
ネインとチェンジが開発するヒアラブルデバイス×アプリの組み合わせ
hearable device
ZEENY TWS
働き方を変えるVUI
“VUI完全ワイヤレスで働き方を改革する”をテーマに、ヒアラブルデバイス「ZEENY TWS」の開発に取り組んでいるのがネインだ。ノマドマーカーに適した機能を備えた端末は、柔軟な働き方が求められるこれからのビジネスパーソンにも相性がいいだろう。
アプリでVUIの体験を拡大する
ネインは、LINEやメールの音声読み上げなどに対応したネックバンド型ワイヤレスイヤホン「ZEENY」を提供しており、ZEENY TWSはそのノウハウを踏まえて、ビジネス現場にフォーカスした端末として開発をスタートした。クラウドファンディングで開発資金を募り、2019年6月末には一般販売を予定している。
同社ではもともとApple Watchのアプリ開発を手がけており、そうしたウェアラブルデバイス向けの開発ノウハウを生かして「人のアシスタントをするヒアラブルデバイスを作る」ことを考えたのだという。ネイン 代表取締役 兼 CEO 山本健太郎氏は「スマートフォンが普及した現代は、日常的に画面を見ることで逆に人の生産効率、生活効率を落としています。LINEのメッセージ確認やスケジュールのチェックなど、人生の貴重な時間を取り戻すツールとして、まずはコンシューマー市場にZEENYを提供していました。その中で、ビジネスシーンにおいてスマートフォンの画面を見ずに、音声で情報を取得するツールにニーズがあることが分かり、ZEENY TWSの開発に踏み切りました」と語る。
ZEENY TWSの基本機能は先代モデルであるZEENYと大きくは変わらない。メッセージやアプリの通知を音声で読み上げたり、カレンダーと連携して次の予定を教えてくれたりする。Siri、Googleアシスタント、Alexaなどの音声アシスタントに対応しており、スマートフォンを取り出さずに音声による操作が可能だ。ZEENY TWSは高い遮音性能があるインイヤータイプを採用し、エルゴノミクス形状によって快適な付け心地を実現した。
「メッセージやアプリの通知などは専用の『Zeenyアプリ』で設定して読み上げを行います。このZeenyアプリの機能強化で、ZEENY TWSで提供する機能やユーザー体験をより豊かにしていく予定です」と山本氏。
ネイン 代表取締役 兼 CEO 山本健太郎 氏
ヒアラブルデバイスが“空気を読む”
ターゲットとしているユーザーは、場所を選ばずに仕事をするノマドワーカーだ。集中して仕事をする時間を作り出しつつ、必要な情報を音声で提供できるZEENY TWSは、フレキシブルに働くノマドワーカーをサポートしてくれる。「働き方のスタイルでVUIに求められる機能は変わります。例えば装着したユーザーが発話した内容に反応してほしいというニーズや、情報を一方的に流してほしいというニーズなど、機能の優先度が異なるのです。企業利用の場合は、こうした業務ごとに異なる個別のニーズをヒアリングしながら、業務に適した動作にできるようにカスタマイズしていきたいですね」(山本氏)
すでにプロトタイプのZEENY TWSを活用した実証実験も実施されている。販売パートナーとの連携も検討しており、生産性向上を実現できるデバイスとしてビジネスシーンで提案を進めていきたい考えだ。
山本氏は「現在フォスター電機と共同で、5種類のセンサーを搭載した“XRヒアラブルデバイス”の開発にも取り組んでいます。当社ではXRを、AR/MR/VRの総称と考えており、音声ARや自動選曲などのMR技術など、AR/MR/VRのサービス対応が可能なヒアラブルデバイスとして開発しています。例えば地図を見なくても位置情報をもとに、音声で目的地まで案内してくれたり、健康状況に応じて休憩を促したりしてくれるような、“空気を読む”機能を提供できたらと考えています。スマートフォンを持たなくても、音声アシスタントと一緒に仕事ができる世界を作っていきます」と意気込みを語った。
application
フィールドワーカー向けVUIサービス
