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野菜や果物のおいしさを見える化するアプリ―アクタアメニティ

野菜や果物のおいしさを見える化するアプリ―アクタアメニティ

2019年05月29日更新

野菜や果物の味を可視化する「おいしさの見える化」アプリ

野菜や果物の味が見ただけで分かるアプリ。消費者にとっても理想的なツールだが、これまで見た目の形や色つや、大きさなどを基準に評価されてきた農業の生産構造を大きく変革する可能性を秘めている。アプリを開発したマクタアメニティに話を聞いた。

農業を取り巻く生産流通構造の課題

 日本の農業を取り巻く現状を見てみると、就業人口の減少や高齢化など、課題が多い。そうした人員不足を解消する手段として、農業ICTの普及推進が期待されている。しかし、中にはすでに農業に参入している業者が利益を上げられずに廃業するケースもあり、人員不足の解消に加えて、農業における生産構造の見直しが迫られている。

 マクタアメニティは、福島県伊達市に本社を置く企業だ。有機農業適応資材や有機農産物生産流通情報支援システムなど、農業に特化したシステム開発を行い、効率的で付加価値の高い農産物の生産流通構築を支援している。

 農業が抱える生産流通の課題解決の一環として、同社は画像解析によって、野菜などの「おいしさを見える化」する技術を開発している。スマートフォンで撮影した野菜や果物の画像の色からおいしさをAIで解析して表示する。同社の代表取締役を務める幕田武広氏は開発の背景を次のように語る。

「野菜などの生産流通における課題として、価格設定が需給バランスに大きく左右される点があります。一般的に大きさや形が整った商品が評価される傾向にあり、味や成分などの特性は価格に反映されにくいのが現状です。収穫した野菜や果物に対して味の付加価値を付けることで、味がよいものの価格設定を上げ、総合的な生産流通体制に寄与する品質の評価技術として『おいしさの見える化』の開発を進めました。10年以上前から大学や研究機関と連携した開発を行っています」

光の三原色から“おいしさ”を解析

 おいしさの見える化技術は、スマートフォンで撮影した野菜や果物の画像をAIで解析して、それらの味を判定する。具体的には撮影した画像情報から、野菜や果物を光の三原色に分光してヒストグラム化する。「人の目が実際に感じているのは赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3色のみで、ほかの中間色はこの3色を組み合わせて認識しています。これらの3色をヒストグラムにした際の色の分布などの情報をもとに農産物のおいしさを解析するのが本技術です。品目ごとのアルゴリズムを作成して、プログラミングしたAIでおいしさを判定します」と幕田氏。

 野菜や果物を撮影する際は余計な色が情報として取得されないよう、黒背景の場所で撮影し、反射光や影は自動解析処理で切り取る。画像データはスマートフォンアプリからクラウドに送信され、対象品目に応じて三~五つの味覚の値から「甘い」や「酸っぱい」、「苦い」などのコメントをAIで判定する。これらの情報は、数秒でスマートフォンに返信され、アプリ上にアイコンやチャートなどで分かりやすく表示される。現在16品目に対応し、順次対応品目を拡大させていく。

「味覚を可視化する技術として、果物の味を光センサーで解析する手法(近赤外線糖度測定)はありました。しかし、近赤外線を用いた装置は使用環境に制限があることや、冷蔵庫内などの低温下での使用が難しいという欠点があります。また糖以外の成分を多く含む野菜は、味を糖度だけで表現できません。おいしさを可視化できないのです。おいしさの見える化技術は、おいしさが指標化された品目であればおいしさが判定できますし、なにより導入コストが抑えられます」と幕田氏。

おいしさの見える化アプリでは、野菜や果物をスマホなどで撮影し、その画像情報をクラウドに送信する。送信された画像はクラウド上で解析され、個体情報から味覚を数値化してアプリに返信する。アプリ上では数値をグラフ化し、糖度などを分かりやすく表示する。
※野菜などを撮影する場合、黒背景で撮影する。

農家やスーパーでの活用が進む

 おいしさの見える化技術は2018年4月から実用化され、生産者向けにiOS、Android向けアプリケーションが提供されている。すでに福島や山形などの約20軒の農家が導入し、品質の確認や顧客への測定結果添付など、品質のエビデンスや味の保証として活用しているという。また、福島のスーパーにおいて「産直品」のブランド力向上のため納品チェックで活用されている。

 幕田氏は「国内の大手流通事業者の店舗で実証実験も実施されています。2018年7月に、店頭においしさの見える化アプリをインストールした端末を設置して、来店した消費者が実際に農産物のおいしさをアプリで確かめるという活用を行いました」と語る。活用が進めば食味が価格形成の一要素となり、味の保証や格付けに用いられることで、農業所得の向上につながると期待されている。

 生産者のみならず外食産業や消費者が活用することによる効果も期待されている。農産物はその食味によって適する料理が変わるため、例えばおいしさの見える化アプリの情報をもとに「サラダに向く食材」「加熱調理に向く食材」という判断を下したり、あるいはアプリ上にそれらの情報が表示されたりすれば、外食産業では顧客満足度の向上に活用できるようになる。また、消費者による活用が進めば、家庭での料理に適した農産物の購入に生かせる。現在のところ生産者向けのアプリのみを配信しているが、今後は消費者向けのアプリ提供も進めていきたい考えだ。

「おいしさの見える化技術の構築は、経済産業省の『異分野連携新事業分野開拓計画』認定事業および、商業・サービス競争力強化連携支援事業に採択されるなど産学官連携で開発を進めています。またSociety 5.0の事例としても注目されており、財務省の全国財務局長会議でおいしさの見える化技術が報告されるなど注目も集めています。今後は消費者へのアプリ提供を始め、冷蔵庫など家電を開発するメーカーへAPI情報を提供するなど、各業種との連携や、海外への展開も進めていきたいですね」と幕田氏は展望を語った。

国内の大手流通事業者が2018年7月に実施した店舗実証実験の様子。店頭においしさの見える化アプリをインストールした端末を設置し、消費者が野菜(トマト)のおいしさを調べられるようにしている。

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