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情報教育に関わる文部科学省予算は6億8,600万円

情報教育に関わる文部科学省予算は6億8,600万円

2019年03月13日更新

Special Feature 2
文部科学省
2019年度予算から見える
文教ICTの未来

政府は2018年12月21日に、2019年度予算案を閣議決定した。文部科学省は文部科学関係予算として、5兆5,287億円を計上している。2018年度予算額である5兆2,938億円と比較して4.4%増となる2,359億円の増額だ。そのうち、「情報教育の充実」に6億8,600万円が割り当てられており、前年度の6億6,700万円と比較して1,900万円の増額となっている。予算の内訳や2019年度から新たにスタートする事業について、詳しく見ていこう。

情報教育は基盤整備から先端技術活用へ広がる

学びと校務のICT化関連予算

2019年度の文部科学省予算の内、情報教育の充実に割り当てられた予算額は6億8,600万円。本予算では2020年度から始まる新学習指導要領実施に向けて、情報教育・外国語教育の充実や、教育の情報化を支える基盤整備および校務の情報化の推進を目指す。加えて、「学びの個別最適化」などを図るため、新時代の学びの推進についての実証研究を実施していく。具体的な事業内容について、教育の情報化を担当している文部科学省の情報教育・外国語教育課の担当者に話を聞いた。

情報教育推進を目指し
事例創出や手引作成を継続

 情報教育の充実と一口に言っても、その内容は多岐にわたる。

 例えば、情報教育や学習活動におけるICT活用の推進を促す「小・中・高等学校を通じた情報教育強化事業」では、「次世代の教育情報化推進事業」「情報モラル教育推進事業」「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」の三つの事業を実施する。

 まず、次世代の教育情報化推進事業では、2019年度予算として9,800万円を計上している(前年度比1,000万円減)。本事業では、「情報教育の推進に係る推進校における実践研究」や「小学校プログラミング教育支援推進事業」「高等学校情報科担当教員の指導力向上」を実施していく。

 情報教育の推進に関わる推進校における実践研究は、2018年度からの継続事業となる。全ての学習の基盤となる「情報活用能力」の育成に向けた、教科横断的な学びを実現する体系的なカリキュラムマネジメントの事例を創出するため、推進校として「情報教育推進校」(IE-School)や「ICT活用事業推進校」(ICT-School)を指定して調査研究を進めてきた。文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 情報教育振興室情報教育企画係長 池浦一寛氏は「2019年度の情報教育の推進に係る推進校における実践研究でも、情報活用能力を育むカリキュラムマネジメント事例の創出を継続して進めていきます。しかし、2018年度と比較して800万円減となる1,600万円が予算に配分されているため、前年度事業で実施していたICTの効果的な活用事例の創出を見直し、カリキュラムマネジメントの創出に注力していく方針です」と語る。特に教科等横断的で体系的なカリキュラムマネジメントについては各学校がどのように実践していいか判断がつかず、足踏みをしている状態であるため、そうした学校現場に対してカリキュラムマネジメント実践の事例をとりまとめて提示していく方針だ。

 2020年から小学校においてプログラミング教育が開始されることを受け、2018年度から新規にスタートしたのが小学校プログラミング教育支援推進事業だ。本事業の2019年度予算は6,900万円(前年度比100万円減)となる。文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 情報教育振興室 情報教育推進係長 相川修二氏が2018年度の取り組みを次のように語る。

「2018年3月に『小学校プログラミング教育の手引(第一版)』を公表しました。その後、第一版で不足していた総合的な学習の時間の指導例や、プログラミング教育の学習活動の分類の内、『C.教科課程内で各教科等とは別に実施するもの』の指導例などを拡充して改訂した『小学校プログラミング教育の手引(第二版)』を同年11月に公表するなど、プログラミング教育を円滑に実施するためスピード感のある対応を進めています。また、文部科学省、総務省、経済産業省の3省と民間企業が官民協働で取り組んでいる『未来の学びコンソーシアム』を本格始動し、教科の学びにつながる事例を中心に実践事例を掲載しています」

