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バスの運行情報をリアルタイムに知る「BUSit」

バスの運行情報をリアルタイムに知る「BUSit」

2019年08月27日更新

バスの到着時刻をリアルタイムに確認できるシステム“BUSit”

バスが時刻表通りに来ない――。誰しもが一度は経験したことがあるだろう不便を解消できるシステムが広島県から広がりつつある。Android端末とクラウドサーバーを使ったシンプルなIoTシステムだが、得られる利便性は非常に大きい。開発を手がけたタウンクリエーションの前 紅三子氏に話を聞いた。

路線バスの“不便”を解消する

 一般道路を走る路線バスは、手軽で安価な交通手段として地域住民に親しまれている。しかし半面、渋滞が発生してしまい時刻表通りにバス停に到着しなかったり、バスが現在走っている位置情報が分からなかったりすることで、ストレスを感じる利用者も存在する。

 特に広島県では、路線バスを複数の会社が運営している。そのため、県内を走るバスは充実しているように見えるものの、バス会社によって向かう方向や停車するバス停が異なっており、利用者のユーザビリティが高いとは言えない状況にあった。

 そうした路線バスが抱える課題を解決するため、タウンクリエーションが2015年から提供しているのが「BUSit バスイット」(以下、BUSit)だ。同社の代表取締役 前 紅三子氏は「もともとバス会社のシステム部門に所属していたこと、そして自分自身もバスの利用者としてバスを毎日利用していたことから、バスの運行システムには課題を感じていました。無線通信やGPSなどから路線バスの運行情報を収集して定時運行を促すバスロケーションシステム自体は他社から提供されていましたが、バス会社が運行管理のために導入しているケースがほとんどです。利用者、特に交通弱者と呼ばれる高齢者や子供が簡単に使えるシステムが必要だと考えました」と開発の背景を語る。

 そうした考えのもと開発されたのが、リアルタイムにバスの到着情報を確認できるBUSitだ。バス停には、それぞれBUSitのステッカーが貼られている。ステッカーにはNFC(近距離無線通信技術)タグが組み込まれており、スマートフォンでタッチすれば到着情報がスマートフォン画面に表示される。NFC非対応の端末でも利用できるように、ステッカーにはQRコードも印字されている。BUSitのWebサイトでは待ち時間や走行ルートの確認に加え、現在地の位置情報から最寄りのバス停を検索できる。Webサイトに直接アクセスすることもできるため、自宅からでもバスの到着時刻を確認できる。

広島駅のバスターミナルに設置された時刻表にはBUSitのステッカーが貼られている。NFC対応のスマートフォンで丸いステッカーにタッチするか、QRコードを読み込めば当該バスの待ち時間が表示される。同様の内容はバス停上部のデジタルサイネージでも確認可能だ。

ドライバーサポート機能も搭載

 バス運行情報をリアルタイムに取得できる仕組みとして「BUSitバスロケーションシステム」も同社で提供している。前氏が前述していた無線通信やGPSによる運行管理システムと同様の仕組みだが、よりコストを抑えて導入できるよう、BUSitバスロケーションシステムではバスに搭載する車載機にAndroid端末を採用している。「導入するバス会社に応じて、堅牢なAndroid端末や低価格なAndroid端末など要望に応じた端末を提案できるようにしています。通信は格安SIMカードを採用できますし、GPS機能はあらかじめ内蔵されていますので、コストを抑えた運用が可能です」と前氏。

 バスの車載機(Android)の情報はMicrosoft Azure上に構築されたBUSitクラウドサーバーにアップロードされ、バス利用者のスマートフォンから位置情報を閲覧したり、バスの様子をバス会社から閲覧したりできる。サービスリリース当初はAmazon Web Services(AWS)上でBUSitクラウドサーバーを展開していたが、運用の負担や国内データセンターの存在、アクセス集中によるトラブル発生を防止するためにAzureへの移行を行った。また、車載機もドライバーに向けた情報発信端末としても活用したいニーズから、現在はタブレット版も提供している。

 タウンクリエーション エンジニア 藤本匠治氏は「タブレット版ではドライバーサポート機能として、GPSの情報をもとに遅延が分かるだけではなく、早発防止機能を標準で搭載しています。また、間違えやすい場所や迂回運行期間など、簡易ナビ機能を搭載してヒューマンエラーを防止できます。情報は音声によって通知されるので、運転に集中できます」と語る。

 BUSitはすでに広島県の全域で広く活用されている。BUSitの利用ユーザー(バス利用者)も右肩上がりに増加しており、アンケート調査の結果、特に20~30代の女性利用者が多い結果になったという。「他社の運行案内の主要ユーザーは40代の男性が中心で、多くは出張でその土地に立ち寄った利用者です。当社のBUSitはバス停単位で運行案内を表示しているので、通勤や通学で日常的に利用しているユーザーが多いのだと思います」と前氏。

(左)駅のようなバスターミナルがある場所には、それぞれのバスの待ち時間が一覧で表示されるデジタルサイネージが設置されている。
(右)バス会社はBUSitの位置情報から、運行状況をリアルタイムに把握できる。

中国地方から全国への展開を目指す

 2019年6月からは、山口県内のバス路線においてもBUSitの利用がスタートしている。山口県では従来のBUSitの活用に加え、バス会社における運行監視用途でも活用されているという。藤本氏は「例えば予定されている時刻表を赤、実際の走行時刻を青として、走行ルートをもとにグラフを作成すると、どの場所で時刻表と比較して遅れが生じたのか、いつも遅れているのかが分かるようになります。渋滞などによっていつも決まった場所で遅延してしまうようなら次のダイヤ改正で、その遅延を踏まえた時刻表に作り直すなどの運行計画に生かせます」と話す。ダイヤの改正もBUSitの管理画面上で簡単に対応でき、地図上のバス停をクリックして行き、停車時刻を決めていくといった直感的な操作で対応できる。事故などでバス停が使えないといった場合でも、一時的にそのバス停を飛ばして次のバス停に向かうといったルート設定が簡単に行えるのだ。

 もちろんリアルタイムで運行中、回送中、遅延車両、車番を確認したり、遅延情報や走行軌跡を地図上で表示したりといった標準的な機能も備える。

 前氏は「現在広島県、山口県など中国地方を中心に展開しているBUSitですが、やがては全国に広げていきたいですね。まずは山口県から、バスロケーションシステムを導入していないバス会社へ営業を行って普及を進めていきます。また使ったことがないため効果が分からないという自治体やバス会社に対しては実証実験も行い、利便性の高さを実感して導入に進めてもらえたらと思います」と語る。広島県、山口県へのデジタルサイネージ、車載端末(Android端末)、SIMカード(DIS mobile)などの導入はダイワボウ情報システムがサポートしているが、全国への展開にあたっては地場の販売店の協力も必要になると前氏は続け「販売店さまとの連携をいっそう強めていきたいですね」と展望を語った。

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