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総務省が語る5G政策最新動向

総務省が語る5G政策最新動向

2019年12月12日更新

Special Feature 2
5Gが巻き起こすビジネス革新

2020年春から商用サービスがスタートする第5世代移動通信システム「5G」。現在の移動通信システム(4G)よりも100倍速い通信速度を提供する「高速・大容量」に加え、「低遅延」「多数端末接続」といった三つの特性を持つ5Gは、今後のIoT時代において大きなインパクトを与える存在だ。すでにプレサービスがスタートしている次世代の移動通信システムについて、その可能性を探っていく。

5Gが導く地方創生と地域課題の解決

POLICY

5G実現に向けた研究開発や総合実証試験、周波数割り当てなどを進める総務省。5Gに関する政策の最新動向を聞いた。

大きな社会的インパクトを与える5G

 移動通信システムは10年ごとに進化を続けている。1980年代からスタートした1Gから現在主流の4Gに至るまで通信速度の向上が進み、最大通信速度は30年間で約10万倍になったと言われている。2019年9月からプレサービスがスタートし、2020年春には商用サービスが始まる5Gも同様に通信の高速化を実現する移動通信システムとなるが、5Gが持つ特性はそれだけではない。「高速・大容量」に加え、「低遅延」「多数端末接続」の3点の特性を有しており、特に低遅延と多数端末接続は、社会的に大きなインパクトを与える。

 例えば通信ネットワークにおける遅延(タイムラグ)を抑えられる超低遅延を生かせば、ロボットなどの精緻な操作をリアルタイムに実現できる。また自動運転のように高い安全性が求められる分野や、遠隔医療などの分野においても5Gのリアルタイムな通信性能は大きな効果を発揮する。

 多数端末接続を生かせば、膨大な数のセンサーや端末をネットワークに同時に接続できる。これにより、倉庫に保管された多数の物品の位置や中身の把握や、災害時に大勢の避難者にウェアラブル端末を装着させて健康状態を遠隔で確認させたりするような用途への活用が見込まれている。

 総務省の豊重巨之氏は、5Gに関する総務省の取り組みを次のように語る。「2017年度から5Gの総合実証試験をスタートし、2019年4月10日には携帯電話事業者4者への周波数割当て(特定基地局の開設計画認定)を実施しました」

 具体的には、NTTドコモには3.7GHz帯及び4.5GHz帯において2枠、KDDI/沖縄セルラー電話には3.7GHz帯において2枠、ソフトバンク及び楽天モバイルが3.7GHz帯において1枠ずつ割り当てられている。また28GHz帯は各携帯電話事業者に1枠ずつ割り当てられた。

総務省
総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 課長補佐
豊重巨之 氏

都市部・地方部を問わない5G展開を推進

 5G展開においては、都市部だけでなく地方部への早期展開も推進している。従来の人口などのカバレッジの広さを評価する指標に代わり、①全国への展開可能性の確保、②地方での早期サービス開始、③サービスの多様性の確保といった三つのポイントを評価する指針として設け、広範な全国展開を目指す。

 具体的には、全国を10km四方のメッシュに区切り、都市部や地方部を問わず事業可能性のあるエリアを広範にカバーしていく。例えば周波数の割り当て後、2年以内に全都道府県でのサービススタートや、全国でできるだけ多くの特定基地局の開設を行うこととしている。

 都市部、地方部を問わない5G展開を進めていく背景には、地方課題解決や地方創生に対する5Gの活用の期待がある。2017年度からスタートした5G総合実証試験においても、2017年度と2018年度は5G利活用分野を想定した技術検証を、事業者提案型で行う実証試験が中心だったが、2018年度は同時に「5G利活用アイデアコンテスト」を開催し、地方発の発想による実証テーマも募集した。2019年度の実証試験では、これまでの技術検証の成果と、前述したアイデアコンテストの結果を踏まえ、5Gによる地域課題の解決に資する利活用モデルに力点を置いた総合実証を、地域のビジネスパートナーとともに実施している。例えば、VRを利用した観光振興(熊本県南阿蘇村)や、高精細画像におけるクレーン作業の安全確保(愛媛県)、山岳登山者見守りシステム(長野県駒ヶ根市)、災害時の避難誘導・交通制御(福岡県北九州市)などだ。

自営の5Gネットワークを構築可能

 また、地域や産業のニーズに応じて、地域の企業や自治体などが自らの建物内や地域内で5Gネットワークを構築できる「ローカル5G」を展開する。ローカル5Gの利用には無線局免許などが必要であり、28GHz帯の一部(100MHz幅)を使うものについては年内に制度整備を行い、免許申請可能にする方針だ。

 豊重氏は「ローカル5Gによって、通信事業者によるエリア展開がすぐに進まない地域でも、建設現場における建機遠隔制御やスマート農業など、地域や産業の個別ニーズに応じて独自に自営の5Gシステムをスポット的に構築・利用できます」と語る。

 ローカル5Gは自ら5Gの無線局免許を取得することも、業者に委託することも可能で、企業や地域の課題を解決手段として5G環境を利用しやすい。また2020年末には28GHz帯の一部(100MHz幅)以外の帯域についてもローカル5Gの制度化を行う予定だ。2020年度予算の概算要求では、「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」として約70億円を計上しており、地域のニーズを踏まえたローカル5Gの開発実証を推進すると同時に、ほかの地域へ横展開できる仕組みの構築を目指す。

「スマート農業や河川の遠隔監視など、LPWAなどの安価な通信手段を用いた事例はすでに存在します。ローカル5Gが必要か否かは企業や自治体の判断になりますが、例えば河川の遠隔監視では5Gを用いることで鮮明な映像伝送が可能になり、水位の状況を正確に把握できるといったメリットが存在します。今後はBtoBビジネスの一つとしてローカル5Gの産業利用が進んでいく可能性が高いでしょう」と豊重氏は指摘する。いち早いローカル5Gビジネスへの取り組みが、競合企業との差異化を生みそうだ。

前橋市救急搬送高度化実証試験


総務省の5G総合実証試験の一つとして、NTTドコモと前橋市が実施主体となり行った救急搬送高度化ソリューションの実証試験の様子。

実証では、救急指定病院、救急車、ドクターカー、患者のかかりつけ医の4者間において、患者容体の診断用高精細映像などの情報を5Gの高速通信により同時共有する。これにより、初期対応の高度化や搬送先での迅速な受け入れにつながるかの検証を行う。実証試験では4Kカメラの高精細映像を5Gで伝送することで、患者の患部の様子やバイタルデータをリアルタイムに共有した。

実証に参加した前橋市赤十字病院の医師は「本来は音声のみで患者の情報共有を行いますが、5Gによる画像情報やかかりつけ医の患者情報をもとに、迅速な初期対応が実現できました。この理想的な環境を、今後実現できるようにしたい」と語った。


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