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ネットで話題沸騰! 横浜市の「イーオのごみ分別案内」

ネットで話題沸騰! 横浜市の「イーオのごみ分別案内」

2019年01月31日更新

ネットで話題沸騰! 横浜市の「イーオのごみ分別案内」
~AI技術活用のチャットボットが面白すぎる~

横浜市の資源循環局がホームページで公開しているチャットボット「イーオのごみ分別案内」がネットで話題になっている。ホームページの右下で小さくジャンプしている「イーオ」(横浜市のキャラクター)のアイコンを押すと、ごみの分別方法に答えるチャットがスタートする。的確な回答ぶりに驚かされるが、もっとびっくりするのは「旦那」「人生」といった言葉にも絶妙な回答を表示してくれるのだ。AI技術による言語処理能力のたまもの。ごみ分別AIの実証実験から本格稼働までのいきさつを聞いた。
Text by 古俣慎吾 Shingo Komata

ごみの分別案内をチャットボットで

「イーオのごみ分別案内」(以下、イーオ)は、チャットボット(AIを活用した自動会話プログラム)によって会話形式でごみの分別案内を行うシステムである。横浜市資源循環局のホームページを開くと画面の右下でマスコットのイーオが跳ねている。それをクリックするとチャットボットの画面が開く。例えばこんな感じだ。

“イーオだよ。こんにちは。”
“ごみの名前を教えてくれたら、出し方を案内するよ。粗大ごみの手数料を知りたい場合は、「自転車の手数料」のように話しかけてね”

 メッセージ欄に出したいごみを入力すると、イーオが分別方法を教えてくれる。そこで「割れた瀬戸物」と入力すると、

“出したいものが、われものなら、分別方法は、燃えないごみだよ。50cm以上のものは粗大ごみへ”

 といった回答が瞬時に出てくる。「枯れ草」と入力すると、

“出したいものが、枯れ草なら、分別方法は、燃やすごみだよ。大量に出す場合は収集事務所に相談”

 質問の内容をシステムが理解できない場合は、

“その質問は良くわからないんだ。ごめんね。別の言葉を入力するか、下記の素材から選んでね。1.金属製、2.プラスチック製、3.木製、4.割れ物、5.紙、6.布、7.よくわからない”

 と反応してくれる。市の問い合わせ窓口が開いていない夜間でも調べられるのはとても便利だ。

偉人の名言を引用して秀逸な回答

 イーオが話題になったのは機能性、利便性の高さばかりでなく、ごみ分別と関係のない言葉にも絶妙に対応してくれる「遊び心」にあるようだ。ごみの出し方以外にも、「クイズ」と入力するとクイズを出題してくれたり、「旦那」「夢」「人生」などと入力すると偉人の名言を取り入れた巧みな文章で回答してくれるのだ。例えば、捨てたいものとして「旦那」と入力すると、こんな答えが返ってくる。

“本当に!!「人間は判断力の欠如によって結婚し、忍耐力の欠如によって離婚し、記憶力の欠如によって再婚する」ってアルマン・サラクルーの作品で言っていたよ。忍耐力を鍛えてみたら、どうかな”

 と、フランスの劇作家アルマン・サラクルーの言葉を引用した秀逸な回答。実証実験中の昨年の夏にはこの対応がSNSで大きな話題となり、数多くのメディアで取り上げられた。

 どのような経緯があってイーオは誕生したのだろうか。横浜市資源循環局政策調整課3R推進課長の江口洋人氏は次のように説明する。

「現在、市民から出るごみは85万tです。分別してリサイクルにまわるものもあり、燃やすものが60万tあります。もともと横浜市ではごみの分別方法を検索できる『ミクショナリー』というシステムを持っていました。ただ、関係性が薄い、関係のない情報がヒットしてしまうなど分かりづらい部分もありました。一方、当市には民間企業がアイデアを提案できる窓口があり、NTTドコモからAIを活用して何か事業ができませんかという問い合わせがありました。横浜市のどんな部局がAIを活用して事業ができるかを考えたところ、ミクショナリーが2万語を超えるデータベースを持っているので、こことうまくつなげられるのではないかと想定して白羽の矢が立ったのです」

