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ロボットとの共生社会の実現に向けた神奈川県の実証実験

ロボットとの共生社会の実現に向けた神奈川県の実証実験

2019年05月30日更新

ロボットと共生する社会の実現に向けて
~「かながわロボタウン」での産業ロボット実証実験~

神奈川県では、「さがみロボット産業特区」の取り組みを2013年にスタートさせている。ロボットが社会や生活を支えるパートナーとして活躍する「ロボットと共生する社会」がテーマだ。昨年4月からは生活支援ロボットの実用化・普及を目指す第2期5カ年計画に入っている。行政と企業が一体となってどんな取り組みが行われているのだろう。さがみロボット産業特区グループ長に聞いた。
Text by 古俣慎吾 Shingo Komata

10市2町で「さがみロボット産業特区」を実施

「さがみロボット産業特区」(以下「特区」)は、国の地域活性化総合特別区域制度によって、生活支援ロボット(以下「ロボット」)の実用化や普及を促進し、関連企業の集積を進めるプロジェクトだ。2013年にさがみ縦貫道路沿線の10市2町で第1期5カ年計画がスタートした。

 これまで特区で進められてきた取り組みは、特区のロボット情報発信サイト「ROBOT TOWN SAGAMI」をのぞいてみるとよく分かる。本サイトでは、特区のこれまでと、これから目指す取り組みがまとめられている。

 例えば、2014年に手塚プロダクションと提携して制作されたスペシャルムービーでは「新しいロボットへの挑戦が始まります」と銘打って、鉄腕アトムの七つのチカラが「人のいのちのパートナーとしてさがみで形になる」とうたわれている。

 実際に、10万馬力、サーチライト&カメラ、聴力1,000倍、人工声帯、電子頭脳、人の心を感じる力、空飛ぶジェットエンジンの七つのキーワードのもと、20体近いロボットの商品化を特区が進めてきた。

■商品化されたさがみ産業特区の生活支援ロボット
・歩行アシスト装置……脊髄損傷により起立や歩行ができない人をサポート
・服薬支援クラウドサービス……服薬支援ロボットが高齢者や介護を必要とする人の服薬を管理(遠隔地でも活用可能)
・火山活動対応ドローン/災害救助対応ドローン……人の立ち入りが困難な災害現場で探索・救助活動のための情報収集
・小型水中ドローン……水深300mまで潜行可能。魚礁・定置網の調査や点検、ダムや河川の橋脚等水中インフラの点検、深海域の地形や生態系を調査
・前腕筋電義手……事故で欠損した手や腕の代わりに装着して使用する電動義手
・アクティブロボ……建機の無線遠隔操縦、災害現場や危険な場所の建機の運用
・居室設置型移動式水洗トイレ……室内で移動が可能なベッドサイド設置型の水洗トイレ

第2期のテーマは対象分野の拡大と見える化

 神奈川県産業労働局 産業部 産業振興課 さがみロボット産業特区グループ長 星 孝樹氏はこれまでの取り組みを次のように説明する。

「第1期では、少子高齢化社会を背景として、介護、高齢者の生活支援、災害時の捜索などの負担をロボットによって軽減し、県民生活の安全・安心の確保、福祉社会の活性化を目指し、特区として取り組んできました。そのキーワードは、県民の命を守ることでした。5年間で、実証実験を行ってロボットを商品化していくという流れができました。第2期では、より普及に力を入れたいと考えています。具体的には、ロボットの『対象分野の拡大』を目指し、県民にとってロボットを活用する際のメリットの『見える化』の二つの視点で取り組みを進めていくことになりました」

 こうして、2018年4月から2022年までの第2期が始まった。テーマである「対象分野の拡大」と「見える化」の概要については以下の通り。

■対象分野の拡大
 従来の介護・医療、高齢者への生活支援、災害対応の分野に加えて、農林水産(鳥獣対策)、インフラ・建設、交通・流通、観光、犯罪、テロ対策など

■「見える化」の推進
 ロボットを身近に感じてもらうことを目的とした広報活動(例:鉄腕アトムを特区のイメージキャラクターに採用。特区のWebサイトでも赤地に白のアトムのイメージカラーを基調としており、より特区への関心を引くように工夫しているという。)

「ロボットを世に出していくためには、実証実験が必要になります。介護ロボットは介護施設で試すことが必要なのですが、ロボット開発企業だけでは難しい点もあります。そこで、我々の方で介護施設を調整して実証実験をコーディネートいたしました。ところが、やっと商品化にこぎつけても、なかなか認知していただくことができていない。そもそもどのようなロボットがあるのか、どんなところで使えるのかが見えていない。これらの課題を受け、第2期の取り組みでは県民の方にロボットが活躍する姿を実際に見て、体験していただくという部分に力を入れて事業を展開することとしました」(星氏)

実証実験をロボット開発につなげる

 第2期の取り組みのキーポイントとしては、「ロボットと共生する社会の実現」が挙げられる。そこで、ロボットが社会に溶け込み、命や生活を支えるパートナーとして活躍する様子を見たり、体験できたりするモデル空間を作るために、辻堂駅北口周辺(以下、「プロジェクトエリア」)に「かながわロボタウン」の整備を開始した。

「ロボタウンの取り組みは、プロジェクトエリアでのロボットの実証実験で、実用化されているロボットを実際に体験していただくことです。2018年11月~2019年3月まで実証実験・トライアルを行い、特区の提携企業の中から街中で活躍するロボットを募集することにしました」(星氏)

 2018年5月から募集が行われ、採択されたロボットには実証実験に関する経費の支援や県のホームページでの広報を行った。結果として8台のロボットが採択され、プロジェクトエリア周辺にある病院や商業施設で稼働が始まった。

■かながわロボタウンで採択されたロボット8台
・口の筋肉を鍛える言語トレーニングを支援するロボット(株式会社アシスタンス)
・装着型歩行支援ロボット(AssistMotion株式会社/国立大学法人信州大学繊維学部)
・ベッド見守りシステム(NECネッツエスアイ株式会社)
・巡回監視ロボット セコムロボットX2(セコム株式会社)
・位置情報システム(株式会社デンソー)
・運動やレクリエーションを楽しく支援するロボット(株式会社ラッキーソフト)
・ベッドやトイレへの乗り移りを安全・簡単にする、後ろからスライド移動だけで乗れる移動ロボット(株式会社テムザック)
・移乗介助(装着型)ロボット(湘南ロボケアセンター株式会社)

「本実証実験は3月15日をもって終了しました。使っていただかないと理解されにくい部分もいくつかありました。体験後、一般の方に初めて良さを知っていただいて、ロボット開発企業側も現場の声を聞いて改良点が見つかりました。施設側としては、効果を見てすぐに導入という流れが理想的ですが、それを実現させるのは容易ではありません。違うロボットの試運転や、施設側の意見を聞くことで使い勝手の改良部分も見えてきました。ロボタウンの活動も含めて引き続きトータルでロボット開発、改良に取り組み、新しい時代を作っていくことが特区の課題です」(星氏)

さがみロボット産業特区のWebサイト「ROBOT TOWN SAGAMI」内で閲覧できる「かながわロボタウンマップ」。マップ内の赤い所在地マークをクリックすると、そのエリアで実証実験が行われているロボットとその内容の詳細が確認できる。
※マップは県ホームページより引用。

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