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産学連携で開発した子育て支援チャットボット――ISAO

産学連携で開発した子育て支援チャットボット――ISAO

2019年09月30日更新

京都大学の研究室と産学連携で開発を進める
Azure基盤の子育て支援チャットボット

法人企業では、情報システムの設計や移行に際してクラウドを第一の候補とする「クラウドファースト」が進んでいる。しかし、教育機関ではいまだオンプレミスが主流だ。そうしたなか、大学主導のプロジェクトの一環として、Azure上で子育て支援チャットボットを開発した事例がある。構築支援や学生へのハンズオンを実施したISAOに話を聞いた。

Lesson1 産学連携で進める子育て支援チャットボット開発

 ISAOは「世界のシゴトを楽しくする」をビジョンとして掲げているIT企業だ。クラウドの販売、システム環境の構築・運用を行うクラウド活用支援サービス「くらまね」をはじめ、モバイルアプリケーションの受託開発、スマートスピーカーのスキル開発などを行っている。また自社プロダクトとして、コミュニケーション型目標達成サービス「Goalous」(ゴーラス)や、簡単に使えるダブルトークン型プッシュ通知認証サービス「Mamoru PUSH」を提供するなど、多様な業種の法人企業にサービス提案を行っている。

 法人企業が主な取引先である同社だが、異色の提案事例もある。京都大学と同社が産学連携で実施している「子育て」をキーワードとしたチャットボットの開発だ。

 ISAOの石原裕介氏は「当社ではクラウドの受託開発やサポートなどのコンサルティング提案などを『くらまね』で提供しており、Microsoft Azure(以下、Azure)を基盤とした開発にも実績がありました。今回のチャットボット開発は、当社のAzure開発の実績を知った京都大学の小山田耕二教授からお声掛けをいただいてスタートしたプロジェクトです」と語る。

Lesson2 チャットボット開発基盤にAzureを選択

 小山田教授の研究室では、COI(センター オブ イノベーション)プログラム※の一環として「子育て」の分野におけるAIの活用方法について研究を進めていた。その中で、京都の精華町で実施したヒアリングから「仮想おばあちゃん」というチャットボットの開発プロジェクトが発足したのだという。仮想おばあちゃんは、乳児の心理を可視化するため、その泣き声や映像を元に乳児の状態を分析して、保護者に対処方法をはじめとしたガイドを表示する仕組みだ。しかし、そのチャットボットを開発するにあたり、テキストベースの会話データや、乳児の音声・映像、母親の健康状態などの多様なデータを収集および分析する必要があった。そこで求められていたのが、堅牢なインフラストラクチャーと非構造データを扱えるデータベースだ。

「その分野での開発支援実績がある企業ということで、当社に連絡をいただきました。小山田教授は日本IBMの出身でITに明るく、またご本人の知り合いがマイクロソフトの研究所で言語処理に携わっていたこともあり、Azureを基盤としたチャットボット開発の支援を当社が行い、概念実証を進めていくことが決まりました。当社のビジネスはBtoBの法人企業がメインでしたので、文教市場の研究機関の開発支援をすることは今回が初めてです」とISAOの菅原 仁氏は語る。

※10年後の目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型のチャレンジング・ハイリスクな研究開発を、科学技術振興機構が最長で9年度支援して推進するプログラム

Lesson3 開発はハンズオン形式で学生とともに実施

 当初は子育て支援チャットボットを受託開発する方針だったが、京都大学側と検討を重ねるうち、研究室における運用を見据えると「Azureの使い方を研究室の学生にハンズオン形式で指導し、ともに開発してもらう方がその後の運用も円滑に進むと考えました」(菅原氏)

 ISAOが提供するくらまねではAzureエンジニアがユーザーのAzure活用などを支援するアドバイザリーを提供しており、そのスキルを生かした提案だ。ISAOの秋山康平氏は「研究室の学生には、Azureの使い方をレクチャーした後、ハンズオン形式でシステム構築を行いました。学生のITスキルには差があったもののITに対する知見はあり、不明な点を適宜回答しつつ、テクニカルな問題が発生した場合に解決のサポートを行いました」と振り返る。ハンズオンは初回以外はSkypeやSlackなどを活用し、東京からリモートで支援したという。「リモートで支援できるという点において、クラウド環境で構築したメリットは大きいですね」と秋山氏。

 チャットボットの開発は現在も進められており、精華町の子育て中の母親のフィードバックを得ながら機能の改善を行っている。チャットボットはLINEに組み込まれており、テキストベースの質問に対して回答を示したり、乳児の泣き声からその原因を分析して保護者に対してその分析結果を示したりしている。特に乳児の泣き声分析においては、Azure Cosmos DB、Data Factory、Blob Storageなどマイクロソフトのテクノロジーを多く活用している。

Lesson4 オンプレミスが主流な大学にもクラウド提案の商機あり

 今回の産学連携によるチャットボット開発についてISAOの堀田和也氏は「大学の教育段階において、サービス全体をアーキテクトできる経験や技術は、理系の大学生が社会に出て行くときに大きな財産になると考えています。またプロジェクトそのものは予算が決まっていますが、従量課金形態のクラウドは研究に応じて簡単にクローズできるというのも教育機関で利用するメリットと言えます」と語る。

 半面、教育現場のクラウド活用には課題もあると石原氏は指摘する。「特に国立大学の理系研究室などはスペックの高いスパコンを所有していることをIR的に活用していた過去があるため、学外のクラウドを利用する発想があまりないようです。しかし、スパコンの利用は多くの場合大学の事務局が管理しており、時期や予約状況によって自由には使えないというハードルがあります。その視点から見ると、気軽に自由なタイミングでリソースを活用できるクラウドは、大学研究室への提案にも有効と考えています。当社ではクラウドの黎明期からAzureを始め、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)などのグローバルクラウドから国内クラウドまで運用構築などをサポートしてきました。今後も最先端の知見と技術力で、社会課題を解決していく存在になっていきたいですね」と石原氏は力強く語った。

本日の講師
右から
ISAO クラウドエンジニア 堀田和也 氏
ISAO アカウントマネージャー 菅原 仁 氏
ISAO アカウントマネージャー 石原裕介 氏
ISAO クラウドエンジニア 秋山康平 氏

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