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IDC Japan 飯坂アナリストがAI as a Service市場を解説

IDC Japan 飯坂アナリストがAI as a Service市場を解説

2019年04月04日更新

Everything as a Service
クラウドとIoT、AIを核にビジネスはサービス化される

ものからことへ、ハードウェア主体からソフトウェア主体へ、そして所有から利用、買い切り型からサブスクリプション型へ―。これらを体現する“as a Service”は、現在の企業が求めるシステム、つまり迅速、柔軟、拡張性に富んだシステムを構築する上で必須の要件となりつつある。いわゆるデジタルトランスフォーメーションの過程において、as a Serviceの利用はますます拡大していく。

“変化”への対応

Everything as a Service

 SaaS、PaaS、IaaSなどのサービスが提供されて以来、さまざまなものの“as a Service”化が進行している。

 例えば、最近の大きなトピックとしては、「MaaS(Mobility as a Service)」がある。MaaSは、移動そのものや移動手段を一つのサービスとして捉える概念だ。カーシェアリングやライドシェアリングにはじまり、車やバス、鉄道などをシームレスにつないで最適な移動手段を提供するサービスの概念にまで広がる。スマートフォンにインストールしたアプリケーションで目的地までの最適な移動手段の検索から決済までが一括で行え、さらに、目的地付近の商業施設、観光情報や宿泊施設の予約など、さまざまな付随サービスが連携して受けられるようになるイメージだろう。

 実際、トヨタ自動車とソフトバンクの戦略提携によって生まれたMaaS企業 MONET Technologiesは、以下のような事業目的を掲げている。「MONETは、トヨタが構築したコネクティッドカーの情報基盤である『モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)』と、スマートフォンやセンサーデバイスなどからのデータを収集・分析して新しい価値を生み出すソフトバンクの『IoTプラットフォーム』を連携させ、車や人の移動などに関するさまざまなデータを活用することによって、需要と供給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする未来のMaaS事業を開始する」

 MaaSは、従来の移動・交通に大きな変化を与えるものとして、昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」の中でも、自動運転とともに次世代モビリティシステムの軸になると位置付けられている。

 注目を集めるMaaSの核となるのは、スマートフォンなどのエンドポイントデバイスやセンサーなどから収集できる情報と、それらを分析する基盤だ。“需要と供給の最適化”と表現されているが、従来バラバラに存在していた人と車などの情報を集約・統合することで、最適な交通手段をサービスとして提供する。それによって、従来の無駄をなくし、より効率的な交通網を実現する。そうした世界が、移動手段のサービス化によって実現するのだ。そのシステム基盤として、IoT、クラウド、そして今後データ分析の主役となるAIが用いられることになる。

柔軟性、俊敏性、拡張性を備える

 MaaSに限らず、現在はさまざまなas a Serviceが生み出されている。

「AI as a Service」
「Backup as a Service」
「Collaboration as a Service」
「Device as a Service」
「Function as a Service」
「Network as a Service」
「Ransomware as a Service」
「Windows as a Service」
……

 従来、買い切り、自社設置・自社サーバーへのインストール型として利用していたハードウェアやソフトウェアのサービス化の肝は、所有から利用、買い切り型からサブスクリプション型への移行であり、システムの運用管理からの解放、常時最新の機能や性能が利用できるメリット、受給に合わせたオンデマンドのサービス利用の実現などがある。

 これらのメリットは、企業が強いられている変化への対応の必須要素だ。いわゆるデジタルトランスフォーメーションが進められている背景下において、企業には、柔軟性、俊敏性、そして拡張性を備えたシステム環境の構築が求められている。こうした中で、まさに柔軟性、俊敏性、拡張性を体現するas a Serviceの各サービスは、現在、そしてこれからの企業システムに欠かせない存在となっていくのだ。

AIのパーベイシブ化が進展

AI as a Service

ビジネスサービスとITサービス

 日々生み出されている膨大なデータの分析と判断に、AIの活用が欠かせなくなってきている。サービスの高度化による顧客満足度の向上から社内業務における新たな視点の示唆によるアイデア創出のサポートまで、企業にとっては事業のさまざまな側面でAIの恩恵を受ける機会が増加中だ。そのAIの利用形態として、サービスというカテゴリーも成長していく。

 IDC Japanが昨年に発表した国内コグニティブ/AIシステム市場予測では、2017年~2022年の年間平均成長率を60.7%、2022年の市場規模を2,947億5,400万円と発表している。IDCでは、コグニティブ/AIシステム市場を次のように定義する。「自然言語処理と言語解析を使用して質問に応答し、機械学習をベースとしたレコメンデーションとディレクションの提供で、人間の意思決定を補助/拡張する技術」

