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文部科学省と総務省の連携事業が学びの基盤を整備する

文部科学省と総務省の連携事業が学びの基盤を整備する

2019年05月15日更新

文部科学省と総務省が連携して実証を進める
次世代の学校に求められるシステム基盤

2019年3月1日に文部科学省「次世代学校支援モデル構築事業」および総務省「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」の合同委員会兼成果報告会が開催された。これら二つの事業は文部科学省と総務省の連携プロジェクトだ。児童生徒が学習用コンピューターなどに記録した学習履歴などと、教員が校務事務で入力したデータなどを連携・活用して学びを可視化することを通じて、教員による学習指導や生徒指導などの質の向上を図ることを目的とした実証研究だ。文部科学省は学校におけるデータ活用方策などを検証し、総務省は情報セキュリティを確保することを前提としたシステム要件などの技術的な課題について検証するものであり、今年で2年目の事業となる。


次世代学校支援モデル構築事業
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スマートスクール・プラットフォーム実証事業
成果報告会リポート


■文部科学省

「次世代学校支援モデル構築事業」
 2018年度の本事業では、学校現場において校務系・学習系データを連携・活用する実践を進め、効果を高めるノウハウの蓄積を行った。

 背景として、学校の中で校務支援システムや授業・学習系システムの活用が進行し、さまざまなデータが大量に蓄積されているが、それらは有効に活用されていないという課題がある。例えば校務系データであれば学籍情報や出欠情報、日常所見情報、テスト結果、授業・学習系データではデジタルドリルの学習履歴、授業支援システムの学習履歴などが蓄積されている。

 それらさまざまなシステムのデータを、児童生徒のIDや学級IDをもとに連携させて再構築することで、個に応じた対応・指導が可能になる。例えばつまづきの早期発見に生かしたり、教科・学年・校種をまたいだ連続性のある指導への活用が見込める。実証地域の成果報告を2件紹介する。

[新地町教育委員会]
 校務系システムと授業・学習系システムで、ともにパブリッククラウドを採用。それぞれ別のサービスを採用してデータ連携し、児童生徒の学習状況や教員の指導状況を授業・学習系システムで表示して瞬時に把握できるようにした。児童の交流データをもとに意図的なグループ編成を実施することで、よりよい対話を生み出す共同性を高めたり、対話の活性化につなげた。

[渋谷区教育委員会]
 渋谷区では校務系システムをプライベートクラウド上に、学習系システムをパブリッククラウド上で構築し、それらをスマートスクール・プラットフォーム上でデータ連携、分析・可視化を行った。実証では生活習慣に関するアンケートの実施や、出欠情報やタブレット利用状況などのデータをもとに、子供に応じた声かけや見守りを行うなどした。

 本事業による実践や成果から、データの連携による児童生徒の変容をいち早く教員がキャッチできるというメリットが明らかになった。しかしデータだけでなく、それらに基づいた働きかけによって子供たちがどう変わっていくのかというエピソードの蓄積も重要になる。

■総務省

「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」
 2018年度の本事業では、スマートスクール・プラットフォームの標準化を目指し、標準化仕様の素案や、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」への提言、個人情報保護に関する確認ポイントの整理(骨子案)などを進めた。

 スマートスクール・プラットフォームの標準化において、課題となるのがセキュリティの問題だ。学校現場では従来、校務系と学習系のシステムはセグメントを分けるようガイドラインで定められていた。データ連携によって双方のデータをつなげることで児童生徒が校務データにアクセスできてしまう可能性もある。アクセス制限やログインをよりセキュアに行っていくことが重要になる。

 また検討課題として、校務系システムはインターネットから分離させることで不正アクセス対策やウイルス対策を行っているが、ネットワーク分離で本当にセキュリティが担保できるのか、パブリッククラウドなどの外部サービスを利用する際にどこまでセキュリティを担保したらいいのかといった課題もある。今回の報告の中で、総務省から文部科学省に対してガイドラインの見直しを提言する方針も語られた。

 上記に加えて、「次世代学校ICT環境」の整備に向けた実証も総務省単独の事業として進められた。本実証では総務省が2014年度から2016年度にかけて行っていた「教育クラウド・プラットフォーム」に関する実証で取りまとめられた参考仕様もベースに、授業・学習系システムと校務系システムを連携させた「スマートスクール・プラットフォーム」を学校現場において円滑に活用するための基盤となる次世代ICT環境整備基盤の在り方を整理することを目的にしている。ネットワーク円滑化モデルに3地域、コスト軽減モデルとして4地域、先端技術(EdTech)モデルとして4地域が実証地域として選ばれた。利用された技術やツールは以下の通り。

●ネットワーク円滑化モデル
・教職員向けシンクライアント環境
・分離ネットワーク間のデータ連携
・Wi-FiとLTE回線の併用
・無線LANアクセスポイント
・デジタル教材利用支援

●コスト軽減モデル
・教職員向けシンクライアント環境
・eラーニング活用
・無線LANアクセスポイントの集中管理
・Wi-FiとLTE回線の併用
・情報端末(Chromebookなど)

●先端技術(EdTech)モデル
・ブロックチェーン
・授業でのAI活用(英会話、プログラミング教育)
・教員支援でのAI活用(生徒発言の文字化、要約)

 各実証地域の成果発表をもとに講評で触れられたポイントの一つに、Wi-FiとLTEの併用がある。一度に40台程度の端末が無線LANアクセスポイントに接続する学校環境ではネットワークにいかに円滑に接続するかが課題となっており、LTE回線を併用することでそれらの負荷分散が実現できたようだ。

 先端技術の活用ではセキュリティ対策の一つにブロックチェーンの利用などが挙げられたが、「手段の目的化が進んでいるように感じる、技術は目的とはなり得ない」と苦言が呈された。本事業は2019年度も継続されるが、「技術ばかりに寄らないような実証を期待したい」と講評された。

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