 市町村教育委員会のプログラミング教育担当者を対象としたセミナーも行っている。本セミナーでは、2020年度からの小学校プログラミング教育全面実施に向けて、プログラミング教育の趣旨や実施に向けた計画的な準備の必要性などを説明している。例えば、学校現場でプログラミング教育を実施する上で、アプリケーションのインストールやUSBポートの使用が制限されている場合、その対応が必要となることを紹介している。

 すでにPC教室が整備されている自治体は多くあるが、プログラミング教育を実施するためには既存の設定ではプログラミング教材が使用できない場合があることや、対処方法などを周知し、実施のための障壁を減らしていくことが目的だ。教員用の研修教材も作成しており、年度末以降にはリリースしていく予定だ。「2019年度は、2018年度で実施した事業も踏まえながら、学校現場の状況や課題をアンケートで確認するなどして、注力するポイントを検討していきます」と相川氏。

 高等学校情報科担当教員の指導力向上については、2022年度から情報科において共通必履修科目「情報Ⅰ」の新設や、選択科目として「情報Ⅱ」が開設されることから、新学習指導要領に対応した教員研修用教材の作成・配布を行う。文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教課 情報教育振興室 専門職 村中田博氏は「2019年度は『情報Ⅱ』を中心に作成を進めていく方針です」と語る。

情報モラル教育に動画の需要
低年齢を対象とした教材作り

 スマートフォンやSNSが子供たちにも急速に普及する中で、児童生徒が、自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任を持つことや、犯罪被害を含む危険を回避し、情報を正しく安全に利用できるようにすることは極めて重要だ。そこで必要となるのが、学校における情報モラル教育であり、2018年度から情報モラル教育推進事業を継続して進めていく。2019年度予算として3,100万円(前年度比1,100万円増)を計上しており、2018年度事業から引き続き「情報モラル教育の推進に係る指導資料の改善」「児童生徒向け啓発資料の作成・配布」「情報モラル教育指導者セミナーの開催」により、学校段階、児童生徒の発達段階に応じて、情報モラル教育の着実な実施を図る。

 村中田氏は「情報モラル教育の推進に係る指導資料の改善では2015年度に作成した指導資料をベースに、インターネットやスマートフォン利用者の低年齢化、最新のトラブルや被害の状況などを踏まえて、内容の改善や充実を前年度から継続して進めていきます。従来の指導教材の中でも特に動画教材のニーズが高いことから、新たに低年齢層(小学校1~4年生)を対象に動画教材などを製作していく予定です」と語る。

 この低年齢層に向けた情報モラル教育推進事業の拡充は、児童生徒向け啓発資料の作成・配布にも影響を与えており、2018年度は「小・中学生用」と「高校生用」に分けられていた啓発資料(リーフレット)を、2019年度では「小学生用」と「中・高校生用」に分けて作成し、配布する方針だ。「スマートフォンやSNS利用者の低年齢化が進む中、小学生にフォーカスした啓発資料が必要と考えました。小学生用のリーフレットは、3年生全員に配布する計画であり、スマートフォンを持ち始める前と考えられる児童へ向けた啓発資料の作成を進めていきます」と村中田氏。

自治体単位でのICT環境整備
アドバイザー派遣で導入を後押し

 情報教育を強化していく上で、教員のICT活用指導力の向上は欠かせない。しかし、ICTを活用した教育の取り組みは、地域間で差異が生じているのが現状だ。そうした課題を解消するために実施するのが「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」であり、2019年度は6,000万円(前年度比3,100万円増)の予算が割り当てられている。

「本事業では児童生徒の情報活用能力の把握や、学校におけるICT活用の健康面への影響に関する調査研究を実施します。現時点における情報活用能力を把握して成果を周知することで、さらなる情報活用能力の向上を目指し、授業の改善やICT環境整備が推進することが見込まれます」(池浦氏)

 調査は現在のところCBT(Computer-Based Testing)調査を検討しており、2018年度は120問程度の調査問題を作成した。2019年度では残りの120問程度を作成し、各学校の情報活用能力の調査に活用していく。