 同市場予測は、ハードウェア、ソフトウェア、サービスで分類されている。サービスの構成要素について、IDC Japan ソフトウエア&セキュリティ リサーチマネージャー 飯坂暢子氏は次のように説明する。「AIシステムのサービス市場は、ビジネスサービスとITサービスの二つに分けられ、そのサービス内にサブスクリプション形式(as a Service)で提供されるものも一部含まれています。ビジネスサービスは、コグニティブ/AIソフトウェアおよびハードウェアに関連するビジネスコンサルティングおよび汎用ビジネスプロセスアウトソーシングであり、ITサービスは、具体的なシステムへの適用から、導入後の継続的なシステムの保守や従業員への教育、そして最も重要なIT戦略を作成するコンサルティングサービスを提供します。AIは完成されたシステムではありません。学習データが増加するほど、分析の精度が上がります。そのため、継続的なメンテナンスも必要になるのです」

 同社はAIサービス市場の2017年~2022年の年間平均成長率を55.4%と予測している。「サービス市場は、ハードウェア市場と比べて、成長率が高いですね」(飯坂氏)

新しいビジネスや顧客体験を創出

 AIは、システムの単なるデジタル化のためのものではなく、デジタルトランスフォーメーションを実現させるための要素であると飯坂氏は指摘する。「AIは、企業の競争優位性を高めるためのテクノロジーです。新しいビジネスや顧客体験を創出するために導入すべきですね。もちろんAIを用いた業務の自動化は重要ですが、コスト削減の成果だけではなく、いかに顧客にインパクトがもたらせる成果を出せるのかを考えていくべきでしょう。顧客体験の創出にAIを活用する代表的な事例は、海外だとGoogle、Amazon、Facebook、Appleなどです」

 国内でもPoC(概念実証)から実システムへの適用やソフトウェアへのAI機能の組み込みが進んでいるため、市場規模の大幅な拡大が予測されている。すでに画像認識を利用した顔認証や製造ラインにおける不良品検知などのシステムは大手ベンダーによる拡販が進展している。これからは音声認識を活用したスマートスピーカーの業務への採用も加速していくだろう。特に翻訳システムへの適用はすでに自治体などで積極的に取り組まれている。ホテルなどの観光業でも採用が進む。「音声の直感的なレスポンスのメリットを業務に生かすために、システムへの組み込みが始まっています」(飯坂氏)

 スタートアップ企業もAIを利用したサービスの提供を続々と開始している。「例えば、従業員の会話や表情を読み取るAIサービスがあります。従業員の感情を推測し、従業員の満足度を向上させる施策に利用できるのです。労働力不足に加えて、若年層の離職率が高まっている現在、こうしたAIサービスの利用は増えていくでしょう」(飯坂氏)

 AIを活用したサービスの導入は、企業自身によるAIシステムの構築というハードルを取り払えるため、AIの入口のような位置付けとなる。「ただし、提供されるのはある程度標準化されたサービスとなるので、他社との差異化を行うためには、クラウドで提供されるAIプラットフォームなどの活用や、オンプレミスでの導入という選択肢も増えていくはずです」(飯坂氏)

IDC Japan 飯坂暢子 氏
「AIサービスの積極的な実ビジネスへの採用がさらなるAI活用のきっかけになるのです」

AIシステムの実ビジネス適用を支援

 AIについてIDC Japanは、「パーベイシブ化(浸透)」が進むと予測している。「認知度や利用度は上がってきていますが、まだ利用目的がはっきりしていない面もあります。とはいえ、速やかにAI活用を実践していかなければ、競争に遅れを喫してしまいます。その際に、ハードウェアやソフトウェアを使って企業自身がAIのシステムを構築していくのは、大きな足かせになります。そうした中で、as a Serviceとしての提供も含むAIサービスの選択肢は重要になるでしょう。AIサービスの積極的な実ビジネスへの採用が、さらなるAI活用のきっかけになるのです」(飯坂氏)

 そもそもIDCは、デジタルトランスフォーメーションを導く第3のプラットフォームにおいて、革新を導く“イノベーションアクセラレーター”の一つとしてAIを位置付けている。つまり、AIの活用はデジタルトランスフォーメーションに必須の要件となる。飯坂氏は、「AIに取り組み始めている企業とそうでない企業の差は今後激しくなる一方でしょう。特に、現在のIT市場では人材不足が全般で生じています。そのため、後発組がAIに取り組もうとしても、必要な人材を確保できない可能性が少なくありません。迅速に取り掛かるべきですね」と警鐘を鳴らす。

 ベンダーやSIerに対してIDC Japanは、ユーザー企業におけるAIシステムの実ビジネス適用を進めるためのアプリケーションソフトウェアへのAI機能の組み込みや、AIシステムの運用支援サービスの強化などを行うべきであると提言している。

 ユーザーがAIを使いやすくするサービスの開発・提供や取り組みが、サプライヤー側には求められていくようだ。

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