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比叡山高等学校が実践する生徒が主体の学びとは

比叡山高等学校が実践する生徒が主体の学びとは

2019年04月22日更新

段階的かつ効率的なタブレット活用で
生徒の自発性・主体性を育む学びを実践

比叡山高等学校は、世界遺産「延暦寺」の比叡山山麓の高台に位置する私立の高等学校だ。「天台宗総黌」を母体とする学校法人延暦寺学園が運営している。同校で2017年度からスタートしたのが、1人1台のiPadを活用した学びだ。

学習者主体の授業スタイルへ転換

 比叡山高等学校が2017年度からスタートしたICT教育。まずは同年度入学の1年生を対象に1人1台のタブレット(iPad)を購入して学びに生かしている。2019年度からは活用3年目に突入する。

 同校のICT教育を推進している同校のICT推進委員会 ICT推進委員長 川端範之氏は「きっかけはとある勉強会に出席した際に、実際にタブレットを活用した学びを進めている学校の様子を見たことです。タブレットが配布され、箱を開けて輝く生徒たちの表情が非常に印象的でした。また、2020年度に大学入試制度が変わることも、タブレット導入を後押ししました」と語る。

 2020年度から始まる新たな大学入試制度では、一部科目で記述式問題の出題や、英語が4技能評価になるなど、既存の入試とは大きな変化がある。また、調査書の重視なども盛り込まれており、その調査書のベースとなるeポートフォリオの活用も各学校で進められている。そうした中で同校がまず目指したのは、「学習者が主体・中心となる授業を実施する」ことであり、そのツールとしてiPad(2017年度当時はiPad Air 2)を選択した。

「2016年度からタブレットを活用した授業研究をスタートしましたが、最初の半年の授業研究は教務主任と私の2名で進めていました。本格的に導入を進めて行くにあたり発足されたのが『ICT推進委員会』です。教員に対して月に1回研修を企画するなど、円滑なICT活用をサポートしています」と川端氏。

 同校では、全校共通のアプリケーションとして学校向けコミュニケーションプラットフォーム「CYBER CAMPUS」と、タブレット向け授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」(以下、MetaMoJi)を採用した。またMDMツールとして「MobiConnect for Education」(以下、MobiConnect)を導入し、端末管理やアプリケーション配信に活用している。

グループで話し合った内容をタブレットに書き込むと、教員はその内容をMetaMoJiで確認できる。
まとめた内容はプロジェクターで投映して発表し、学級全体の学びを深める。

海外旅行プラン作成から英語を学ぶ

 川端氏は「授業で中心的に活用しているのはMetaMoJiです。既存のプリント配付の代わりにMetaMoJiで資料を配付することはもちろん、家庭学習として英語の発音音声をタブレットで録音し、それを自己評価する活動や、提出された録音データを教員が採点する学びも実践しています。また、タブレットがなければ場所や時間の関係で実現が難しかった学びにも活用されています」と語る。

 例えば英語表現の授業において、海外旅行で使う英会話文を生徒に作成させる場合、従来は英会話文を記述するだけで終わってしまっていた。「そこで、iPadを活用してまず海外旅行の計画を立ててもらいました。飛行機は実際にその時間に発つ便があるのか、観光地を巡る際にその移動時間で移動できるのか、観光地の入場料はどれくらいか、など実際に旅行に行くつもりで調べさせてプランを立ててもらいます。そしてこの旅を実際に完遂するにはどのような英会話が必要なのか、という視点から英文を作成してもらっています」と川端氏は語る。実際に立てたプランはiOS標準アプリケーション「Keynote」でスライド資料を作成させ発表活動を行った。

 川端氏は授業を振り返り「自分で計画を立てて英語で書き、自分自身がその場所を選んだ理由なども英語で発表してもらいました。自分自身で考えて必要な英会話文を作るため、自発的・主体的に学びに取り組んでいましたね」と語る。

 生徒たちの主体的な活用の姿勢は、学習活動以外にも広がっている。例えば同校では、前述した通りMobiConnectで端末管理を実施している。授業で使用したいアプリケーションは、目的に応じて管理職が導入判断を下してMobiConnect経由でインストールするケースもある。しかし生徒たちが自主学習で使いたいアプリケーションなどは、そのフローではインストールができない。

 そこで各学級のICT委員に選定された生徒を経由して、生徒自身がiPadにインストールしたいアプリケーションを直接校長にプレゼンテーションする「アプリコンペ」という取り組みを始めた。「2017年度は6組ほどがアプリコンペでプレゼンテーションしました。2019年度からは全学年がiPadを所持できるため、必要な伝達事項はiPadで行うようにするなど、さまざまなアイデアも生まれています」(川端氏)

直感的に扱えるiPadとMetaMoJiの組み合わせであれば、既存のプリントに書き込むように問いに回答でき、共有もしやすい。
それぞれが意見を交わしながら、調べてまとめることで理解が深まる。

学校現場のニーズを捉えた提案が重要に

 2019年度は全校生徒がiPadを所持するようになる比叡山高等学校。今後のICT教育については、現在実施しているiPadの活用を継続的に進めつつ、段階的に拡大していく方針だ。

 一方、こうした教育現場で活用するICTツール、機器を提供するベンダーや販売店に対して「もちろん非常によいツールを提供されている企業もあります。しかし、企業で利用するツールと学校現場で利用するツールは、使用条件が異なるためトラブルが発生するケースもありました。特に無線LANなどは、通常企業では考えられない多台数の端末が同時にアクセスポイントにつながるため、遅延が発生しがちです。しかし、学校では生徒たちに教えるべきカリキュラムがあるため、機器トラブルで授業がストップすることは当然避ける必要があります」と川端氏は語る。

 そうした学校現場が抱える固有の問題を解決するためには「ぜひ一度、学校に足を運んでほしいですね。どういったニーズがあるのか、市場調査をするメーカーも多いと思いますが、その一つとして学校に来てもらい、そこにある課題を解決する製品を開発、提案してもらえたら」と川端氏は語った。特に企業向けに提案していた製品を、文教向けにも提案するようなケースは注意が必要で、必ず学校の教育シーンで円滑に動作することを検証する、あるいは文教向けにカスタマイズ、新規に開発する必要がありそうだ。実際に教員から課題をヒアリングすることも重要になるだろう。

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