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普通の眼鏡をスマートグラスに変える機構「neoplug」

普通の眼鏡をスマートグラスに変える機構「neoplug」

2019年03月27日更新

スマートグラスの共通プラットフォーム「neoplug」

現実の空間に仮想空間を重ね合わせるAR(Augmented Reality)。スマートフォンのカメラ機能を活用してコンテンツを現実に重ね合わせたり、スマートグラスを活用して、装着者が実際に見ている風景にコンテンツを重ね合わせたりするようなAR の活用が広がりを見せている。すでに製造業の分野では業務での活用も進んでいるようだ。しかし、既存のデバイスメーカーが開発したスマートグラスは装着感があまりよくないため、常時装着には向かないという弱みがあった。そうした装着者側からの不満を解消するのが、「neoplug」(ネオプラグ)という眼鏡フレームだ。

スマートグラス装着感の課題

 neoplugを開発しているのは、福井県鯖江市に本社を構えるボストンクラブという眼鏡メーカーだ。鯖江市は眼鏡フレーム全国シェアの95%を生産していると言われる“めがねのまち”。ボストンクラブでは、その鯖江市の生産技術と、同社が大手アパレルメーカーや眼鏡商社のODMで培ってきた経験を生かし、複数のオリジナルブランドを展開している。かけ心地はもちろん、ファッションとしての追求や新しい技術革新など、眼鏡の深い研究を重ね、日本の良さを体感できる商品開発を行っているという。

 そんなボストンクラブがスマートグラスの開発に関わるようになったきっかけは2012年に遡る。もともとは同社の眼鏡製造の技術に着目した大手IT企業から、スマートグラスの眼鏡の部分の開発を依頼された。その後さまざまなデバイスメーカーのウェアラブルデバイス対応眼鏡を企画・デザインしていくうち、デバイスメーカーが抱えるスマートグラスへの課題を知るようになったのだ。

 ボストンクラブ 代表取締役 小松原一身氏は「眼鏡は顔に装着する、いわゆるアイウェアです。そのため装着感やデザインなど、既存のスマートグラスではユーザーから不満が生じがちな部分も出てきていました。例えば装着して重い、うまくフィットしないといった課題です。そうした課題を解消するために当社が提案しているのが、ウェアラブルデバイスの容易な着脱や交換を可能にする眼鏡フレームであるneoplugです」と語る。2016年にはウェアラブルEXPOで発表し、大きな注目を集めた。

眼鏡とデバイスを自由に選択

 neoplugの眼鏡は、一見して普通の眼鏡と大きな違いがない。しかし眼鏡のテンプル(つる)の部分がやや太めに設計されており、ここにneoplugに対応したデバイスを装着する仕組みになっている。neoplugは、このテンプルの太さや厚みといった形状を統一した機構として採用している。テンプルの規格を統一することで、眼鏡フレームは眼鏡メーカーが、ウェアラブルデバイスはデバイスメーカーがそれぞれ開発し、眼鏡フレームとウェアラブルデバイスをそれぞれ自由に選択できるようになる共通のプラットフォームなのだ。

 neoplugに対応したウェアラブルデバイスも複数登場している。ヘッドマウントディスプレイ端末としては、Vufine「Vufine+」、ウエストユニティス「picoLinker」、テレパシージャパン「Telepathy Walker」などが対応している。いずれもneoplugの眼鏡に装着できるアタッチメントを用意しており、眼鏡に簡単に取り付けられる仕組みだ。

 また、リトルソフトウェアでは生体データとディープラーニングを組み合わせて人の感性を可視化する仕組みを開発しており、その脳波計として、neoplugを活用した眼鏡型脳波センシングデバイスの開発を進めている。ほかにも小型ライトやカメラといった、機能を絞った単機能なデバイスもneoplugに対応しているケースがある。

 neoplugを活用した実証実験も進められている。川で釣りをするために必要となる「遊漁券」を24時間アプリで購入できる仕組みを開発したフィッシュパスと協働で、ウェアラブルデバイスを活用して釣り客に情報を提供する仕組みの構築を目指している。フィッシュパスでは前述したアプリを活用し、釣り客に対して河川の水位に関する情報発信や、アプリの情報を生かして無券者が釣りをしていないかなど監視業務を効率化させていた。しかし、既存のシステムではタブレットやスマートフォンを見ながら河川監視を行う必要があり、足場の悪い河川監視で両手が塞がってしまうと転倒の危険性があった。

画像はneoplugのファーストモデル「np-001」を装着した小松原氏。一見普通の眼鏡に見えるが、テンプルの赤く囲った箇所がneoplugの規格に対応した形状になっており、下画像のウェアラブルデバイスを装着できる。使いたいときに着脱できる仕組みのため、利用者のプライバシーも守られる。

川釣りにスマートグラスを活用

 実証実験では監視スタッフにneoplugを装着してもらい、従来タブレットで行ってきた情報をARで表示している。また釣り客にもneoplugの貸し出しを行い、釣りをしながらでも河川の増水状況などの情報を確認する環境を整えた。実際に使用したユーザーからは「表示窓を跳ね上げられる機能があるといい」といった要望も出てきたという。

 すでに世界中からneoplugの問い合わせがあるという小松原氏。「今後は2025年の大阪万博など、訪日外国人のますますの増加が予想されるため、neoplugでそうした訪日外国人への翻訳対応や、顔認証機能を利用したセキュリティ強化など、幅広い活用を見込んでいます。また、日常生活の例を挙げると、高齢者の6~7割は眼鏡をかけていますが、その眼鏡をneoplug対応にしてGPSを埋め込むことで、認知症患者が徘徊してしまっても場所を特定できるような仕組みも考えられます」と可能性を語る。

 スマートグラスが普及した未来の社会については、「前述したように、眼鏡は顔に装着するものです。だからこそ眼鏡屋ではフィッティングや度数の調整など細かな対応を行います。スマートグラスが普及した社会では、そうした眼鏡の調節の一つのように、スマートグラスの修理を眼鏡屋が請け負うようになっていくのかもしれません」と可能性を語った。今後もデバイスパートナーや眼鏡フレーム制作者と連携し、neoplugのプラットフォームをさらに拡大させていく。

福井県勝山市の九頭竜川で行われた実証実験の様子。(左)河川の監視スタッフは、従来タブレットなどを確認しながら行っていた監視作業をハンズフリーでできるようになった。(右)釣り客は釣りを楽しみながら最新の河川の情報をスマートグラスから入手できる。

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