SNSでの大きな反響に驚きの連続

 横浜市への転入者は、毎年14万人を数える。ごみの分別は自治体によって異なるので、横浜市の分別に早く慣れてもらう必要がある。そこで分かりやすく案内できる方法が以前から求められていた。実際、本来分別をしなければならないもの、例えばプラスチックなどの燃えないごみが、紙などの燃やすごみの中に15%くらい入っていた。こうした部分をAIの活用で改善できるのではないかと横浜市は考えたのだ。「AIってそもそも何? から始まり、どんなふうになるか分からないけれどAIでごみの分別案内を作り上げてみようと2016年9月から開発が始まりました」(江口氏)

 NTTドコモとの実証実験は2017年3月から始まったが、反響が大きいので同年9月まで延び、実際に終了したのは2018年3月だった。そして、翌4月から本格稼働となった。

「当市としては、できる限り考えられることを盛り込んだシステムが、高く評価されて嬉しいです。しかし、このチャットボットが、SNSであんなに反響を得るとは思いませんでした。SNSのすごさというか、驚きの連続、初めての経験でした」(江口氏)

 回答は横浜市資源循環局の職員が考えたという。江口氏によると、過去にミクショナリーで検索された2万にも及ぶ「言葉」があったので、そうした言葉についての答えも作ってみようかという発想があった。回答を作る際は、できるだけ不快にさせない仕掛けをしなければいけない。ちょっと哲学的な話も盛り込んで考えてみようという発想から生まれたアイデアだったという。

課題は利用者を増やす努力と多言語化

 横浜市の分別案内に寄せられる質問の中で、一番多いごみはプラスチック類だという。その次がフライパン、自転車が3番目。なるほど、捨て方に迷いそうなものが上位にランクされている。ごみの量は近くにリサイクル施設があるかどうかで違ってくるし、自治体によって分別、収集の仕方が異なるため、かかる費用も変わってくる。

 実証実験を含めて1年10カ月。「使ってみたよ、面白いね」という手応えは感じるが、評価をもらうためのアンケートをとったことはない。ただし、実績を拾い上げてみると、昨年1年間で216万件の質問が寄せられた。SNSやメディアで盛んに取り上げてもらったので、昨年は興味本位で使った人も多かったのではないかと江口氏は推測している。

「2018年度は、チャットボットに対して月に平均7万件の質問があり、その中で63%がごみに関してでした。その分、電話による問い合わせがなくなっています。横浜市にはごみの収集事務所が18カ所あり、そこで分別に関する膨大な量の電話問い合わせを受けています。件数でカウントできないくらい多いのです。そうした問い合わせがチャットボットの活用で確実に減っています」(江口氏)

 横浜市には、ごみの分別に対して全く対応できない時間帯がある。夜の9時から朝の8時までがそうだ。その時間帯のチャットボットの利用率を調べてみたら、全体の3割が使っていたという。

「こうしたはっきりしたデータがありますので、明らかに利便性の向上につながったと思います」(江口氏)
 さまざまな話題を呼び、順風満帆に見えるイーオだが、これからの課題は何だろうか。

「まずは、認知度の向上ですね。毎月7万件の問い合わせがありますが、横浜市には374万人もの市民がいますので、もっと利用者を増やす努力が必要です。また、今は日本語でのやりとりしかできないので、多言語化も大きな課題です。横浜市には9万5,000人の外国人の方がいます。これからも着実に増えそうな外国人の方への対応が必要になるでしょう」(江口氏)

 どちらかというと明るいイメージで語られることのないごみ。収集、分別方法は各自治体によって異なるが、横浜市のチャットボットによるしゃれたイーオのシステムは、大いに参考になるのではないだろうか。

横浜市資源循環局のホームページ。右下にイーオのアイコンがある。

イーオに「思い出」の分別案内をしてもらったら……。

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