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Society 5.0に向けた人材育成にICTをどう生かす

Society 5.0に向けた人材育成にICTをどう生かす

2019年03月14日更新

次世代人材の育成や外国人児童生徒の学びに広がるICT活用

教育ICT関連予算

文部科学省が担う事業は多岐にわたり、情報教育以外の分野でもICTを活用した学びは広がっている。本項では、特に注目が集まるSociety 5.0に向けた人材育成に関わる事業やデジタル教科書関連事業、そして外国人に対する日本語教育などから、文部科学省2019年度予算を見ていこう。

Society 5.0に向けた人材育成に
新たに四つの新規事業がスタート

 先端技術導入実証研究事業で触れた通り、文部科学省ではSociety 5.0に向けた人材育成についての方向性をとりまとめている。そのSociety 5.0に関わる予算項目が「Society 5.0に向けた人材育成」だ。前述した新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業を含めた四つの新規事業になる。

 まず、先端技術の活用においては、幼児教育分野での実証研究も行われる。「先端技術を活用した幼児教育分野の実証研究」として新規に2,200万円の予算が計上され、大学などにおいて委託事業として実施される。園内環境や幼児行動、教員の働きかけなどを先端技術を活用して総合的・多角的に捕捉・可視化し、幼児の豊かな行動を引き出す環境の構築や教師による適切な指導を支援するための実証研究を実施していく。なお本事業は、予算編成の過程で「幼児教育の教育課題に対応した指導方法等充実調査研究」(2019年度予算4,100万円)の中の一事業として実施することになった。

 次に、「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」に1億1,300万円が新規に計上された。2019年度の取り組みとして、Society 5.0において共通して求められる三つの力を基盤として、将来新たな社会を牽引し、世界で活躍できるビジョンや資質・能力などを有したイノベーティブなグローバル人材を育成するために、高等学校と国内外の大学、企業、国際機関などが協働し、テーマを通じた高校生国際会議の開催といった、高校生への高度な学びを提供する仕組み「アドバンスド・ラーニング・ネットワーク」(ALネットワーク)を形成した拠点校の全国配置を目指す。本取り組みはスーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の実績も活用し、将来的にWWLコンソーシアム構築へのつなげていく。

 WWLコンソーシアムは、高度かつ多様な科目内容を、生徒個人の興味・関心・特性に応じて履修可能とする高校生の学習プログラムの開発と実践を担うものとして想定されている。将来的には、高校生6万人あたり1か所を目安に、各都道府県で国立、公立および私立の高等学校などを拠点校として整備し、全ての高校生が選抜を経てオンライン・オフラインで参加できる仕組みを目指している。

 新高等学校指導要領を踏まえ、Society 5.0を地域から厚く支える人材の育成に向けた教育改革を推進していくため、新規事業として「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」に2億5,100万円が割り当てられた。地域創生を推進する観点から、高等学校と地域とが協働で地域の課題をもとに探求的な学び、主体的・対話的で深い学びを実現し、地域を支える人材育成を目指していく。

特別支援教育の充実に向けて
教科書デジタルデータを活用する

 次に、デジタル教科書にまつわる事業について二つ紹介する。

 一つ目は情報教育に関わる事業で、「デジタル教科書の効果・影響等に関する実証事業」として1,600万円(昨年度比200万円減)を計上している。2018年度中に学習者用デジタル教科書を制度化する「学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律第39号)」等関係法令が公布され、2019年度から必要に応じて学習者用デジタル教科書を使用できるようになったこと。また2018年度から「デジタル教科書の制度化に関する検討」事業を行い、2018年12月に学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドラインを策定・公表していること。2019年3月には実践事例集を策定・公表予定であることの三つを踏まえ、本実証事業では、学習者用デジタル教科書の使用により教育上の効果・影響を把握検証していく方針だ。

 また、特別支援教育の充実においても「教科書デジタルデータを活用した拡大教科書、音声教材等普及促進プロジェクト」に2億1,000万円(昨年度比6,400万円増)が割り当てられている。本事業では、発達障害や視覚障害等のある児童生徒が十分な教育を受けられる環境を整備するため、デイジー教材※などの教科書デジタルデータを活用した音声教材などに関する効率的な製作方法や、教材の実践的な調査研究を実施する。前年度から予算が増額した背景には、2020年度から実施される小学校の新学習指導要領に対応した教科用特定図書(音声教材など)のさらなる効率的な作成に必要な経費を計上したことが挙げられた。
※テキスト、画像に音声をシンクロさせて読みなどの学習動作を補助する教材

外国人児童生徒の学びに
多言語翻訳システムを生かす

 外国人児童生徒に対する教育に対しても、ICTに関連した予算が割り当てられている。深刻な人手不足による外国人受け入れ拡大に向け、外国人が日本社会の一員として円滑に生活できる環境を整備することが求められており、その一つとして、日本語教育や外国人児童生徒などに向けた教育の充実を図っていく。

 特に学校教育現場においては、「外国人児童生徒等への教育の充実」として5億4,900万円(昨年度比2億8,400万円増)が計上されている。本事業では、協働社会の実現に向けて、日本語指導が必要な児童生徒について学校における日本語指導体制の充実や、多言語翻訳システムなどICTの活用促進などを行うとともに、多様な取り組みを通じた支援によって外国人の子供に対して漏れのない教育支援の提供を図っていく。このうち新規事業として、「多言語翻訳支援システム等ICTを活用した帰国・外国人児童生徒等のための支援事業」として2,000万円が割り当てられた。本事業で示されている多言語翻訳支援システムとは、話者の言葉を日本語、あるいは任意の外国語に翻訳できるアプリケーションや翻訳機を指している。現在一部地域で実証事業を行っており、2019年度予算は主に翻訳支援システム(アプリケーション)の初期導入費や月々の使用料などに対する補助金として利用できるようにしていく予定だ。

 2019年度の文部科学省予算を全体的に俯瞰すると、情報教育以外にも、Society 5.0に対応する人材育成から外国人児童生徒への対応に至るまで、幅広い事業でICT技術の活用を推進していることが分かる。2020年度からスタートする「大学入試共通テスト」の準備事業においても、大学入試共通テストの中で「情報Ⅰ」にCBTを活用した試験を実施する方針で、2019年度はそのモデル問題の作成やシステム開発、実証実験を行っていくなど、入試形式にも新たなICT活用の可能性がある。新時代の学びを実現する上で不可欠なICT環境整備は、今後は小学校のみならず高等学校、大学にまで求められていきそうだ。

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