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キャリア教育に生かされる広尾学園の3Dプリンター

キャリア教育に生かされる広尾学園の3Dプリンター

2019年11月15日更新

図書館のように使えるICTルームを軸とした
3Dプリンター活用によるキャリア教育の効果

3Dプリンターを学校現場で活用する動きが活発化している。中でも広尾学園は、授業ではなく課外活動の一環で3Dプリンターを利用できるICTルームを開設し、生徒の自主性に任せた活用を推進している。

広尾学園のICTルーム。生徒の背後に設置されている2台の3Dプリンターが現在活用されている機器だ。

生徒の声を契機に3Dプリンターを導入

 先進的なICT教育に取り組むことで知られる広尾学園中学校・高等学校(以下、広尾学園)。本科コースでiPad、インターナショナルコースでMacBook、医進サイエンスコースでChromebookを生徒用の学習用端末として採用し、1人1台のタブレット(PC)環境をいち早く構築した学びを推進している※。

 そんな広尾学園が初めて3Dプリンターを導入したのは2014年の末のこと。Afinia製「Afinia H480」とMakerBot Industries製「Makerbot Raplicator2」の2台を導入し、2015年1月には、3DプリンターをはじめとしたICT機器を活用できる施設として「ICTルーム」を開設した。

 ICTルームを管理するICT教育・広報担当の小沼洸生氏は、導入の経緯を次のように語る。「最初のきっかけは、当時の生徒から『3Dプリンターを我が校に!』という声が上がったことです。『ものづくりから生まれるコミュニティがある』とプレゼンテーションしたその生徒の働きかけを契機に、当校でICT教育を推進する金子 暁副校長が導入を決めました」

 その後、校舎の改装に合わせて多目的スペースとして利用されていた場所をICTルームへリニューアルした。ICTルームの本格稼働がスタートしたのは2016年4月からになる。

 2019年10月現在、広尾学園のICTルームに設置されている3Dプリンターは7台だ。しかし2014年当時に導入されたAfinia H480と、2015年12月のイベントに合わせて導入(メーカーからの寄贈)されたXYZプリンティング製「ダヴィンチ 1.0」「ダヴィンチ 1.0 AiO」計4台は現在のところ活用はされていないという。積層式の3Dプリンターは可動部が多く、数年ほどで故障してしまったり、精度が落ちてしまったりすることが原因だ。
※本科コースでは順次Chromebookへの移行を進めている。

広尾学園中学校・高等学校 ICT教育・広報担当 小沼洸生氏
広尾学園高等学校 1学年 ICTルーム 運営生徒 小沼天音氏
広尾学園高等学校 2学年 ICTルーム 運営生徒 高橋美帆氏

イベントや授業に活用される3Dプリンター

 ICTルームの運営生徒として、施設の運営に携わっている高校2年生の高橋美帆氏は「ダヴィンチシリーズの導入は、2015年12月に実施したものづくり体験イベント『モデ1GP』がきっかけです。1970年代の小学生の間で流行したスーパーカー消しゴムを題材に、小さな車を3D CADでモデリングして、それを3Dプリンターで出力してノック式のボールペンではじいて走行距離を競うゲームです。しかし、このイベントを実施するには2台の3Dプリンターでは足りないだろうということで、XYZプリンティングジャパンさまから6台の3Dプリンターをお借りしました」と語る。その後、機器の返却を行う際にメーカー側から4台の3Dプリンターを寄贈されたという。

 ICTルームで活用している3Dプリンターは、授業で強制的に利用するものではなく、生徒たちが自主的に“ものづくり”を目的として利用する機器であることも、主体的にものづくりに取り組む姿勢を育成できることの背景にある。

 現在高校1年生で、中学1年生のときからICTルームに通う小沼天音氏は「当時の数学の教科担任がICTルームの運営に携わっていて、そこからICTルームの存在を知りました。3Dプリンターの知識はあったので、『実際に使ってみたい!』という好奇心からICTルームに通うようになりました」と話す。小沼天音氏は国内外の医学系・理系大学への進学を目指す医進・サイエンスコースを選択しており、数学の研究発表の場で錯視立体を説明するために3Dプリンターを活用して出力したケースもあるという。

モデ1GPをきっかけに寄贈された「ダヴィンチ 1.0」。隣に設置されているのはレーザーカッターだ。
Formlabs製の光造形方式「Form2」は出力精度が高く「お気に入り」と高橋氏は話す。
ICTルームで使用している3Dプリンターで出力したモデル。関節が可動するロボットなども出力した。

ものづくりを主軸としたキャリア教育

 高橋氏は「ICTルームは利用目的が定められていない、図書館のような場所です。そのため小沼(天音氏)のように授業の研究発表で使う立体を出力するケースもありますし、クッキーを作るときに使用する型抜きや、リコーダーを出力したケースもあります。個人的に非常に気に入っていたのがAfinia H480で、現在は使えなくなってしまいましたが、カバーがついていないので出力するときの積層の仕方などが視覚的に分かりやすく、3Dプリンターの使い方、出力のされ方などを理解するのに非常に役立ちました。現在のお気に入りは最近寄贈していただいたFormlabs製の光造形3Dプリンター『Form2』で、非常に精度が高いなめらかな造形ができるんです」と語る。

 教員からタブレットスタンドの製作を依頼されたり、作りたいものがある生徒が立ち寄って、一時的に3Dプリンターを使ってものづくりをしたりすることもあり、導入当時の発想である“ものづくりから生まれるコミュニティ”の役割を、ICTルームが担っている形だ。また、ICTルームを軸にしたイベント企画の活動は、前述したモデ1GP以降も続けられており、高橋氏のような生徒が主体となって、外部の企業と連携したイベントを開催している。

 小沼洸生氏は「外部の専門家や企業の人と連携を取って、生徒自身がものづくりイベントを主導する経験は、キャリア教育に非常に有効だと考えています。多くの学校では職場体験や見学などがキャリア教育と捉えていますが、本校では放課後の課外活動を含めた全ての活動がキャリア教育と捉えており、生徒の今後の進路やキャリアの形成に役立つと認識しています。そのため、ICTルームの活動はあえて授業外で展開し、部活動のような定められた課外活動ではなく、学年の制約もなくし、自由に利用できる拠点となることで、今後も生徒たちの可能性を伸ばしていきたいと思います」と語る。現在では3Dプリンター以外にも、レーザーカッターや照明機材、映像機器なども設置されており、ICT機器を活用したクリエイティビティの場として広がりを見せている。

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