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VRディスプレイ「zSpace」で体験に基づく学びを実現――花園中学高等学校

VRディスプレイ「zSpace」で体験に基づく学びを実現――花園中学高等学校

2019年08月23日更新

VRの“体験”に基づく学びで深い理解を促し
禅の精神を根本に据えたグローバル人材を育成する

EDIXで大きな注目を集めていたVRデバイス。今回の文教ビジネスでは、実際にVRディスプレイ「zSpace」を導入して学びに活用している花園中学高等学校の副校長 中村広記氏に取材し、先端技術の活用によって実現する未来の教育の姿を語ってもらった。

グローバルで活躍できる人材を育成する

 学校法人花園学園が運営する花園中学高等学校は、京都府京都市右京区花園に位置する中高一貫校だ。明治5年に臨済宗妙心寺の宗門子弟の教育機関として創立され、禅の精神を根本に据えた教育に取り組んでいる。禅は既成概念から脱して、独自の発想や自由な発想を生み出すこと、思考を高めて創造的自己を確立することを目的としている。花園中学高等学校は、禅を基本とした教育を実践し、将来国際社会で活躍できる資質と基礎的能力の育成を進めている。

 その育成の取り組みとして、同校では海外大学への進学を目指す「スーパーグローバルZENコース」と、国内の難関大学を目指す「ディスカバリーコース」の二つのカリキュラムを用意している。花園中学高等学校の副校長を務める中村広記氏は「この二つのコースを立ち上げたのは3年前、教育改革への注目が高まっていた頃です。従来の教育から大幅に転換し、6年後の卒業時に生徒たちがどうなっているかではなく、10年後社会に出たときに活躍できる人材を育成したいと考え、これらのコースを用意しました」と振り返る。特にスーパーグローバルZENコースでは、6年後に海外の大学への留学を想定しているため、早朝に座禅に取り組んだり、修行体験を実施したりして、日本人のアイデンティティを確立させるための学びも実施している。

 二つのコースではICT教育にも取り組んでいる。中学校では1人につき1台のiPadの導入に加え、電子黒板機能を搭載したプロジェクターを教室に整備している。高等学校では学習用の端末をiPadからコンバーチブルタイプのChromebookに変更して学びを進めている。Chromebookを選定したポイントとして、導入コストや管理負担の少なさに加え、キーボードが搭載されていることが挙げられた。社会で活躍する人材を育成する上で、キーボードが搭載されてアウトプットがしやすい端末は必須であると考えたためだ。

体験を通して学ぶVR

 前述したデバイスに加えて、スーパーグローバルZENコースでは、マイクロソフトが提供するMRグラス「HoloLens」や、zSpaceが提供するVRディスプレイ「zSpace」を活用した学びにも取り組んでいる。特にzSpaceについては「協働的で深い学びが実現できるツールです」と中村氏は語る。

 同校が導入したのはオールインワンPCタイプの「zSpace AIO Pro」。10台導入しており、授業では複数人が1台を共有して活用している。ヘットマウントディスプレイ型とは異なり、ディスプレイと偏光眼鏡を組み合わせることで、ディスプレイから立体が浮き出るような仕組みになっているため、複数人で同一のVRコンテンツを共有できる。

「zSpaceは米国を中心に、海外の多くの学校現場で導入されているのですが、日本での導入はほぼありません。本校では2018年6月に導入し、授業での本格的な活用を9月からスタートしました。残念ながら日本語版の教材は存在していませんでしたが、本校のスーパーグローバルZENコースでは英語で考える習慣化を目指すため『イマージョン教育』を実施しています。これは、数学や理科などの教科を英語で学ぶ授業です。イマージョン教育とzSpaceを組み合わせれば、学習効果の高い授業が実現できると考えました」と中村氏は振り返る。

 実際の授業の様子はどうだったのだろうか。「生徒たちは非常に楽しんで授業に臨んでいました。ただ楽しいだけではなく、仮説を立て、実際の3Dデータで立体の図形を検証する実験を行うことで、理屈で理解でき、深い気付きや学びにつなげられました」と中村氏。グループで検証を行うことで、協働的な学びも実現できたという。

 花園中学校ではすでにiPadを導入しており、協働的な学びやアクティブラーニングにも取り組んでいた。それらの学びとzSpaceを活用した学びの違いを聞くと「トライ&エラーが体験できることが大きいと思います。例えば理科の授業で体の構造を学ぶ際に、平面で見て学ぶケースと、3Dのデータを見たり触れたりひっくり返したり分解したりという体験を通して学ぶケースでは、後者の方が圧倒的に深い学びになりますし、長期記憶として脳に定着します。コストを抑えながら繰り返し体験ができる教材として、zSpaceは非常によいツールです」と中村氏は答える。

 偏光眼鏡をかければ、同じVRコンテンツを視認できるため、同じものを見ながら意見を交わしやすいのも利点だ。また、zSpaceで表示したVRは、zViewと呼ばれるツールを使うことで、偏光眼鏡を通して見えるコンテンツをプロジェクターやモニターなどに表示できる。そのため、教員が「ここに注目して」などと指示をする場合でも、学級全体に意図が伝わりやすいのだ。

イマージョン教育を中心とした教科学習で活用
VR/zSpace
zSpaceは一つのVRディスプレイに対して複数人でVRコンテンツを視認できる。ペンを活用して浮き上がっている3Dモデルを動かしたり分解したりして、体験に基づいた学びが実現可能だ。

日本語版教材を企業と連携して開発

 大きな教育効果のあるzSpaceだが、活用の足かせとなっているポイントもあると中村氏。「やはり日本語版のソフトウェアがないことが大きいですね。非常に教育効果の高いツールですので、イマージョン教育以外の授業で活用したいと考えています。また、米国の教育に最適化された教材になっているので、日本の教育に適した教材が欲しいですね。そこで本校では、zSpaceの開発パートナーである加藤文明社とともにzSpaceの日本語版ソフトウェアの開発に取り組んでいます」と中村氏は続ける。まずは数学、理科、社会の担当教員が加藤文明社と連携しながら、日本の教育現場に適した教材コンテンツを開発していく。

「小中高の学校現場におけるzSpaceの本格導入は、本校が日本初だったと思います。そのため導入当時は日本での流通が確立されていませんでした。調べていくうちに富士通で取り扱いがあることを知りました。本校で利用しているPCも富士通製が多く富士通製品を取り扱う販売店との取引があったことから、富士通を経由してzSpaceを導入しました。最先端の技術を導入した学びは生徒たちの学習意欲を高め、主体的で深い学びにつながりますが、当然デバイスのサポートも必要になります。その点、地元の販売店が継続的なサポートをしてくれることの安心感は大きいですね」と中村氏。

 世界に伍する真の学びを実現したい――。そう語る中村氏は、グローバル人材育成のためのモデルケースとして、花園中学高等学校の学び確立させ、教育業界へ一石を投じたいと力強く語った。

総合学習の時間で活用
MR/HoloLens
中学校3年生を対象とした総合学習の時間でHoloLensを活用。最先端の機器を用いて、企業から与えられた課題をテーマに研究を進めることで、将来の在り方を予想、想定する力を育む。

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