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教育用小型ドローン「Tello EDU」がSociety 5.0時代の学びを支援する

教育用小型ドローン「Tello EDU」がSociety 5.0時代の学びを支援する

2019年10月21日更新

ドローンを活用したプログラミング教育は
Society 5.0時代に向けた最先端の学びに

2020年度からスタートするプログラミング教育。ビジュアルプログラミング言語「Scratch」を用いたプログラミング学習や、マイコンボードと組み合わせたフィジカルプログラミングなど、多様なソフトウェア、デバイスを活用した学びが提案されており、各学校現場で実証実験なども行われている。そうしたプログラミング教育を実施するプログラミングツールの中で、一風変わったデバイスが注目を集めている。ドローンだ。今回は教育用ドローンを販売しているDJI JAPANを取材し、その教育効果を聞いた。

小型のドローンにプログラミング

 ドローンの製造や販売を行うDJI JAPANは、昨年11月からプログラミング教育用ドローン「Tello EDU」を販売している。開発元はトイドローン開発を手がけるRyze Techだ。

 DJI JAPAN プロダクトマーケティングマネージャー 皆川正昭氏は「Ryze Techはもともと当社のフライトコントロール技術を『Tello』と呼ばれるトイドローンに採用していました。初心者向けで小型ながら性能が高く、費用対効果の高いドローンとして評価の高い製品です。また、物理学やエンジニアリング、コンピュータープログラミングを楽しく学べるツールとして、米国を中心とした学校教育の場や化学、技術、工学、数学の教育現場でのキャンプなどで活用されていました」と語る。

 Tello EDUは、そのTelloに機能拡張を行い開発された教育用ドローンだ。Telloで対応していたScratchに加え、Swift、Pythonといった複数のプログラミング言語でプログラミングが可能だ。本体の重量は約87gと軽量で、手のひらサイズながらHDカメラを搭載している。小型ながら空撮も可能なドローンなのだ。

「このサイズのドローンはGPSセンサーの搭載ができないため、ホバリングがしにくいという欠点があります。しかし、Tello EDUでは機体底面部に『ビジョンポジショニングシステム』と呼ばれる下方センサーが搭載されています。この下方センサーはHDカメラと3D赤外線モジュールで構成されており、機体が傾いた場合はセンサーが検知して、操縦者からの指示がない場合は自動的にホバリングして自立飛行するため落下しにくく、安全性が高い製品です」(皆川氏)

 また、搭載されているHDカメラを活用して、ドローンの飛行距離計測も可能だ。プログラミング用のドローンは他社からも提供されているが、基本的には飛行距離などは“前に5秒間飛行”と指示される。こうした指示は、特に屋外でドローンを飛ばす場合、周囲からの風の影響を受けてしまい、狙った位置に飛ばすことが難しい。しかしTello EDUは搭載されたカメラで飛行距離を計測するため、“前に10cm移動”という具体的な指示が出しやすく、ドローン初心者でもプログラミングしやすいのだ。

 プログラミングはiOS端末やAndroid端末であればTello EDUのアプリから、Windows端末であればScratchからできるため、プログラミングやドローンに対しての知識がなくても簡単に使える点も魅力だ。

Tello EDUは、iPadやAndroidタブレットでは専用アプリ「Tello EDU」を使ってブロックを組み合わせてのプログラミングが可能だ。
4枚の「ミッションパッド」を付属。1~8の数字や方向指示が記載されており、トリガー機構として利用できる。また地上のガイドポイントとして使用でき、ミッションパッド上で飛行の補正も行う。

ドローンで学ぶ座標の概念

 Tello EDUと4枚の「ミッションパッド」と呼ばれるアクセサリーを組み合わせれば、さらに豊富なプログラミングを体験できる。ミッションパッドは表裏に数字やイラストが書かれた四角形のパッドで、Tello EDUに搭載されたHDカメラで座標として認識するようにプログラミングして、特定のレスポンスを引き出せるのだ。

「このミッションパッドに描かれたロケットは、ロケットが向いた方向にドローンを動かすという指示にもなっています。そのため、ドローンに“前に進む”というプログラミングをしておき、ミッションパッドを配置しておくだけで、三角形や四角形の図形を描くように飛行させられます」と皆川氏は説明する。算数の授業における図形描画の単元などにドローンを活用すれば、プログラミングと教科学習を組み合わせた学びが実現できる。

 ミッションパッドに記載された番号は、Tello EDUがアクションを起こすトリガーにもなる。例えば1のミッションパッドに移動したら回転する、といった動作が可能だ。上から順に処理を実行する「順次」や、処理を繰り返す「反復」、条件によって処理を変える「分岐」などのプログラミングの三つの基本を、Tello EDUとミッションパッドの組み合わせで学べるのだ。

 実際にTello EDUを小学校で活用した事例も存在する。特定の教科での実施ではなく、DJI JAPANが講師となってプログラミングを学ぶワークショップ形式で、総合的な学習の時間に実施された。皆川氏は「複数の学校現場で実施しましたが、どの学校も生徒の集中力が高く、非常に関心を持ってTello EDUを活用したプログラミングに取り組んでいました。座標の概念は学年によってはまだ学習していない範囲ですが、楽しさを原動力にした集中力があるため積極的に学んでいました」と振り返る。

社会課題解決のツールを実際に使える効果

 特に学校で実施するプログラミング教育において、ドローンを活用する意義は大きいという。「文部科学省が例示したプログラミング教育の教科利用例には、算数や理科における活用のほかに、総合的な学習な時間において、社会課題を解決する手法を児童自らが学習する場面も例示されています」と皆川氏。特にドローンは測量や宅配、農業における農薬散布などさまざまな分野で活用されているため、地域に根ざした社会課題を解決するツールとしてドローンを選択できる環境を整えることが、子供たちの学びの幅を広げることにつながるだろう。

 例えば、防災教育の観点から「ドローンで遭難者を探す」ためのプログラミングをTello EDUで学ぶことも可能だ。ミッションパッドを遭難者に見立てて、一定区画をドローンで創作し、遭難者を見つけたらドローンがフリップするようプログラミングすることで、プログラミングが社会課題を解決できることを学べる。

「特に現在、政府がサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会課題の解決を両立させる社会として“Society 5.0”を掲げています。その中の一つに、ドローンによる宅配システムをSociety 5.0の世界として挙げており、社会課題を解決する未来のツールとして、学校現場の先生にとってもイメージがしやすいのです」と皆川氏。

 DJI JAPANがワークショップを実施した小学校では、用意した課題をクリアした児童は自らが新しい課題を作って挑戦するなど、創意工夫をしながらプログラミングを楽しんでいたという。皆川氏は「Tello EDUは小学校、中学校などの義務教育課程や、プログラミング教育を学ばせる学習塾などに最適な教材です。学校現場においては、1校で40台を導入してシェア、といった活用や、教育委員会が一括導入して市内の学校でシェアするような活用をしているケースもあります。DJIでは従来から大学生向けのロボット教育に注力しており、今後は小中高に対してもドローンを活用した教育に裾野を広げていきたいですね」と語った。

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