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シード・プランニング 川口幸映氏が解説するスポーツICT市場のビジネスチャンス

シード・プランニング 川口幸映氏が解説するスポーツICT市場のビジネスチャンス

2019年03月06日更新

Sports ICT
国内10兆円市場を狙え
いよいよ本番 スポーツICT
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スポーツ庁を中心に、スポーツ産業の成長促進事業が進行している。国内スポーツ市場規模の目標は、2020年に10.9兆円、2025年に15.2兆円にまで拡大させること。その実現に欠かせないのがITの存在だ。スポーツの主要要素とされる「する」「みる」「ささえる」のいずれの側面でも、ITが新たな体験を生み出し、経済効果を高めると期待されているのだ。果たしてITによってどのようなスポーツ体験が可能になるのか。そして、ビジネスチャンスはどこに潜んでいるのか――。

加熱するスポーツビジネス

#Sports ICT #シード・プランニング

スポーツ産業の促進が政府の施策に盛り込まれた。
国を挙げたスポーツへの取り組みは、スポーツICT市場の拡大につながっていく。

「官民戦略プロジェクト10」の一つ

 2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年ワールドマスターズゲームズ関西(生涯スポーツの世界大会)と、今年から日本で世界的な大会が次々と開催される。こうした動きも見越して、2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」では、官民で認識と戦略を共有して新たな有望市場を創出する「官民戦略プロジェクト10」の一つとして、スポーツの成長産業化が取り上げられた。そして、スポーツ市場規模を2020年までに10.9兆円、2025年までに15.2兆円にまで拡大することが目標に掲げられた。

 現在は、スポーツ基本法にのっとって文部科学省によって策定された「第2期スポーツ基本計画(2017年度~2021年度)」が推進されている最中でもある。同計画では、スポーツを通して個人の人生や社会を変え、さらに世界とつながる未来づくりが目指されている。その背景には、国民の健康寿命の延伸という目的もある。健康寿命とは、日常生活に制限のない期間(介護を受けたりせずに健康に過ごせる期間)を指す。医療や介護などで膨れ上がる社会保障費を国民の健康寿命の延伸で少しでも改善しようとしているのだ。

 スポーツ基本計画では、スポーツへの関わり方として「する」「みる」「ささえる」の三つの要素を挙げ、それぞれの側面から国民のスポーツへの参画を促すために、スポーツ人口の増大、スポーツ環境の充実、スポーツ市場の拡大が企図されている。全体として、スポーツ産業の促進が狙いとなるが、スポーツの成長産業化において、注目されているのがITだ。スポーツ庁による「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向」の資料には次のように記されている。

 ―スポーツ産業においては、「する」「みる」「ささえる」の要素ごとに親和性の高いIT技術が存在し、そのIT技術を中心に今後発展していくものと考えられる。さらに、IT技術をキーに親和性の高い産業と融合が進み、成長産業として、市場規模を伸ばしていくものと考えられる。

2025年までにスポーツICT市場は10倍に成長

 スポーツのする、みる、ささえるの各側面におけるIT活用の状況と市場規模については、スポーツICT市場としてシード・プランニングがリポートを作成している。同社の調査によると、2018年のスポーツICT市場規模は約900億円で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを経て、2025年までに市場は10倍に成長し、市場規模は約9,703億円になると予測している(下図参照)。

 同社は、スポーツICT市場を、競技力の向上やトレーニングなどを目的とした「する」市場、スタジアムのスマート化や観戦エンターテインメント性の向上などを目的とした「みる」市場、データ分析による戦術サポートなどを目的とした「ささえる」市場の三つに分類し、活用が想定されるITソリューションなどを定義している(下図参照)。

「スポーツICT市場の中で多くを占めるのが『みる』目的の市場です。一般の人も一番簡単に楽しめる領域だからです。スタジアムやスマートフォンなどのデバイスを活用できるためキャパシティが大きいのが特徴です。例えば、スタジアムのWi-Fiの整備によってさまざまなコンテンツを観客のスマートフォンで楽しめるようにしたり、VRを活用したエンターテインメント性の高いサービスを提供したりできます。こうした取り組みが行われているスタジアムはスマートスタジアムとも呼ばれています」(シード・プランニング リサーチ&コンサルティング部 研究員 川口幸映氏)

「する」目的でのIT活用では、センサーなどを活用して選手自身のあらゆるデータを取得し、それらを分析して技術力の向上などに生かす取り組みが実践されている。「野球などではVRを利用して、仮想空間上で打撃の練習を行うような試みも始まっています」と川口氏は解説する。「ささえる」目的では、データ収集や分析によってチーム全体の動きを改善させる目的でのIT活用が考えられるという。戦術のサポートやチーム選手のコンディション管理などがそうだ。「データ収集と分析によってチームの戦略を考え、チーム力を高める使い方です。チーム全員の情報を記録して管理するなど、さまざまな活用方法が考えられます。プロ野球などの人気スポーツでは、ほとんどのチームがデータ分析を活用して、打撃、守備、走塁などの改善に取り組んでいます」(川口氏)

シード・プランニング 川口幸映 氏

プロからアマチュアまでがターゲットに

 スポーツICT市場はこれから10倍にまで拡大すると予測されている。そのきっかけは「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでしょう」と川口氏は断言する。さまざまなデバイスが増えている中、それらを積極的に活用していくことも、スポーツICT市場の規模増大に寄与していくという。「例えば、VRやARは既存のスポーツ観戦によりエンターテインメント性を与えられるデバイスとなります。家庭ではVRを用いて臨場感のある観戦を、スタジアムではARを利用してフィールドを映すスマートフォンやARグラスに付加的な情報を表示させるような仕組みですね」(川口氏)

 データ分析などを競技に生かす試みは、今の時点ではプロスポーツなどの一部での採用にとどまっているが、今後はトレーニング用途などの目的でハイアマチュアや一般のユーザーに拡大していく可能性は高い。すでにスマートウォッチなどを利用して、ワークアウト時の簡易的なデータを取得しているユーザーも増えてきている。また、競技のデータ分析をスタジアムの観戦者やテレビなどの視聴者にリアルタイムで提供するようなケースも増えている。

 ITがスポーツ市場の拡大に欠かせない存在となっていく今後は、する、みる、ささえるの三つの側面において、プロからアマチュアまでを対象に、幅広いビジネスチャンスが創出できそうだ。

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