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3Dレーザーセンサーシステムで体操競技の採点を支援!  富士通

3Dレーザーセンサーシステムで体操競技の採点を支援! 富士通

2019年03月07日更新

3Dレーザーセンサーで採点支援

#富士通 #体操 #採点の自動化

国際体操連盟とパートナーシップを組んで富士通が開発しているのは、3Dレーザーセンサーを利用した「採点支援システム」。

I難度まで存在する体操競技の判定の難しさ

 スポーツの、する、みる、ささえるの全ての要素において新しい体験を実現させる革新的なシステムを富士通が開発している。それが、2020年の実用化を目指す「採点支援システム」だ。採点支援システムという言葉だけでは、それほどインパクトを感じないかもしれないが、実際に実現される仕組みを知ると、驚きを隠せなくなるだろう。簡単に説明すると、競技中の競技者の身体の動きを3Dレーザーセンサーでリアルタイムにセンシングし、3Dデータを作成して競技者が演技している技が、どの技に該当するのかを瞬時に導き出すシステムだ。国際体操連盟とのパートナーシップで開発しているため、現在は体操競技が採点の対象となっている。

 そもそも、サッカーや野球のような点数のやりとりがはっきり分かる競技に比べて、体操やフィギュアスケートのように技の難度や美しさを競う競技は、専門知識に乏しい観戦者にとって技の認識などが難しい。そのため、サッカーや野球のようにファンが評論して楽しめる余地が少なく、体操競技などはほかのスポーツに比べて競技人気が下位に甘んじている現状がある。

 一方で、技の判定の難しさは競技者の演技に点数をつける審判にとっても課題となっていた。東京で最初にオリンピックが開催された1964年当時は、体操の技の難度はA~C(ウルトラC)までしかなかったが、現在はA~I難度まで存在し、技そのものが非常に複雑化してきている。それに加えて、体操では静止技などで腕の角度が45度などと決められていて、その誤差で点数が上下したりするが、人の目で角度を正確に認識することはそもそも難しく、見る場所によっては見え方が変わってきたりして、審判によって判定に差が生じるケースもある。これらも踏まえて、短時間で技の難度を正確に判定・採点するのは、人間の審判にとって限界にきているのだ。

 そうした課題を克服するために、体操競技では競技場所を囲むように非常に多くの審判員が配置されていて、人数をかけて判定の正確さや公平さを確保しようとしている。ただし、どれだけ人数がいたとしても、やはり人の目の能力には限界がある。そこで開発されているのが、富士通の採点支援システムなのだ。

富士通の採点支援システムで提供される実際の画面。競技者の演技をマルチアングルで再現できる。

競技の3Dデータと技のデータベースをマッチング

「当社が開発している採点支援システムでは、3Dレーザーセンサーを利用します。1秒間に200万程のレーザーを選手に照射し、体の形状をスキャンするのです。3Dレーザーセンサーを利用するメリットは、映画のCGなどを制作する際に使われるマーカーなどを選手に装着してもらわなくていい点にあります。選手に全く負担をかけない仕組みなのです」(富士通 スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 第二スポーツビジネス統括部長(兼)東京オリンピック・パラリンピック推進本部 シニアディレクター 藤原英則氏)

 3Dレーザーセンサーによって体の形状(シルエット)が把握できたら、そのデータに骨格データをフィッティングさせ、関節などの動きを導き出す。そして、このデータと、あらかじめ用意してある技のデータベース(モデルデータ)を高速でマッチングさせて、自動で採点を行う。そのマッチングにはAIが活用されている。「現時点でもリアルタイムに近い速度で認識が可能で、自動採点を導き出せます。選手をスキャンしたデータは3Dデータとしてモニター上でマルチアングルでの確認も可能です。通常の審判の位置からでは把握が難しい真上から見た競技者の姿勢なども簡単に確認できるのです」(藤原氏)

 富士通が開発しているこの採点支援システムは、2017年にカナダで開催された「第47回世界体操競技選手権大会」で必要な競技データの取得が実施され、2018年のカタールで開催された「第48回世界体操競技選手権大会」で技術検証が行われた。そして昨年11月に国際体操連盟が採用を決定した。今後は、今年ドイツで開催される「第49回世界体操競技選手権大会」で、一部種目に導入し、順次適用を拡大していく。そして、2020年以降の自動採点の実現を目指して開発を継続する。

 競技の採点におけるこのような展望が開けている富士通の採点支援システムの活用は、競技場での採点だけにとどまらない。選手のトレーニング時に利用することによって、選手の競技力自体の向上も図れるようになる。さらに、3Dデータや技の判定データをテレビ放映などで利用すれば、観戦者の理解促進につなげられるため、みて楽しむ魅力も高められる。

「わずかな点数の差で上位を争う選手の競技内容が具体的に把握できるようになれば、そこで生まれているドラマを観戦者も共有可能になります。みることがより楽しくなり、体操競技の人気を高めることにも寄与できるでしょう。もちろん解説者のサポートにもなるはずです」(藤原氏)

 富士通の採点システムは、スポーツにおける、する、みる、ささえるの全ての側面において、新たな体験を提供できるソリューションと言えよう。

富士通 藤原英則 氏

ルールメーカーを目指す

「少子高齢化が進み、社会保障費が高まる中で、健康寿命の延伸などが政策の一つとして掲げられています。健康でよりよい生活を実現させるために必要な要素の中央に位置するのが、これからはスポーツになっていくでしょう。そうした中で、スポーツとテクノロジーを融合させて新たな市場を形成していくことが当社の一つの目標になっています。重要なポイントは、グローバルのルールを変えてリードしていくルールメーカーになることです。そのために、テクノロジーの効果的な使い方を東京オリンピック・パラリンピックで披露したいですね」(藤原氏)

 もともと、採点支援システムのプロジェクトが発足した当時は、社内でもそれほど注目されていなかったという。そうした逆風に立ち向かい、社内のプロジェクトコンテストでの最優秀賞の獲得や、社外関係者へのプレゼン、メディアへの積極的な露出によって、現在では社長直轄のプロジェクトの位置までたどり着いた。プロジェクトを成功させるために富士通社内では体操研究部を設立し、実際に審判講習会にも参加して学んでいる。そうした過程で、体操競技の審判の資格を取得した社員も2名いるという。

「採点支援システムのプロジェクトは、ニーズをもとに可能性を追求しているのが特長です。ユーザーのことを深く考え、ユーザーが気付かない部分をシステムに反映させてビジネスにつなげていくデザイン志向を採用しています。高いハードルを目標にしているため、シニアから若手への技術伝承の場にもなっています」(藤原氏)

富士通は、体操競技をより楽しめるスマートフォン用のアプリケーションも開発中だ。写真はプロトタイプの画面。

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