 2019年度は上記に加え、調査問題がCBTによる調査システム上で正常に稼働するかなどを確認するため、ネットワークの状況やICT機器の配備状況を踏まえ、小学校、中学校、高等学校から合計10校程度の学校を選定・調査を実施し、この調査の実行可能性も検証していく。

 ICTを活用した教育推進自治体応援事業には、「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」も含まれている。2015年度から継続して実施されている本事業を、文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 庶務係長の宇佐美大輔氏は次のように話す。「ICT環境の整備を図ろうとする自治体のニーズに応じてアドバイザーを派遣し、ICTを活用した教育の推進計画やICT機器等整備計画の策定などについて助言を行っています。例えば2018年度は、ICT機器等の調達をどのようにしたらよいか、セキュリティはどうするのかなど、自治体が抱えている課題について、文部科学省が委嘱している大学の有識者などをマッチングしてアドバイザーを派遣し、自治体にアドバイスを行っています。2019年度の実施内容は検討中ですが、自治体に対するバックアップを引き続き進めていきます」

(左)文部科学省 池浦一寛 氏
(中央)文部科学省 相川修二 氏
(右)文部科学省 村中田博氏

Society 5.0に向けた人材育成を
先端技術で推進する新事業

 2019年度からスタートする新規事業として、「新時代に学びにおける先端技術導入実証研究事業」がある。2019年度予算額として2億5,700万円が計上されている。

 本事業がスタートした背景には、下記の二つの提言がある。一つ目は2018年6月に発表された「Society 5.0に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる~」だ。Society 5.0の時代における基礎的読解力、数学的思考力など基盤を確実に習得する重要性と、その際に学校においてAI等の先端技術(いわゆる「EdTech」を含む)を効果的に活用することにより、全ての子供たちに対し、一人一人の進度や能力、関心に応じて最適化された学び(「公正に個別最適化された学び」)を提供できる可能性が指摘されている。

 二つ目は2018年11月に発表された「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」だ。これからの時代に求められる資質と能力を育成する上で、学習指導要領の着実な実施やチームとしての学校運営の推進の重要性を指摘した上で、その中核を担う教師を支え、その質を高めるツールとして先端技術に大きな可能性があると指摘されている。

 これらを踏まえ、新時代の学びにおける先端技術の導入について、実証的取り組みを進めていくのが本事業だ。事業概要として「教師支援のツールとしてビッグデータの活用などによる児童生徒の学習状況に応じた指導の充実」や「指導力の分析・共有、研修への活用などによる授業改善など教師の資質能力の向上」などが挙げられている。

 本事業を担当する文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 学習情報係長(併)学びの先端技術活用推進室 窪田 徹氏は「単純に学校に先端技術を導入していくのではなく、どういった先端技術を、どのような場面で導入すると学校教育に効果的に活用できるかなどの実証を進めていきます。戦略的開発・実証領域の例としては、一人ひとりの能力や適性、学習状況(スタディ・ログ)に応じた学びの個別最適化や教員の指導充実に向けた先端技術の活用や、エビデンスに基づいた学校改善および域内の教育施策の改善などに資するデータや先端技術の活用などを予定しています」と語る。

 窪田氏が指摘したスタディ・ログの活用とは、学習者一人ひとりの学習進行度や理解度に応じて学習内容を提供するアダプティブラーニングで取得しているデータにとどまらず、例えばテスト結果や授業中の発話量・発話回数など、さまざまな学びのデータを蓄積し、学校教育に活用することを指す。「本事業は学校現場と企業との協働によって実施し、どのような先端技術が学校教育に効果的に作用するかを実証し、その成果を全国に普及・展開していきます」(窪田氏)

教員の指導力向上や校務効率化実現に
ICTを活用した環境整備を進める

 窪田氏が指摘したスタディ・ログの活用とは、学習者一人ひとりの学習進行度や理解度に応じて学習内容を提供するアダプティブラーニングで取得しているデータにとどまらず、例えばテスト結果や授業中の発話量・発話回数など、さまざまな学びのデータを蓄積し、学校教育に活用することを指す。「本事業は学校現場と企業との協働によって実施し、どのような先端技術が学校教育に効果的に作用するかを実証し、その成果を全国に普及・展開していきます」(窪田氏)


