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ノークリサーチの岩上アナリストが分析する中小企業向けHCI提案のポイント

ノークリサーチの岩上アナリストが分析する中小企業向けHCI提案のポイント

2019年10月04日更新

中小企業がよろこぶ
HCI

HCI(Hyper Converged Infrastructure)元年と呼ばれた2016年から3年が経過し、デジタルトランスフォーメーションに先進的に取り組んでいる企業や大規模な企業ではHCIの採用が拡大している。これから狙うべきは中小企業だ。提案を推進すべく、中小企業向けのサクセスシナリオを、HCIの主要ベンダーに聞いた。

中小企業向けHCI提案のポイント

中小規模のユーザーは、HCIに対してどのような認識を持っているのか。中堅・中小企業市場の調査に定評があるノークリサーチの岩上由高氏の解説を交えて分析する。

まずはHCIの実績を伝える

 ノークリサーチは、現在のHCI市場について、一部のユーザー企業における先行導入の段階から、多くのユーザー企業が導入に踏み出す段階へと移行しつつあると捉えている。もちろん、年商規模による違いやアーリーアダプターとフォロワーによる違いに応じてユーザー企業の課題やニーズは異なる。そのため、「要求される情報自体にも違いが生じています」とノークリサーチ アナリストの岩上由高氏は話す。実際同社では、「HCI製品の選定において重視する事項」を26項目にわたって尋ねた結果を、年商100~300億円と年商5~50億円の企業別にまとめている(図1は年商5~50億円の企業の回答結果)。

「年商100~300億の企業では、アーリーアダプターが一通りHCIを導入しているような状況です。そのため、用途や規模に応じた最適なサーバー構成の提案など実践的な事柄を販売パートナーやベンダーに求める傾向が高くなっています。一方で、これからHCIの導入が本格化する中小企業ユーザーにおいては、『業務パッケージの動作実績一覧が公開されている』ことや『今後も製品の投入や保守/サポートが継続される』ことなど、HCIが問題なく動作してこれからも継続的に提供されるITインフラであるかどうかといったポイントが重要になっています。そのため、中小企業ユーザーへの提案時には、HCIが既に十分な実績を持っていて、これからの主要なITインフラの一つであることを明確に伝える必要がまだあるのです」

 HCIは、主なベンダーから製品が出そろった2016年以降、今年に至るまでに着実にラインアップが拡大している。HCIの基盤となるソフトウェアやそれらを搭載するハードウェアの選択肢は幅広くなり、ユーザーは何を選ぶべきか迷うケースも出てくるだろう。

 昨年8月時点のノークリサーチの調査(年商500億円未満の企業が対象)では、HCI基盤ソフトウェアとして導入済み/導入予定/導入検討が多かったのは、ニュータニックス(Nutanix Enterprise Cloud OS)とVMware(VMware Virtual SAN)だ。そして、マイクロソフト(Storage Spaces Direct)、日本ヒューレット・パッカード(SimpliVityなど)が続く。

 同調査時の分析では、Windows Serverの機能でHCIを実現するStorage Spaces Directを提供するマイクロソフトがシェアを伸ばす兆候を見せていて、Windows Serverに包含される利点を生かして存在感を増していく可能性があるとノークリサーチは指摘していた。そのマイクロソフトは今年の4月、Windows Serverと検証済みハードウェアで実現されるHCIを「Azure Stack HCI」と定義し、その認定ソリューションの提供を各ハードウェアベンダーが開始している。

 ノークリサーチは、HCI製品を提供するハードウェアベンダー別でも同様の調査を行った。昨年8月時点で、調査対象における導入済みまたは導入を予定/検討しているHCIのサーバー機器ベンダーのシェアは、Dell EMC、日本ヒューレット・パッカード、レノボ・ジャパンと続いた。

「ハードウェアベンダーでは、例えばDell EMCはラインアップが豊富で用途ごとに分けられているため、販売パートナーやエンドユーザーが求めるシステムに応じて、適宜選択できる魅力があります。日本ヒューレット・パッカードはSimpliVityにおいて、ハードウェアベースのアクセラレーションという長所を踏まえて、ターゲットを絞った訴求が功を奏すでしょう。レノボは、IBM時代から築き上げてきたハードウェアの高い信頼性が支持されているようです。富士通などの国内企業はこれからの躍進に期待ですね」(岩上氏)

ノークリサーチ 岩上由高氏

クラウドとの比較も焦点に

 HCIは、サーバー、ストレージ、ネットワークという従来の3階層構成のシステムをサーバーだけで実現するメリットや拡張性の高さが売りとなる。そうした基本的なHCIの魅力に加えて、クラウド基盤アプライアンスと共通する利点と両者の違いを明示することも大切だと岩上氏は指摘する。

 図2を見てみよう。これはHCI以外のオンプレミスのサーバー形態の中で、HCIと共に検討されることが多いものは何かをノークリサーチが分析した結果の一部だ。HCIをすでに導入している、もしくは検討しているような企業では、パブリッククラウドと同様の環境をオンプレミスで実現するクラウド基盤アプライアンスも検討しているという結果が出ている。

「HCIを提案する際、これまではSANが存在するシステムとの比較が中心になりましたが、これからはクラウドとの比較も焦点になることを示すデータと捉えられます。ただし、ここで気を付けたいのは、HCIはあくまでもIaaSと比較すべき点ですね。PaaSのようなクラウドを欲している顧客に対しては、HCIは適しません。そうした顧客には、クラウド基盤アプライアンスである『Azure Stack』のような製品が適しています。Azure StackとAzure Stack HCIのように、クラウド基盤アプライアンスとHCIが非常に近い位置付けに映りやすいケースがあります。しかし、両者はPaaSの要素を含むかどうかで異なるサーバー基盤です。HCIの提案においては、こうした違いも明示していく必要があるのです」

 アプリケーションはこれまで同様に利用しつつシステムの高い拡張性や運用管理の効率性向上をオンプレミスで実現できるのがHCIとなる。こうしたシステムのメリットを明確に伝えた上で、HCI基盤ソフトウェアや各ハードウェアベンダーの特色を交えた提案で、HCI市場でのビジネス拡大を実現していきたい。次ページから、各ベンダーのHCIソリューションを解説していく。

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