、エンターテインメント分野でも5Gの活用は見込まれている。菅原氏は「ARやVRは、各種イベントで引き合いが多く、高精細VRコンテンツ配信のような新たな映像価値提供への取り組みに5Gが活用されていくでしょう。しかし、高精細の画像を伝送すると処理負担が大きくHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が熱をもってやけどを引き起こすといった健康被害が生じる可能性も否定できません。また、高速な無線通信規格であればWi-Fi 6でも十分という指摘もあり、さまざまな通信規格の中から最適な通信手段を見つける必要がありそうです」と語る。

 全国の基地局への面的な展開に加えて、イベント会場や企業構内などのその場の需要に応じたスポット展開も進む。「特にMNO(Mobile Network Operator)以外でも5G環境が構築できる『ローカル5G』は今後増えていくでしょう。無線化によるメリットは大きいため、中長期的には5Gが伸びると考えていますが、市場としてWi-Fiとローカル5Gのどちらが適しているか、どれだけのシェアを獲得できるかなどは現時点では未知数です」と小野氏。

 今後の5G本格普及に向けて必要なポイントとして、小野氏は「特にIoTで5Gを利用する場合、パッケージ化は必須でしょう。大企業であれば自社で調達可能かもしれませんが、末端の中小企業が全て調達・構築するにはコスト負担が大きいため、5Gも含めたパッケージ化で提案を進めていく必要があります。中小企業だからと二の足を踏まずに、技術的な可能性を探っていくことが競争力の強化につながります」と語る。また、通信は水道や電気と同様に、すでに生活のインフラになっており、5Gを活用したソリューションを展開する場合は、複数のバックアップ回線を組み合わせて安定性を担保することも重要となると指摘した。

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