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IoTで社会インフラを守るCACHのモニタリングシステム

IoTで社会インフラを守るCACHのモニタリングシステム

2019年11月22日更新

構造物の異常を遠隔監視
モニタリングシステム「ST-COMM」

日々の生活を支える橋梁やトンネルなどの社会インフラには、建設から年数の経過した構造物が増加しており、老朽化による崩壊が懸念されている。点検や維持管理が急務となるが、作業をするにもコスト負担が大きいことや人手不足といった問題が生じている。こうした問題を解決するのが、CACH(カック)のひずみモニタリングシステム「ST-COMM」(エスティーコム)である。

異常をセンサーで検知

 昨今、橋梁やトンネルといった公共構造物の社会インフラの老朽化が問題視されている。国土交通省の2019年の調べによると、国内の橋梁数は現在72万橋ほど。そのうち建設から50年経過する橋梁の割合は、現時点で約27%、2029年には約52%に増加すると予測されている。

 社会インフラの長寿命化に伴い、構造物の点検や修繕などの計画的な実施が推進されているが、インフラ整備に投資する財源不足や少子高齢化による人材不足などが要因となり、なかなか進められないのも現状だ。とはいえ、経年劣化によるひずみ(変形)や破損を放置しておけば、崩落などによる大きな事故を引き起こす恐れも考えられる。

 こうした問題を解決するため、データ通信モジュールおよびソフトウェア開発・販売を行うCACHは、ひずみモニタリングシステム「ST-COMM」を開発した。ST-COMMは構造物のひずみを測定してデータ化、データをクラウドに保存し、遠隔で構造物の状況を確認できるIoTソリューションだ。「今まで現地に赴かないと確認できなかった構造物の状態がST-COMMの活用により、いつでもどこでも遠隔で確認できます」とCACH 最高執行責任者 石川幸佑氏は説明する。

 ひずみセンサーは約50年前から建築や車、バイクなどの産業で幅広く活用されてきた実績のある技術だ。同社の創業者兼代表取締役である鈴木良昌氏も二輪自動車メーカーでひずみセンサーを活用した製品開発を行っていた。2012年に起きた笹子トンネルの天井板落下事故を受け、ひずみセンサーの技術を生かせないかと考えたことがひずみモニタリングシステム開発の始まりだという。

「ST-COMMは、構造物の異常を素早く発見し、事故などを未然に防ぐだけではなく、補修工事における施工品質の確認やパイプなどの配管の変形を調べることも可能です。さまざまな分野や用途で活用できるシステムです」(石川氏)このほかにも、太陽光パネルに用いてパネルの変形から既存の発電量との差異を調べるといった用途に活用する予定もあるという。

バッテリーで5年間稼働

 ST-COMMは計測器やひずみセンサーとCACHが提供するクラウドサービス「ST-COMM Cloud」で構成される。現地に設置する計測器は、1台で4本のひずみセンサーを接続できる。ひずみセンサー自体は、既存のセンサーメーカーが提供しているものを活用する。既存のひずみセンサーを利用できるため、コンクリート、木材、金属、プラスチックといった多様な素材の構造物の測定が可能だ。

 ひずみセンサーを接着剤または溶接で構造物に貼り付け、ST-COMMの電源をオンにすると、測定したデータがLPWA経由でST-COMM Cloudに送信され、Webブラウザーを介して遠隔でデータを確認できるという仕組みだ。

 既存の計測システムは、実験室のような観測小屋を設置し、そこに計測器やモニタリングの機器を用意して測定する場合が多い。観測小屋を用意せず無線化する技術もあるが、基地局などのネットワークを構築する必要があり、労力やコストの負担が大きい。また、既存の計測器はサイズが大きく持ち運びにくいこと、電源供給は有線でコンセントなどが必要となり、容易には活用できなかった。

 一方でST-COMMは本体重量500gと軽量で、電源供給のためのコンセントなどは不要なバッテリー式だ。1日4回の測定で、約5年のバッテリー稼働を実現する。「ST-COMMは、スイッチをオンにするだけでデータをすぐに取得できます。IEC規格IP54相当の防塵、防水性能で雨ざらしになっても問題ありません。片手で持ち運びでき、既存のシステムと比べ10分の1の低コストで導入可能です」と石川氏は魅力を語る。

 集積したデータは、PCまたはスマートフォンのWebブラウザーで確認、管理する。画面上では、センサーを取り付けた構造物のひずみや伸び縮みの数値を、時系列ごとに表形式や動きが分かりやすい折れ線グラフで表示できる。画像の登録もでき、センサーを取り付けた橋やトンネルが複数ある場合に、数値のみの表示だと分かりづらいが画像を一緒にひもづけておけば認識しやすく便利だ。計測を行うデータ間隔も分単位で設定変更できる。

「目視による点検では、作業員ごとに判断の基準が異なったり見落としが発生してしまったりする問題があります。データとして数値で判断できるST-COMMにより的確な判断が可能となり、作業の効率化にもつながります」(石川氏)

IoTで社会インフラを守る

 ST-COMMは2018年10月ごろから評価キットの提供を開始している。大手ゼネコンや大学、建設会社、プラント関連企業など数多くの企業で評価キットが導入されているという。

 評価キットを導入した企業から寄せられた声に応える形で機能拡張も行われている。例えば、ひずみ以外の亀裂やひび割れなどを監視したいという要望に応え、ひび割れセンサーを取り付けて亀裂やひび割れの進行状況を確認できるサービスの提供も開始された。「将来的にはAI技術を活用した構造物の寿命予測などのオプションサービスの提供も予定しています。これからもお客さまのご要望に応える形で随時機能を追加していきます」(石川氏)

 ST-COMMはドイツでの展示会などにも出展しており、海外展開も視野に入れている。ヨーロッパ・アフリカ・南米などの地域から導入してみたいと要望もあるという。

「今後もより多くの企業で導入しやすい製品を目指し、ST-COMMの製品改良を重ねていきます。また、モニタリングするだけではなく、その後の対処方法の提案などデータを活用したサービスをお客さまに提供していきます」と石川氏は展望を語った。

Webブラウザーの画面イメージ。ひずみや温度・湿度などのデータの推移がグラフで確認できる。
センサーを取り付けた計測器。本体重量500gと片手で持ち運べる。

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