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スマート自治体に向け、和泉市が窓口申請をデジタル化

スマート自治体に向け、和泉市が窓口申請をデジタル化

2019年11月25日更新

和泉市の窓口申請デジタル化に向けた実証実験
~スマート自治体に向けて窓口申請をデジタル化~

大阪府和泉市は、7月9日~25日にかけて窓口申請デジタル化に向けた実証実験を日本電子計算と共同で実施した。本実証実験の一部には、東芝デジタルソリューションズが開発したOCR(光学文字認識)技術で運転免許証のデータを自動入力する「本人確認書類読取サービス」が活用されている。窓口業務のデジタル化の背景を、和泉市のIT政策担当に聞いてみた。
Text by 古俣慎吾 Shingo Komata

スマート自治体の実現に向けて

 現在、和泉市役所では、窓口での各種申請手続きにおいて申請者が手書きした申請用紙の内容を市の担当者が確認して、目的の証明書などを発行している。上記のやりとりは和泉市役所に限らず、ほかの自治体でも従来から行われている。

 和泉市が今回、窓口業務のデジタル化を推進しようとした背景にはどのような問題、課題があったのか。和泉市 政策企画室IT政策担当課長 山本 謙氏は、手書きの申請用紙の受理までにかかる時間やコストの問題を解決することで窓口の業務量を削減し、スマート自治体への転換を図る目的があったという。

「役所では、いまだに紙を多用しています。これは大きな問題で、申請手続きに紙を使うと、窓口担当者はそれを見ながらシステムに入力し、後にそれをファイリングするなど、さまざまな業務が発生します。こうした業務の発生から最後までをデジタル化できれば、労力の大幅な削減が可能となります」

 山本氏が所属するシステム部門では、窓口業務の合理化、効率化という明確な目的があったと話している。「働き方改革の面もあり、サービスを維持しながら窓口担当の業務も合理化、効率化を進めます。将来的には、窓口業務をAIが処理するような展開も考えています」(山本氏)

 行政の各種手続きのデジタル化を進める本実証実験は、当市にとってスマート自治体の実現に向けた取り組みの第一歩と言える。

スマホ入力&自動読み取りで省力化

 和泉市役所のHPによると、各窓口で証明書などの交付申請をする場合、申請者本人を確認できる書類の提出を要求している。本人になりすました交付申請や、職務上の請求用紙を使用した不正取得を防止するためだ。代理人が申請を行う場合や、委任状を持参した場合でも、その人が委任を受けた本人であるかどうか確認が必要だ。そして、本人確認のため窓口で提示してもらう書類やその数も、それぞれ証明書によって異なる。以下が本人確認で必要となる証明書の振り分けの一部だ。

■本人確認の際に提示する証明書の分類

・本人確認が必要になる証明書
市民室、税務室・資産税担当、税務室・市民税担当、税務室・納税担当別の証明書

・1枚の表示で確認できる証明書
運転免許証、旅券(パスポート)、住民基本台帳カード、個人番号カード、健康保険・共済組合の被保険者証、生活保護受給証明書、学生の生徒手帳など

・2枚以上の提示が必要な証明書
クレジットカード、キャッシュカード、預貯金通帳、病院の診察券、商店の会員証、消印の付いた郵便物、本人の顔写真が貼付された社員証など

 これらの書類を入力し、登録するまでの業務がデジタル化されるなら、窓口側の労力、コストの面で大きな効果が見込めることは明らかだ。

窓口申請での本人確認、行政手続きを紙から電子へ

 本実証実験は2019年7月9日~7月25日までの期間で、スマートフォンやタブレット端末を利用した市内転居、他市町村への転出、住民票発行の手続きを対象に行った。手順は以下の通りだ。

■和泉市実証実験のデジタル化のフロー

①窓口に出向いた申請者は、手書きの代わりにスマートフォンやタブレットに必要項目を入力
②入力内容はQRコード化される
③窓口担当は読み取り機器でQRコードの情報を読み取る
④運転免許証の券面から、「氏名、住所、生年月日」の部分の情報をスキャナーで読み取る
⑤スキャナーで読み取った「氏名、住所、生年月日」の部分は市の住民記録システムに自動入力される

 右のフローのうち、東芝デジタルソリューションズの「本人確認書類読取サービス」は④で活用された。

 7月の実証実験に引き続き、9月には詳細な実証実験報告書が提出された。報告書では、実証実験への住民の内訳と参加状況などが紹介されている。以下がその概要だ。

■実証実験への住民の内訳と参加状況

・住民異動(転居・転出)……依頼件数:60、協力可能件数:38、受付件数:33
・証明書発行(住民票)……依頼件数:11、協力可能件数:11、受付件数:5

 上記結果を見ると、市民からの届け出申請に対して、全ての人に協力を得られたわけではないようだが、申請者は10~60代以上まで、幅広い年齢層にわたっていたという。

 実証実験報告書の総評では、証明発行・住民異動でスマートフォン、タブレットを使った場合については次のようなコメントが寄せられていた。

・複数の証明を取得する申請者が多く、住民の利便性が増す
・スマートフォンはどこでも入力できるため、待ち時間の軽減、職員の手間軽減、誤入力防止の効果が見込める
・タブレットの操作は職員のサポートなどが必要となるため、職員側に負担がかかる
・年配者で操作に難があるケースが多い

「窓口での入力作業時間は、スマートフォンと比較してタブレットの方が入力時間が長くなる傾向が見られ、窓口担当者へのサポート依頼が多くなりました。全体的な結果としては、転居、転出届の申請については平均2~3分程度短縮できたのではないかと思います」(山本氏)

理想形は市役所に行かずに手続き

 窓口業務の現状や、省力化に向けた取り組みで見えてきた課題と目標を、山本氏は以下のように説明する。

「元々、窓口業務の合理化、システム化を目的としてマイナンバーカード制度が設けられたはずです。しかし、マイナンバーカードの利用率は和泉市でも11%台で、セキュリティなどの課題などがあってなかなか普及しません。当市のスマートフォンの普及率は70歳代以上で50%と半数を超えていることから、スマートフォンからの申請手続きもできると考えます。窓口業務の短縮化の理想形としては、市民が市役所まで来なくても申請を受理できる状況にすることです。窓口業務だけでなく、福祉系などの複雑な手続きのある課の申請業務に同システムを導入していけば、窓口でのやりとりが効率的でスムーズにできるようになるかもしれません。また、当市は2021年度に新庁舎に移転することが決まっています。せっかくの新庁舎ですので、こういったシステムをフルに活用して窓口業務を短縮化していきたいですね」

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