ホーム > PC-Webzineアーカイブ > NECのIoTとAI、顔認証技術で実現する"省人型"店舗

NECのIoTとAI、顔認証技術で実現する

NECのIoTとAI、顔認証技術で実現する"省人型"店舗

2019年02月27日更新

マイクロマーケットへ進出する省人型店舗の技術

人手不足を解消するため、IoTやAI技術を活用した無人店舗が注目を集めている。しかし、無人店舗では、従来の小売店舗のようなきめ細かな接客ができなくなってしまうのも事実だ。接客充実と人手不足の解消、その両方を実現するのが、省人型店舗だ。

無人ではない“省人型”店舗とは

 小売店舗などでの人手不足が深刻化するなか、注目を集めているのが無人店舗だ。米国では無人のコンビニエンスストア「Amazon Go」がオープンしたほか、日本国内でも無人店舗の実証実験が進められている。無人店舗では、多数のカメラやセンサー、顔認証などを組み合わせ、消費者が手にした商品を認識して決済するようなIoTシステムを採用しているケースが多く、今後の店舗拡大が注目されている。

 そうしたなか、セブン-イレブン・ジャパンがオープンしたのが、同社初の「省人型店舗」となる「セブン-イレブン三田国際ビル20F店」だ。

 無人店舗ではなく、あくまで省人型店舗にこだわる理由について、セブン&アイ・ホールディングス 広報センターの戸田雄希氏は次のように語る。「スーパーマーケットのイトーヨーカドーが当社の経営の中核であった時代から、小売りは接客が重要だという考えが根幹にありました。そのため、昨今注目を集めている無人店舗に取り組む方針ははじめからありませんでした。しかし、出店ニーズはあるものの売上見込みが十分ではなかったり、出店スペースが小さかったりする『マイクロマーケット』(小規模商圏)においては、従業員数を抑えながら効果的に接客していくことが求められており、そうした省人型店舗として、今回三田国際ビル20F店をオープンしました」

 三田国際ビルは地上26階、地下3階建ての建物で、NECをはじめとした同社グループ企業が多く入居している。三田国際ビルの地下1階には、すでに「セブン-イレブン三田国際ビル店」が出店しているものの、ランチタイム時にレジに行列ができる点や、高層階のNECグループ社員が昼食を購入するためにエレベーターを利用するため、混雑するという課題があった。そこで、ビル中層階である20階に、今回新たに省人型店舗を出店した。店舗の利用はNECグループの社員に限られており、店舗に入店する際は社員証か顔による認証が必要になる。

(左)天井に取り付けられた監視カメラで映像解析を行い、進入禁止エリアに来店者が入ったらアラートを発する。混雑状況や欠品も把握できる。
(右)陳列棚に設置された温度センサーなどの情報を収集して設備の稼働管理を行う。エアフローやフィルターなどもセンサーでチェックし、最適なタイミングでメンテナンスを行う。

省人環境を支えるIoTとAI技術

 それでは、三田国際ビル20F店で省人化を実現するため、どのような技術が導入されているのだろうか。本店舗には、顔認証をはじめとしたNECのAIやIoT技術が数多く採用されている。例えば、NECとして国内初導入となる「顔認証による決済」や、顔画像から来店者の年齢や性別を推定して広告を表示する「ターゲット広告サイネージ」などによって来店者の利便性を向上させるシステムだ。決済は顔認証だけでなく、NECグループの社員証にも対応している。

 従業員の作業負担削減を図るため、冷蔵庫などの設備状況を24時間自動収集して安定稼働をサポートする「設備の稼働管理」や「AIを活用した発注提案」も行う。例えば設備の稼働管理では、店舗に設置されているカフェマシンや冷蔵庫などの店舗設備情報をIoTで収集・蓄積し、コーヒーの豆切れやエラーなどの異常をいち早くキャッチする。それにより、故障の事前処置やメンテナンスを実施できるようになる。NEC 第一リテールソリューション事業部 第二インテグレーション部 マネージャーの大澤健一氏は、「設備情報から従業員の正しいオペレーションをサポートすると同時に、異常をいち早くキャッチすることで食の安全・安心・おいしさを確保できます」と語る。

 複雑な発注業務にAIを活用することで、作業時間削減に加え、機会ロスや廃棄ロス削減も実現する。コンビニをはじめとした小売店では、天候や気温、曜日や近隣イベントによって同じ商品でも、日によって売れ行きが異なる。従業員はそれらの情報をもとに売れ行きを予測し、品切れや在庫過多が起こらないように発注作業を行う必要があるが、従業員に対する作業負担が大きいのも現状だ。そこにNECのAI技術である「異種混合学習技術」を採用し、多種多様なデータから自動で複数の規則性を発見して店舗の発注作業をアシストするという。

「店舗スタッフの少ない省人型店舗の課題として、従業員の目が届かない所に来店者が侵入してしまうリスクもあります。そうした事態を防ぐため、映像解析によるエリア検知も実施しています。店舗の天井に複数の監視カメラを設置し、進入禁止エリアに来店者が入ったらすぐにアラートを発するようになっています。また、映像解析で、混雑状況や商品の欠品をタイムリーに把握できるため、従業員の業務効率化にも貢献できます」と大澤氏。

小売りビジネスで重要となる接客

 多くの作業を省人化している三田国際ビル20F店。レジは顔認証によるセルフ決済に対応しているほか、NECのコミュニケーションロボット「PaPeRo i」を設置して、来店者の顔を認識し、属性に応じておすすめの商品を提案する接客支援も実施している。無人店舗も実現できそうなシステムだが、NEC 第一リテールソリューション事業部 第二インテグレーション部 部長 渡辺健介氏は次のように否定する。「無人店舗はゴールではありません。省人型店舗では誰がやっても変わらない作業をより効率化していくことに重きを置いています。代わりに会話の中で商品をおすすめしたり、来店者とのコミュニケーションの中で本来購入されなかった商品を買ったりしてもらえることが小売ビジネスには重要だと考えており、そうした接客の支援を支えるのが当社のシステムです」

 三田国際ビル20F店は2018年12月17日にオープンしたばかりだ。そのため、現在のところ目に見えた実証の効果は出ていないものの、顔認証による決済はスピーディーで使いやすいなど、概ね好意的だ。「店舗面積は約26㎡と小さいのですが、取扱品目数はおにぎり、サンドイッチ、パン、乳飲料、ソフトドリンク、菓子、カップラーメン、セブンカフェ、雑貨など約400品目と豊富です。NECグループの社員でもこの店舗でこれだけの品目を取りそろえていることを知らないケースがあり、営業を続けていく内に認知度が向上しています。そのため、現在のところは週によって品目の売れ行きが大きく異なっており、AIによる発注支援などが生きてくるのはもう少し後になるでしょう」と大澤氏。

 今後の省人型店舗の展開について、セブン&アイの戸田氏は「マイクロマーケットへの本格展開を目指し、本店舗での実証実験を進めていきます。マイクロマーケットのニーズは工場や病院などをはじめ、多くの場所にありますが投資対効果が得られにくいため、出店が難しいのが現状です。NECとの協業によって、より実用に近い省人型店舗を出店フォーマットとして実証していき、今後の出店に生かしていきたいですね」と語った。

(左)ターゲット広告サイネージや、設置された監視カメラで取得した顔画像から、来店者の年齢や性別を推定し、ターゲットに合わせた広告を表示する。
(右)顔認証で決済できるセルフレジにはコミュニケーションロボットであるPaPeRo iを設置し、来店者の顔画像から属性に応じたおすすめの商品を提案する。

キーワードから記事を探す