現場作業をVUIが効率化する
チェンジは、ヒアラブルデバイスで使用するVUIサービスを開発・提供している。スマートスピーカー向けのアプリ開発を手がけていた同社だが、なぜヒアラブルデバイスをプラットフォームとして選択したのだろうか。
メーカーと共同でVUIアプリを開発
ネインが開発するZEENY TWSを活用し、フィールドワーカー向けVUIサービスの提供を行っているのがチェンジだ。もともとフィールドワーカー向けのiPadアプリ開発に取り組んでいた同社がVUIの市場に参入したのは2年前。スマートスピーカーが市場に登場し始めた頃になる。
チェンジ New Business Creationユニット マネジャー Voice Tech事業リーダー 田中芙優氏は、VUIアプリケーションの開発に取り組み始めた当時を次のように振り返る。「スマートスピーカーを活用した業務支援や業務効率化アプリケーションの開発からスタートしました。しかし、スマートスピーカーのニーズはコンシューマー市場がメインになっており、法人市場で利用するには少なからず制約がありました。また、ビジネスシーンにおいては固定設置のスマートスピーカーは活用の幅が狭いという課題もあります。もちろん現在でもエンタープライズ向けのスマートスピーカーアプリの開発を進めていますが、よりビジネスを便利にするためにヒアラブルデバイス向けサービスに軸足を置いています」
チェンジでは、ネインと共同してアプリを開発している。例えば昨今、工事や建設現場の作業者に対してチャットによる指示を行うケースが増えてきている。しかし、作業をしつつスマートフォンを取り出して作業指示を確認するのは手間がかかる。そこで、ZEENY TWSを活用して、スマートフォンに着信したチャットやメールの内容を音声で再生させることで、逐一スマートフォンを取り出す煩わしさを解消させる。
「ZEENY TWSは音声入力によってチャットに返信することもできますし、メッセージを再生させて聞き流すことも可能です。LINE WORKSと連携しているので、スマートフォンを取り出さなくても管理本部とのやりとりをチャットで対応できるのです」と田中氏。
チェンジ New Business Creationユニット マネジャー Voice Tech事業リーダー 田中芙優 氏
音声入力機能を活用した業務報告の事例も
すでにトライアル導入を実施している企業もある。主にフィールドワーカーと呼ばれる現場作業員がいる業界を中心に、小売業にも展開をしている。ユースケースとして、タクシーやトラックの運転手、小売店の店舗スタッフなど、業務中にスマートフォンの画面を見てやりとりすることが難しい業種にニーズがある。
「特に小売業では、顧客とやりとりをしながら、装着したヒアラブルデバイスでリアルタイムに情報共有が可能です。予約管理システムと連携させて、何月何日にどういう予約があるという通知をヒアラブルデバイスで受けられるようにすれば、それの対応可否までスマートフォンを取り出さずに対応できます」と田中氏。ZEENY TWSではデバイスにボタンが備えられており、タップによって登録された定型文で返信できるため、前述した対応の可否などの返答をワンタップで行えるのだ。
「点検業務における音声入力機能の活用事例もあります。工場などで、検査や点検を行う場合、従来であれば紙やモバイル端末への入力が必要でした。しかし点検作業は両手がふさがるため、一度手を止めて記録する手間が発生します。そこで音声入力で検査内容を記録し、次の作業に移るといった活用をしていました」と田中氏。本事例はネイン以外のメーカーのデバイスを選定し、受託開発で導入した。医療業界でもこうした音声入力のニーズは高いという。
今後も特定メーカーのデバイスにこだわらず、ヒアラブルデバイス向けのアプリケーション開発に注力していく。「業界別にパッケージ化して打ち出していくなど、実際の活用を想定しやすい提案の仕方を進めていきたいですね」と田中氏は語った。
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