教員の指導力向上や校務効率化実現に<br />ICTを活用した環境整備を進める

 教育の情報化において、注目が集まるのは児童生徒のタブレット活用といった、子供たちの学びのシーンが中心だ。しかし、ICTを活用した学びは教員自身の指導力向上にも有効に活用できる。2019年度の文部科学省予算では「生徒の発信力強化のための英語指導力向上事業」として、新たに「オンライン・オフライン研修実証事業」に3,000万円を計上した。本事業は、中・高等学校英語教員を対象としたオンライン研修と、集合研修形式の研修(オフライン研修)を融合した研修の実証であり、民間機関に委託し、英語科教員対象のオンライン・オフライン研修プログラムを開発する。当該プログラムを活用した研修を、特定の地域、学校などにおいて実施。英語指導力向上効果を検証し、全国への普及展開を図っていく予定だ。

 校務の情報化も継続して推進していく。2019年度では「学校ICT環境整備促進実証研究事業」内で、「統合型校務支援システム導入実証研究事業」に1億3,500万円の予算を計上する(前年度比1億7,600万円減)。事業内容としては、教員の業務負担軽減およびそれを通じた教育の質の向上を図る観点から、学校における校務の情報化を効率的に進めるため、都道府県単位での統合型校務支援システムの協働調達・運用の促進に係る実証事業を行うものだ。

 窪田氏は「システムの運用ルールやセキュリティポリシーは、市町村・都道府県単位で定められることも踏まえながら、統合型校務支援システムの効率的な導入・運用を促すために、今回の実証研究事業では都道府県単位でどうシステムの共同調達・運用を進めるかに主眼を置いています。2018年度においては、都道府県単位でのシステム調達・導入を重点的に実証したところであり、2019年度においては、2018年度の実証結果と比較して、2019年度の導入後の効果を測定・比較し、導入効果を明らかにしていきます。本事業事例を踏まえて、業務時間削減に資する統合型校務支援システムの効率的な導入・運用方法や、自治体間調整に係るノウハウをまとめた手引および複数の参照可能モデルを策定し、全国の教育現場に普及することを目指しています」と語る。※公募開始済み

 また、上記の学校ICT環境整備促進実証研究事業の内、教育の情報化を支える基盤整備の推進として、「遠隔教育システム導入実証研究事業」に4,700万円の予算が割り当てられている(前年度比500万円減)。多様性のある学習環境や専門性の高い授業の実現など、児童生徒の学びの質の向上を図るため、遠隔教育システムの導入促進に係る実証事業を実施する。本事業を担当する文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 学習情報係 専門職 鶴田浩一氏は以下のように話す。

「これまで当課における遠隔教育に関する実証事業(学校教育)は、小規模校における合同授業型に限定されていました。2019年度からは遠隔教育の可能性を広げるべく『専門性を育む教育における遠隔教育』『個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育』『多様性のある学習環境の遠隔教育』の三つのテーマについて、各地域からの提案のもと実証を進めていきます。例えば専門性を育む教育とは、ALT(外国語指導助手)などを活用した外国語指導や、大学教授など専門家による専門性の高い授業を実施することで、児童生徒の学びの質の向上を図るものです。2018年度は実証地域を6地域としていましたが、2019年度は実証地域を9地域に拡大するとともに対象校種を高等学校にも広げ、すでに公募をスタートしています」

 2019年度の情報教育分野予算を見てみると、新学習指導要領スタートに向けて強化されたり新規に立ち上げられたりした事業は継続しつつ、「公平に個別最適化された学び」の実現に向けた先端技術の導入など、新たなICT技術活用の予算が採択されたことが分かる。また、文部科学省予算を通して、情報教育分野以外においてもICT活用を進める事業が複数見られた。次ページでは、文部科学省2019年度予算の各事業から、ICTを活用した事業を中心に解説していく。

(左)文部科学省 宇佐美大輔 氏
(中央)文部科学省 窪田 徹 氏
(右)文部科学省 鶴田浩一 氏

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