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SD-WAN 2.0で拠点の課題解決をーIDC Japanの提言ー

SD-WAN 2.0で拠点の課題解決をーIDC Japanの提言ー

2019年01月10日更新

SD-WAN
クラウドの普及で加速するネットワークのソフトウェア化

クラウドサービスの普及が、WAN活用の見直しを促している。「インターネットブレイクアウト」などのキーワードとともに市場を拡大させ始めたのが「SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)」だ。WAN帯域の可視化、効率利用、一元管理などを実現するSD-WANの最前線に迫る。

SD-WAN 2.0で普及期へ

そもそもSD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)の定義は何か。そして、現在の市場状況はどうなのか。IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野陽子氏に、市場の全体像を聞いた。

ハイブリッドWANをインテリジェント化

 IDC Japanは、2016年に約4億3,000万円(実績値)だった国内SD-WAN市場規模が、今から2年後の2021年には504億4,000万円へ成長するという予測を、2017年8月に発表していた。2016年~2021年の年平均成長率は159.0%と非常に高く、IT市場では一躍脚光を浴びる存在となっている。

 高い成長率が予測されているSD-WANはその名の通り、ソフトウェアデファインドのテクノロジー、つまり仮想化技術やそれによる抽象化のメリットをWANに適用している。実際にIDCでは、SD-WANを次のように定義する。


IDCのSD-WANの定義

SD-WANは、従来「ハイブリッドWAN」として認知されてきたアーキテクチャの発展形である。ハイブリッドWANは、中小拠点における最低二つのWANリンク、二つ以上の異なるアクセステクノロジー(MPLS、ブロードバンドベースのインターネット、3G/4G、その他)で構成される。

SD-WANは、ハイブリッドWANをベースとし、コントローラーによる集中制御、アプリケーションベースのポリシー制御、アプリケーションのアナリティクス、ネットワークの可視化、アンダーレイネットワークを抽象化するソフトウェアオーバーレイ機能、そして、コントローラーで定義されたアプリケーションポリシーに基づき、複数のWANリンクにおいてインテリジェントなパス選択を行うルーティング機能を提供するものである。


 SD-WANによって実現するのはWAN帯域の効率利用だ。MPLSやインターネット、モバイル回線を組み合わせて構成されているWANにおいて、状況に応じた効率性の高い帯域活用が可能になる。一元的な管理やゼロタッチプロビジョニングなどによる運用面でのメリットも大きい。

「ハイブリッドWANをさらにインテリジェント化して、SDN(Software-Defined Network)の世界を実現させたのがSD-WANです。例えば、グローバルで多拠点展開している企業にとっては、WAN帯域の効率利用や一元管理によるコスト・運用管理負担の低減などが実現します」(IDC Japan 小野氏)

IDC Japan 小野陽子 氏

回線だけでなく拠点の課題解決へ

 SD-WANの利用によって実際にどのようにコスト削減が可能になるのか。その一つの例が「インターネットブレイクアウト」だ。これは、WAN―データセンター経由でインターネットを利用していた環境において、ポリシーの適用やセキュリティを確保しつつ各拠点からインターネットに直接接続できるようにする仕組みだ。これによってWAN回線のコスト低減が実現する。もちろんインターネットへの通信の制御は自動で行い、許可されたサービスだけに利用を制限できる。

「海外の拠点がOffice 365などのクラウドサービスを利用することで、WANの回線コストが上昇してびっくりする企業が出てきています。これはいけないと、SD-WANの導入に踏み切る企業が増えてきているのです。そのため、Office 365などのクラウドサービスの利用率とSD-WAN市場の拡大が同調したりしているのですね。インターネットブレイクアウト目的でのSD-WANの導入が市場をけん引していると言えます」(小野氏)

 小野氏によれば、現在はようやくSD-WANのラインアップが出そろい、各社そして市場が戦闘モードに入った状況だ。SD-WANのベンチャーとして市場を開拓していたViptelaやVeloCloudはそれぞれ、シスコシステムズとVMwareに買収されており、大手資本を背景にした市場攻勢がこれから予測される。

 こうした中で、SD-WAN自体にも変化が生じているという。「これまでのSD-WANを1.0とすると、これから提供されるSD-WANは2.0と見なせます。WAN帯域の効率利用という回線の課題解決だけでなく、拠点の課題解決に結びつけられるサービスが提供されていくだろうからです」(小野氏)

 例えばデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている企業において、現在、店舗のデジタル化による売り上げ向上などが図られている。IoTによるリアルタイムのデータ収集・分析から業務の自動化、顧客へのWi-Fi提供まで、さまざまなデジタル化・ネットワーク活用が加速しており、それらを実現させるためには、インテリジェントなWAN活用が必須となる。そうした拠点の課題解決の観点からのSD-WAN提案が、ユーザーから選ばれていくと小野氏は指摘する。

「拠点のデジタル化にはSD-WANが不可欠です。DXを考慮に入れた提案が有効になります」

マネージドサービスの販売チャンス

 SD-WAN市場では通信キャリアももちろん大きな競合となる。通信キャリアは、提供する回線とともにSD-WANの提案がしやすいのは間違いない。「NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンクなど大手キャリアのサービスは出そろいました。本腰を入れて提案活動を進めていくでしょう」(小野氏)

 このような中で販社やSIerが商機を勝ち取っていくためには何が必要なのか。「顧客の課題を解決できるソリューションとしてSD-WANを含めたサービスやシステムをどのように提案できるかが鍵ですね。腕の見せ所とも言えます」(小野氏)

 例えば、マネージドサービスの提案がチャンスになる。SD-WANは従来のWANと比較して可視化や効率利用のための制御などがユーザー側でしやすくなるが、そうなったとしてもやはり拠点のネットワーク運用を任せたいと考える企業が少なくないという。そうした観点では、顧客のビジネスを熟知した販社、SIerが提供するマネージドサービスは、競合との差異化がつけられるポイントになる。

 実際、インターネットブレイクアウトなど、WAN回線の効率利用によるコスト削減のメリットは多拠点展開している大規模な企業が主な訴求対象となるが、マネージドサービスという側面は、大企業だけでなく、拠点数の少ない中堅・中小企業のユーザーに対してもメリットがある提案になりそうだ。「Wi-Fiの管理やIoTのセグメンテーションなどがサービスの内容になりますね」(小野氏)

 SD-WANソリューションのラインアップが豊富になった今、「より多くのビジネスを獲得していくためには、顧客のビジネスを支えるSD-WANソリューションの提案が必要です」と小野氏はアドバイスする。

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